なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

気管支拡張症+α

2022年09月10日 | Weblog

 金曜日に保健所の依頼でCOVID-19罹患者の外来アセスメントがあった。患者さんは90歳女性で、認知症があり在宅の方だった。アセスメントで問題なければ、感染対応の施設に入所予定だった。

 家族がCOVID-19 に罹患して濃厚接触者となっていた。2日前に37.2℃の微熱と咳・痰があった。アセスメントに来た日は解熱して、食事摂取も良好だった。「何でもない」と言っていた。酸素飽和度は99%(室内気)と良好だった。

 胸部CTで見ると、両側肺野に気管支拡張症を認めた。右中葉は帯状の陰影があり、左肺下葉には気管支に沿って円形の小結節状の陰影が散在していた。

 

 何らかの感染症だが、気管支拡張症だと非結核性抗酸菌症?。呼吸器外来に来ていた先生に相談した。結核、非結核性抗酸菌症、ABPA(アレルギー性気管支肺アスペルギルス症)などが考えられるという。なるほど。精査は無理ですよね、ともいわれた。

 とりあえず、コロナの肺炎像はなく、早急に治療する細菌性肺炎ではないと判断した。現時点では、予定通り施設療養でよい返答することにした。

 

 保健所の用紙には肺炎の有無と程度しか記載できない。そして肺炎も、範囲が1/2未満と1/2以上の2種類しかない。1/2以上だったら人工呼吸管理になってしまう。

 保健所長は臨床経験のない方だそうで、職員の方から「肺炎の記載があると騒ぐんです」という話があった。コメント欄はないのだが、余白に所見と解釈を入れて、対応についても丁寧に記載することにしている。 

 

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浴槽で溺死

2022年09月09日 | Weblog

  火曜日の当直は腎臓内科の若い先生だった。病院を出る時に、救急車が来ていた。当直帯に入って早々の救急搬入だった。その日はその先生が内科系当番にもなっている。

 水曜日にどんな患者さんか、画面で確認した。心肺停止での救急搬入だった。心肺蘇生に反応がなく、死亡確認に至っていた。

 昨年12月に施設に入所していた。施設といっても、ADL自立の高齢者が入るいわゆるケアハウスだった。食事と入浴の用意は施設側で行うが、それ以外は病院受診も自分で行うことになる。

 職員が夕方自室を訪問すると不在だった。それで浴室に行ってみて、浴槽内に浮いているのを発見した。すぐに救急要請した。救急隊到着時は、職員が浴槽から引き上げて、AEDを装着しようとしていた。

 救急隊が心肺停止(心静止)を確認して、心肺蘇生術を開始した。気道・食道から水が多量に引けたそうだ。

 

 死亡確認後にAutopsy imaging(AI)が行われた。頭部CTでは頭蓋内出血はなかった。胸腹部CTで気管・気管支に水(浴槽の湯)がたまっていて、胃内には水と食残があった。両側肺には肺水腫の所見があったが、極端にひどくはなかった。

 死亡診断書は溺死としていた。それなりにADL自立の高齢者なので、どういう機序でそうなったかはわからない。虚血性心疾患などの発症があったのか、浴槽内で寝てしまい、そのまま沈んで起き上がれなくなったのか不明だった。事件性はないとして、検死にはしていなかった。

  

 浴槽での死亡は年に何例かある。自宅や施設の浴槽でというのは、特に当院が多いのか、他の病院でもよくあることなのかわからない。温泉の浴槽でというのは、当地が温泉場に近いという事情によると思うが。

 

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COVID-19の施設入所者

2022年09月08日 | Weblog

 火曜日に保健所の指示で、COVID-19に罹患した61歳女性が感染病棟に入院した。知的障害者施設に入所している。8月30日に38℃の発熱で発症した。

 そのまま施設内で経過をみていたようだ。9月2日に地域の基幹病院で外来アセスメントを受けていた。胸部CTで「陳旧性の炎症像?と右肺の浸潤影を認める。コロナのというよりも、細菌性肺炎と思われる。」と読影されていた。

 その後、食欲低下とADL低下が続いていた。微熱が続いていて、肺炎を免疫力で押さえていた?。そのまま施設内でみられないとなり、入院依頼になったという経緯だった。

 当院で確認すると、両側肺野にすりガラス陰影が残っていて、右肺下肺野背側には確かに浸潤影を認めた。コロナのいうよりは細菌性肺炎(誤嚥性?)を示唆するようだ。

 すでに発症8日目になり、レムデシビルの適応もなくなっている。通常の肺炎に対する抗菌薬と点滴で治療を開始した。

 

 当院ではおなじみの施設で、民家何棟かを使って、知的障害者が共同生活をしている。職員は日中はいるが、夜間はいなかったと思う。高齢者になると(歩行できなくなると)、通常の介護施設に入所するようになる。

 

 隣町の大規模な施設で発症した高齢者の入院依頼もあった。施設内でみていたが、酸素吸入が5L/分になっているというので、そちらは基幹病院の方にお願いしてもらうことにした。

 基幹病院は施設入所のCOVID-19罹患者の入院をいやがっている、という話があった。隔離期間を過ぎても、食べられない・動けないとして退院にできないということらしい。当院は後方支援病院でもあり、喜んで引き取るのだが。

 

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病棟看護師の罹患

2022年09月07日 | Weblog

 先週の金曜日に、準夜勤務の若い看護師さんが勤務中に悪寒・発熱が出現した。出勤した時は無症状だったという。

 そのまま休ませて、翌土曜日の午前中に発熱外来扱いで、新型コロナの抗原定性試験をすると陽性だった。届け出をして、自宅静養となった。

 同僚の看護師さんたちはきちんとマスクをして勤務していて、食事の時も離れて黙食なので、一応濃厚接触者にはならない。患者さんたちもマスクはつけているが、認知症の患者さんはしていないこともある。

 発症2日前からの接触者となると、病棟に入院している全員になってしまう。部屋移動・他病棟への転棟は休止にして、経過観察となった。地域の基幹病院からの転院予定の患者さんは、先方に事情を伝えて個室対応での転院となった。

 

 月曜日に2名の患者さんが発熱した。火曜日にPCR検査を行って、2人とも陰性だった。ひとりは寝たきり・経管栄養の77歳女性(脳梗塞後遺症)で誤嚥性肺炎を繰り返している(尿路感染症の時もある)。

 もう一人は脳梗塞後遺症で基幹病院から転院してきた84歳女性だった。リハビリ目的ではなく、経口摂取困難で点滴継続となっていた。昼だけ嚥下訓練として嚥下調整食3を出しているが、数口しかとれない。

 こちらも誤嚥性肺炎かと思ったが、血液検査で肝機能障害があった。造影CTでは、胆嚢が腫脹して壁肥厚もある。胆嚢炎ということになる。胆道系の拡張はなく、総胆管結石・胆管炎ではなさそうだ。

 

 

 おそらくCOVID-19罹患の看護師さんは、プライベートでの感染なのだろう。病棟の看護師長さんが、他県の男性とお付き合いをしていることを教えてくれた。(以前も濃厚接触者となって休んでいたので、プライベートのことも訊いていた。)

 これだけ患者さんが多数発生しているので、どこで感染してもおかしくない。病院職員も時々家族(子供からが多い)からうつって自宅静養になったり、濃厚接触者として自宅待機になっている。

 火曜日に基幹病院の整形外科で大腿骨転子間骨折の手術を受けた患者さんが、回復期リハビリ病棟に転院してきた。転院後に連絡があり、先方で担当していた看護師さんがCOVID-19に罹患していたそうだ。急遽個室対応になり、PCR検査対象となった。

 

 

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認知症が前からあった

2022年09月06日 | Weblog

 月曜日の午後に救急外来を診ていた先生(大学病院総合診療科からバイト)から、肺炎の72歳男性を入院させたいと連絡がきた。 画像を見ると、右肺上葉(S2)に浸潤影が広がっていた。

 発熱はその日からで、両下肢の脱力があり歩行できなかった。妻がささえた時に、発熱に気づいたそうだ。救急要請して、地域の基幹病院の近くだが、受け入れできなかったらしく、当院に来たという経緯だった。

 尿中抗原は肺炎球菌、レジオネラともに陰性だった。喀痰は出ないようだが、血液培養2セットは提出されていた。酸素飽和度は室内気で96%で、酸素吸入はしていない。

 救急室に患者さんを診に行った。会話はできるが、内容がかみ合わない。見当識障害もある。72歳でこれはかしい。頭痛はないが、脳炎・髄膜炎の可能性はどうか。

 普段は糖尿病専門医のクリニックに通院していた。DPP4阻害薬とSU薬(グリミクロン)が処方されていて、HbA1c7.6%だった。

 家族に話が通じないようですが、と伝えた。妻は、本人には言っていないが、今年になってから物忘れや認知力の低下がありました、という。それで受診したことはなく、かかりつけの内科クリニックでも話はしていない。

 

 MRI検査は空いていたので、頭部MRIを行うことにした。拡散強調画像は撮像できたが、その後患者さんが動いてしまい、途中で中止になった。拡散強調画像では新規の脳梗塞や脳炎を示唆する病変はない。

 頭部CTで確認すると、前頭葉と側頭葉が年齢の割に萎縮していた。アルツハイマー型の認知症なのだろう。日常生活にはそれほど支障がなかったのだろうか。

 ストレッチャーの上で盛んに動き、排尿が気になるようなことを言っていた。家族には、入院継続困難な時は、途中で外来治療に切り替えると説明した。病棟では抑制帯を準備していた。

 

 今日はまだ発熱はあるが、搬入時よりは話が通じるようだ。認知症があって、高熱が加わったためにさらに認知力が低下したようになっていたのだろう。朝食は食べられたので、予定通り抗菌薬だけの点滴静注とした。

 

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下腿の蜂窩織炎

2022年09月05日 | Weblog

 金曜日の当直は外部の病院から来ているバイトの先生だった。最近夜間は緊急性がなければ、発熱患者さんは翌日の日中に来てもらうことになったので、その旨を伝えた。入院は特になかった。

 土曜日は大学病院外科から来てもらっている先生で、土曜日の日直・当直と日曜日の日直までの担当になる。土曜日の午後に、発熱の83歳男性を入院させたいと連絡がきた。

 新型コロナの検査(抗原定性試験)は陰性で、熱源がはっきりしないという。「脳出血後遺症で臀部に褥瘡があり、褥瘡感染の可能性がある。明らかな肺炎とは言えないが、ちょっとだけ肺炎を疑うところがある。どちらかだろう。」という。尿混濁はないらしい。

 血液培養2セットと尿培養を提出して、セフトリアキソンで開始しておきました、と報告された。意識やバイタルは問題なかった。

 

 日曜日の朝に病棟に電話して、入院後の経過を訊いた。ベテランの看護師さんが出て、解熱してきていて、食事摂取も良好だという。左下腿の発赤・腫脹・熱感がありますよ、と言われた。蜂窩織炎と診断していたのだった。月曜日までの指示(点滴と抗菌薬)が出ていた。病院に診に行かなくてもいいようだ。指示の点滴でお願いしますと伝えた。

 今日病棟で患者さんを診ると、確かに左下腿が発赤・腫脹を呈していた。クーリングしていたので、熱感はかなり取れていた。確かに左下腿の蜂窩織炎だった。

 

 患者さんは脳出血の既往があり、右半身不全麻痺がある。介助で何とか室内歩行はできていたそうだ。通院は脳外科がメインの病院に行っていた。住所からみると、一応当院の診療圏でもあるような町だった。

 蜂窩織炎の左足は白癬症は特にないようだ。明らかな皮膚の傷はなさそうだが、どこから菌が入っただろうか。(今回は)健側の右下腿に皮疹があり、黒色調になっている。発赤・熱感はない。皮膚科のクリニックに通院していたが、最近は行っていない。

 抗菌薬はセファゾリンにして、500mlの点滴は中止した。寝込んでしまうとADLが低下するので、リハビリを入れることにした。

 

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SLEに相当する?

2022年09月04日 | Weblog

 好中球減少・単球増加で診ている87歳男性は、膠原病疑いとしても検査をしていた。2019年に入院した時は陰性だった抗核抗体が陽性(640倍、speckled)だった。

 ds抗DNA抗体も陽性だった(抗Sm抗体は陰性)。発熱で2点、白血球減少で3点、ds抗DNA抗体陽性で6点、これで11点と10点を越えてしまう。右胸水貯留もあってステロイド投与で軽快したが、これは漿膜炎で5点?(普通は両側に起きるのではないか)。

 臨床症状でSLEらしさはない(気づけない?)。2019年の原因不明の筋炎も膠原病疑いだったが、結果的にステロイドで軽快したのが、関連あるようにも思える。

 しかし、血球異常はむしろ血液疾患らしい気がしている。大学病院からバイトで来る専門医の先生方に相談しているが、診断にたどり着くのだろうか。

 

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器質化肺炎

2022年09月03日 | Weblog

 定年退職後の非常勤で来ている先生(74歳男性)には、左肺の病変があった。

 2015年から左下肺野背側の陰影が指摘されていた。健診の胸部X線で指摘されて、胸部CTを撮影したという経緯だった。放射線科の読影レポートでは陳旧性の炎症となっていた。

 2018年の時が一番陰影が増加していた。放射線科の読影レポートは、「2015年と比較して肺炎の増悪」となっていた。確かにその通りだが、そんな数年にわたるのは特殊な肺炎になり、それに言及してほしいところだ。

 そして、その後はまた軽減していた。木曜日に、呼吸器外来(大学病院から来ている)を受診して検査を受けていた。2週間前から微熱があって、息切れを感じるという訴えだった。

 胸部CTでは同じ部位に陰影があるが、これまで経過を考慮すると、画像上は有意に増加したとも言い難いようだ。

 血液検査では白血球6500・CRP2.2と正常ではない。呼吸器外来では、この病変自体は器質化で間違いない、今回の症状はこの年余の病変の問題ではなく、ウイルス感染による炎症が遷延している、と判断されたようだ。

 

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胃癌~ステント挿入

2022年09月02日 | Weblog

 7月に入ってからしだいに食事摂取できなくなった87歳女性が、内科医院からの紹介で7月22日に入院した。内科の別の先生が担当していた。

 腹部CTで胃前庭部にほぼ全周性の腫瘤を認めた。消化器科で上部消化管内視鏡検査を行うと、幽門輪部に進行胃癌と判断される潰瘍性病変を認め、CTで見た通り幽門狭窄を呈していた。生検でgroup Ⅴ(por)だった。

 もともと直腸癌術後で人工肛門造設術を受けていて、腎障害・軽度の認知症もあった。消化器病センターのある専門病院に紹介となった。

 バイパス手術の適応もなかったらしく、狭窄部にステントが留置された。拡張は良好だったが、食物が流れず、肛門側のステントが十二指腸壁に当たってしまったことによると判断された。さらにステントが追加で留置されて、この後は十二指腸への流出が良好となった。

 それでも食事摂取量は少なく、点滴をしていた。そのまま退院にできないため、当院に戻って療養継続となった。流動の栄養剤などが飲めればいいが、摂取量が少ないと退院は難しいかもしれない。

 胃の蠕動運動gastric emptyingは前庭部で担っているので、ステントで抑えられると単なる土管になってしまうか。手術ができないと経鼻胃管(NGチューブ)を入れっぱなしになってしまうので、胃液が流れるだけでも処置した甲斐はある。

 

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亜急性連合性脊髄変性症疑い

2022年09月01日 | Weblog

 火曜日に、5日前から急に歩行できなくなったという62歳男性が救急搬入された。それまでは普通に歩行できて、車も運転していたという。家の中を這って移動していたそうだ。

 両下肢の筋委縮があり、下肢の挙上はできるが、確かに同年齢と比べれば筋力は低下している。左右差はなかった。振戦というか、細かな震えがある。つかまって立とうとすると、両下肢がぶるぶる・がくがくと震えてしまう。両上肢も下肢より軽度だが、同様の症状があった。

 意識は清明だった。普通に会話ができる。両親が亡くなった後一人暮らしをしていた。特に病気はなく、通院はしていない。もと教員だったが、早期退職していた。

 後で健康保険に入っていないことが判明した。救急隊の記録では、自宅アパートの室内は物があふれていた。栄養失調をきたすような食事摂取だったらしい。飲酒はビールと焼酎で、日本酒換算2~3合/日の話だったが、実際はもっと多いらしい。2~3日は飲んでいないという。

 搬入時に体温が37.2℃だったので、発熱外来扱いになった。コロナの検査は陰性で、血液検査で炎症反応は陰性だった。感染症ではないようだ。甲状腺かとも思ったが、ホルモンは正常だった。

 頭部MRIは年齢の割に全体に萎縮しているように見える。発症が急なような病歴だが、四肢の筋力低下・筋萎縮を見ると、もっと長い経過ではないか。

 

 翌日の水曜日が神経内科の新患日だった。担当の先生(外部からバイトで来ているベテラン医)に診てもらった。「下肢体幹優位の失調と不随意運動(振戦ないしミオクローヌス)を認めて、脊髄後索障害を示すと考えます」という。

 診断はビタミンB12欠乏性の急性連合性脊髄変性症が疑われるとされた。ビタミンB12注(1000mg静注または筋注)で経過をみるようにと指示された。

 搬入時にビタミンB12 は外注検査に出していて。2日後の今日は結果が出ていた。正常域の下限値だった。ビタミンB12は正常域でも下限値に近い時は欠乏症をきたす。投与継続とした。また葉酸は正常域以下で、こちらも補充する。

 

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