月曜日の午後に救急外来を診ていた先生(大学病院総合診療科からバイト)から、肺炎の72歳男性を入院させたいと連絡がきた。 画像を見ると、右肺上葉(S2)に浸潤影が広がっていた。
発熱はその日からで、両下肢の脱力があり歩行できなかった。妻がささえた時に、発熱に気づいたそうだ。救急要請して、地域の基幹病院の近くだが、受け入れできなかったらしく、当院に来たという経緯だった。
尿中抗原は肺炎球菌、レジオネラともに陰性だった。喀痰は出ないようだが、血液培養2セットは提出されていた。酸素飽和度は室内気で96%で、酸素吸入はしていない。
救急室に患者さんを診に行った。会話はできるが、内容がかみ合わない。見当識障害もある。72歳でこれはかしい。頭痛はないが、脳炎・髄膜炎の可能性はどうか。
普段は糖尿病専門医のクリニックに通院していた。DPP4阻害薬とSU薬(グリミクロン)が処方されていて、HbA1c7.6%だった。
家族に話が通じないようですが、と伝えた。妻は、本人には言っていないが、今年になってから物忘れや認知力の低下がありました、という。それで受診したことはなく、かかりつけの内科クリニックでも話はしていない。
MRI検査は空いていたので、頭部MRIを行うことにした。拡散強調画像は撮像できたが、その後患者さんが動いてしまい、途中で中止になった。拡散強調画像では新規の脳梗塞や脳炎を示唆する病変はない。
頭部CTで確認すると、前頭葉と側頭葉が年齢の割に萎縮していた。アルツハイマー型の認知症なのだろう。日常生活にはそれほど支障がなかったのだろうか。
ストレッチャーの上で盛んに動き、排尿が気になるようなことを言っていた。家族には、入院継続困難な時は、途中で外来治療に切り替えると説明した。病棟では抑制帯を準備していた。
今日はまだ発熱はあるが、搬入時よりは話が通じるようだ。認知症があって、高熱が加わったためにさらに認知力が低下したようになっていたのだろう。朝食は食べられたので、予定通り抗菌薬だけの点滴静注とした。