連休明けの火曜日に、救急隊から幻聴の46歳男性について相談があります、と連絡がきた。両足底や手から声が聞こえるという。いつからの症状なのか訊くと、2~3週前からで2~3日前から症状がひどくなって救急要請したそうだ。
救急隊は精神科の問題として、市内の精神科病院に連絡したが、対応できないといわれたそうだ。精神医療センターにも連絡したが、内科疾患を除外してからなら診てもいいという返事だった。
通院歴はないので、未受診未治療の統合失調症の患者さんかと思われた。精神科受診への橋渡しとして内科で検査するのはできるが、治療までは難しいと答えた。
搬入された患者さんは、おとなしくストレッチャーに横になっていた。意識清明でちゃんと起き上がれるが、横臥したままで診察した。以前からではなく、急性の症状だった。
高校中退後は、仕事はしていないという(数日だけ警備の仕事をした)。毎日どうしているのかと訊くと、(親のお金で)パチンコに行っていると答えた。どうも統合失調症ではない。
お酒はと訊くと、毎日のように飲んでいるという。自称日本酒換算3合/日だが、昨日は5合程度、その日は7合飲んだ。増えたわけは、幻聴が聞えるので、それを消そうとして飲んだそうだ。
幻聴らしい症状はずっと続いているわけではなく、断続的にある。内容はと訊いても、何か言っているというだけで具体的な内容はないと答えた。
救急隊が精神医療センターと交渉して、頭部MRI検査を含む一般検査を行って、問題なければ紹介してもらっていいという回答を得ていた。その通りに検査を進めた。
頭部MRIは異常がなかった。血液検査で軽度のアルコール性肝障害があるが、それ以外は甲状腺機能も含めて正常域だった。ビタミン検査は提出しても外注ですぐにはわからない。食欲がないと言うので胸腹部CTもみたが、明らかな異常は指摘できない。
アルコールによる精神障害で、アルコール幻覚症になるのか。精神科で評価してもらう必要がある。点滴に神経用のビタミン剤を混入して、内服でも処方した。
結局、家族(母親)の希望で市内の精神科病院を受診することになったが、予約は来月になってしまう。その間自宅で扱えず、当院入院でみるしかない、となる可能性がある。
厚生労働省の説明は以下の通り。
アルコール幻覚症 alcoholic hallucinations
長期間かつ大量のアルコール摂取により、幻聴や被害妄想などを生じる精神障害。