火曜日の当直は腎臓内科の若い先生だった。病院を出る時に、救急車が来ていた。当直帯に入って早々の救急搬入だった。その日はその先生が内科系当番にもなっている。
水曜日にどんな患者さんか、画面で確認した。心肺停止での救急搬入だった。心肺蘇生に反応がなく、死亡確認に至っていた。
昨年12月に施設に入所していた。施設といっても、ADL自立の高齢者が入るいわゆるケアハウスだった。食事と入浴の用意は施設側で行うが、それ以外は病院受診も自分で行うことになる。
職員が夕方自室を訪問すると不在だった。それで浴室に行ってみて、浴槽内に浮いているのを発見した。すぐに救急要請した。救急隊到着時は、職員が浴槽から引き上げて、AEDを装着しようとしていた。
救急隊が心肺停止(心静止)を確認して、心肺蘇生術を開始した。気道・食道から水が多量に引けたそうだ。
死亡確認後にAutopsy imaging(AI)が行われた。頭部CTでは頭蓋内出血はなかった。胸腹部CTで気管・気管支に水(浴槽の湯)がたまっていて、胃内には水と食残があった。両側肺には肺水腫の所見があったが、極端にひどくはなかった。
死亡診断書は溺死としていた。それなりにADL自立の高齢者なので、どういう機序でそうなったかはわからない。虚血性心疾患などの発症があったのか、浴槽内で寝てしまい、そのまま沈んで起き上がれなくなったのか不明だった。事件性はないとして、検死にはしていなかった。
浴槽での死亡は年に何例かある。自宅や施設の浴槽でというのは、特に当院が多いのか、他の病院でもよくあることなのかわからない。温泉の浴槽でというのは、当地が温泉場に近いという事情によると思うが。