長年住み慣れた自宅を離れ、失明した妻の介護も考えて選んだ有料老人ホームで暮らしていた老夫婦。
世話をする側にあった夫は、病を得て入院となり、妻の身を案じひとしきり躁状態に陥り、また病状も不安定で生命の危険が迫ったので、近隣に住む子供に連絡を入れた。
その反応が………
子供も、それなりの年齢に達していた。 が、
『不規則な生活は、健康を害する危険があるので、病院にお任せしていますので、何が起きても一切文句はつけませんので、夜間は連絡を取らないでください。』
こんこんと眠っている患者に対して
『見るに絶えないので、死んでもらったほうが楽です。』
病院入院中に、1人の生をかけた闘い中に、経口摂取が出来なくなったからと言って、絶食餓死を与えろというのか!
全快の見込みが極めて少なく、自立できそうもなくなったら………
老人は廃棄ですか!
楢山節考の世界とは全く違う、
寒々とした、身ぎれいな家族のエゴイズムに、
虚しさを感じた。