読書三昧

本は一冊一冊がワンダーランド。良い本との出会いは一期一会。そんな出会いを綴ります。

SARSは何を警告しているのか

2011年11月22日 20時42分09秒 | ■読む
武田美文・岡部信彦著,岩波ブックレットNo.606
SARS(Severe Acute Respiratory Syndrome)は,「重症急性呼吸器症候群」と訳されます。2002年に中国で発生した新しい感染症です。
感染症で「一類感染症」に分類されていて,感染力が強く死亡率が高いエボラ出血などの感染症は既知の感染症で,これらの感染を防御することも重要で大変なことですが,見たことも聞いたこともない新しく危険な感染症が発生した場合には,速やかに対応しないと大変なことになってしまいます。
大分前に感染症をテーマにした「コブラの目」を読んで,感染症に恐怖を覚えました。現実世界では、テレビの番組で、WHOが感染症の監視と対策に当たっており,日本人の女医さんが活躍している様子を紹介していました。24時間体制で,世界の感染症の状況を監視し,何事かがあるとすぐさま地元国家と強調して対応に当たるのです。
SARSの発生時には,呼吸器系疾患の症状が顕著で,罹患患者の死亡が相次ぎ,世界の関係者が全力を上げて原因ウィルスを特定し,患者を隔離して,感染の抑え込みに成功しました。
今日の世界は,人びとの移動が活発であるため,感染後に国外に移動してから発症するパターンで,あっという間に全世界に感染が広まってしまいます。13世紀のユーラシア大陸において元が隆盛を極め,中国で発生したペストがシルクロードを経て中東に伝わり,やがて14世紀のヨーロッパに広まったのでした。その結果,ヨーロッパの人口の1/3が失われたとのことです。
このように人や物のネットワークに乗って感染症が伝播して行くのは,梅毒やエイズの例を見ても明らかですが,現代にあっては,様々な科学的知見や医療技術によって防衛が可能であったとしても,迅速な人や物の移動の為に,対応のタイミングを失う可能性が高まっています。
本書は,感染が蔓延する可能性があったSARSの発生から抑え込みまでの過程と,今後の課題について簡潔に説明を加えています。
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URL => http://ja.wikipedia.org/wiki/重症急性呼吸器症候群
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評価は4です。

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