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河野稠果著、中公新書刊
少子高齢化の先進国である日本では、結婚しない男女が増え晩婚化が進んでいることを実感します。
「子は宝」ということが切実に感じられる今日この頃です。
少子高齢化だけで無く、国力の将来を予想する上でも人口の問題を理解することが不可欠と思い、本書を手に取りました。
ベトナム旅行の際の現地ガイドの方は大学の先生とのことでした。彼の説明の中で「今のベトナムは人口ボーナスの期に当たります。若い人が多いので、労働人口が豊富で、病気をする割合も少ない。だから医療費などの社会的費用が少なくてすむのです。」という紹介がありました(「人口オーナス(onus:重荷、負担)」は、その反対の現象です)
日本は既に人口オーナス期に入っており、今後は更なる少子高齢化で、絶対的な労働人口と総人口に占めるその割合が減るので、オーナス(重荷、負担)が途轍もなく重くなることは疑い得ません。
既にリタイアした身としては、何とも申し訳ない気がします。
さて、本書の前半は、人口統計の見方や人口推計の方法などを数式を使わず解説しており、その点だけでも労作と思います。
特に特定の年齢階層の人口が、全体の中で突出した状態であると、総人口への影響力が非常に強い事象を指して「モメンタム」と称していること、出生率の算出方法が幾つかあることなど、大変参考になりました。
後半では、西欧諸国が産業化社会に移行した際に経験した「少子高齢化の原因」に関する様々な議論、現在の極端な少子化の原因に関する様々な理論の紹介、少子化対策の各国の取り組みなどを、コンパクトに整理して紹介しています。
最後は、少子化対策の困難さと、事例を参考にする際の留意点を述べています。
長年、人口学の最先端で研究を続けてきた著者が、一般向けの入門書である本書を執筆するに当たり、「分かり易さ」を実現する為に大変なご苦労があったことと思います。
若干読みにくい部分もありましたが、それでも、限界までかみ砕いて執筆されているとを感じました。
良書と思います。
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○人口学 ○河野稠果 ○人口ボーナス
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評価は4です。
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