大沢在昌著、光文社刊
大好きな大沢さんの、それも好きになった切っ掛けの「新宿鮫シリーズ」の10作目です。大沢さんの作品は、その時代の犯罪事情の最先端を反映しているようです。本書は、残留中国人の2世、3世が登場します。そして、暴対法などですっかり勢いを無くした暴力団が登場します。そうした登場人物に主人公の鮫島が関わり、複雑な状況が少しずつ解き明かされて行きます。特定の人物の視点から見た状況が交互に示されることによって、物語の展開に深みが増しているように思います。
特に最初に登場する「私」が、本作のキーマンで、中盤以降にその正体が分かります。そして、登場人物達が紡がれた糸のような絆にたぐり寄せられて終盤に向かいます。鮫島の常に変わらぬ生き方が心に突き刺さります。また、今回は鮫島に対する、少しばかりの周囲の理解が描かれて、今後のこのシリーズの展開に影響を与えるのか否かが楽しみです。それにしても、鮫島の恋人の晶は、シリーズの色合いに合わなくなってきているように感じます。読み手の私は、鮫島も年をとっていると思い込んでいるためかもしれませんが。物語のテイストを余分に甘めにしているように感じます。
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URL => http://ja.wikipedia.org/wiki/新宿鮫シリーズ
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評価は4です。
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