西條奈加著、講談社文庫刊
西条さんの著作を初めて読みました。
作品の舞台は江戸時代の江戸。出自に曰くのある主人公は、武士への道を絶ち、少年期に菓子作りの職人を志します。
一通り技術を習得した後、諸国を巡り、その土地土地の菓子を食し詳細な記録を付け、遍歴します。
ある土地で知り合った女性と夫婦になり、やがて子供が生まれますが、相変わらず旅を続け、ある時妻が病を得て亡くなってしまいます。
幼い娘と二人っきりになった主人公はようやく江戸に戻り、小さな菓子屋を始めました。
諸国で見て味わった菓子を、工夫して安価に拵えて儲けの少ない商いを続け、庶民に愛されるようになる。
幼かった娘は、しっかり者に成長し結婚し娘をもうけるが、故あって離婚し、それからは主人公と娘、それに孫娘が一緒に店を営んでいる。
このような状況から物語が始まります。
過去のことが少しずつ語られ、主人公とその弟、娘、孫娘の四人が軸となり、いくつかの事件を巡って物語が進みます。最初は、それぞれのエピソードが独立した連続ドラマのようなものを予想していましたが、そうではありませんでした。
語られた出来事と物語が、幾重にも折り重なり、登場人物の来し方と生き方が、鮮やかに描かれています。脇役の人々も実に鮮やかに描かれており、それぞれの人々が、故ある人生を生きている事情までが、しっかりと語られていることに、読了して気付きました。
軽やかな語り口ながら緻密な構成で、女性故の繊細な心の動きが描き出されています。
下記リンクを見ると、本書は2014年出版で、著者は、当時50歳程度であったと思いますが、しっかりした生き方をしてきた故の暖かな作品なのではないかと感じました。
シリーズ第2作目「亥子ころころ」が、2019年に出版されたそうなので、近々読みたいと思います。
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○西條奈加
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