読書三昧

本は一冊一冊がワンダーランド。良い本との出会いは一期一会。そんな出会いを綴ります。

ドキュメント日本医師会 崩落する聖域

2010年04月25日 08時33分04秒 | ■読む
水巻中正(ちゅうせい)著、中央公論新社刊
かつて、「喧嘩太郎」と渾名された武見太郎という方が、日本医師会の会長をしていました。その就任期間は1957年(S32) - 1982年(S57)、25年間という長期に亘ります。私が3歳から18歳の期間になります。その間、テレビのニュースで何度も、その名前を聞きました。子供から思春期の時代だったので、医療制度に関心はありませんでしたが、記憶に残っているのは、余程のことをしていたからなのだと思います。その出自や活躍は以下のURLに述べられています。良家の出自で、上流階級の環境で育ち、国家の支配階層に親しみ、功罪半ばの生涯であったようです。そして、その日本医師会での活躍が、その後に日本医師会の在り方に大きな影響を与えたことは間違いないようです。
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URL => http://ja.wikipedia.org/wiki/武見太郎
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さて本書は、小泉構造改革により、医師会の権威と影響力を減退させられた状況が、2001年12月1日の日比谷公園から語られ始めます。そして、2004年4月1日の定例代議員会に至るまで、当時の会長の坪井栄孝氏の指導と会員との確執を中心に、状況が語られて行きます。
著者は読売新聞記者として30年もの期間、日本医師会をウォッチ(著者の表現です)しており、本書に込められた情報量は、極一部ではないかと思います。そして、著者の主張は、日本医師会が崩落した真の原因は「特権意識」である、というものではないかと思います。一般的に、医師は知的レベルが高く、その職責は大変に厳しいので、一定の資質を持っている人が多いのは事実であると思います。しかし、医師も人間であってみれば、人格に問題のある人や不正な行いをする者もいるのは当然です。医師に限らず政治家、教師も同様で、半世紀前には、社会全般で尊敬された職業であったものが、今日では、特別の意味を持たない職業になりつつあります。
社会の意識が変わっている事に気付かずに、小泉内閣の構造改革を医療制度を破壊するものだ、という主張で対抗しようとして、その主張が叶わなかったという事なのではないでしょうか。今日が昨日の延長ではなく、明日も今日の延長ではない、という緊張感が必要とされる現代社会が良いか悪いか分かりませんが、そのことに気付かないと、困難な状況に追い込まれることがありそうです。
評価は4です。

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