読書三昧

本は一冊一冊がワンダーランド。良い本との出会いは一期一会。そんな出会いを綴ります。

第21回日本陶芸展

2011年07月30日 08時11分59秒 | ■見る
現代にあって,陶芸は,芸術と工芸に分けられると思いますが,かつては,すべて工芸であったのでしょう。王に専属する職人達が精魂込めて作ったものであっても,それは,あくまで工芸作品でしょう。そうした作品の中から,優れたものが時代を生き延びて骨董品として珍重されて行く。
しかし,近代になって市民社会が成立するようになると,生活の用に資するだけでなく,審美眼に耐える特別な作品を求める人々と,それに応える作家が登場するようになったのだと思います。つまり,職人が匿名の職業人として,不特定多数の人々,又は特権階級の求めに応じて作った作品群が工芸作品であり,近代の資産のある人々が,日常の用以上に素晴らしい美を求めた結果成立したのが,少量で高価な美術品としての作品を作る芸術家と呼ばれる人々であると思います。
何とも理屈っぽい話しで,しかも的外れかもしれませんが,本作品展を見て,「陶芸って何?」と考えてしまいました。
全国から寄せられた作品群は,実用品の部門もありますが,ほとんどはかなり大きくて,多様な技法によって作られています。多くの作品が実用に供するためではなく,美を表出する為に作られているようです。色,形,質感が相俟って独特の美しさを競っています。純粋なオブジェとして作られた作品群さえあります。
このように,陶芸という観点から鑑賞するにはムリのある作品は,表現の技法として陶芸を選んでいるのだと理解しなければ受け入れることが難しい。つまり,鑑賞する立ち位置の自覚が必要となる場合もあるのだと思います。
本展は,公募部門と招待部門で構成されており,公募部門は伝統部門、自由造形部門、実用部門の3部門に分かれているとのことです。しかしながら,日本一を決めるためのコンクールであってみれば,作品の完成度は無論のこと,製作技法がかなり評価要素になるのではないでしょうか。高名な松井康生さんの作品を見ると,その独自の技法による文様の素晴らしさが圧倒的でありながら,形態に感動を覚えないのは(私の好みの問題かもしれませんが)作品の制作意図が主に技法とそれゆえの文様に集中しているからであると思います。
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URL => http://www.tougei.museum.ibk.ed.jp/exhibition/21th/index.html
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評価は3です。

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