読書三昧

本は一冊一冊がワンダーランド。良い本との出会いは一期一会。そんな出会いを綴ります。

墨東奇譚

2009年03月20日 09時23分48秒 | ■聴く
永井荷風著、新潮CD、神山繁朗読
私は永井荷風の作品を読んだことがありません。その高い文名は聞いていましたが。下記のURLの永井さんの略歴を見ると、中流階級に生まれ、学業では失敗したものの親の心配りで洋行し、明治期の知識階級に属していたようです。しかしその生き方は、伝統的な日本に惹かれた、退廃的な生き方のようです。(あまり、知らないので想像ですが・・・)
さて、この作品は、昭和初期の東京の下町が舞台で、小説家の大江が娼婦のお雪と出会い別れて行くまでが、大江の日常の事柄を通して静かに情感豊かに語られています。昭和初期の東京の風景が目の前に、鮮やかに映し出されるようです。この小説は、永井荷風の体験が下敷きになっているようですが、主人公の大江とお雪の自然な立ち姿に心が打たれます。やはり人は年齢や境遇だけでなく、人生の歩み方がその人自身を指し示すのだと感じました。
永井荷風の女性観は、下のURLによると、自身が”一種の潔癖”と表現しているルールで生きており、社会一般のルールには縛られていなかったように思われます。どこか自分を取り巻く世界と折り合えない。幾分成りとも交われるのが、娼婦やストリッパーなどの漂白の人々だったのではないか。なぜなら、そうした人達は、人の世の蔭に、日溜まりのらち外で生きていたから。見当違いの考察かもしれませんが。私達が、それぞれに世間に違和感を多かれ少なかれ感じつつ生きていることを思えば、荷風の生き方が、まったくの他人事とは思えません。久々に感じ入った作品で、続けて二度聞きました。
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URL => http://ja.wikipedia.org/wiki/永井荷風
     http://showa.mainichi.jp/news/1959/04/79-836c.html
     http://www.bunshun.jp/bunshitachi/omokage.htm
     http://ja.wikipedia.org/wiki/ぼく東綺譚
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このCDでは名優の神山繁さんが朗読をしています。知的な雰囲気を持った方ですが、孤独な初老の作家や幾人かの登場人物の人生を感じさせる見事な朗読です。達者とは作為を超えた作為を成すことなのでしょうか。
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URL => http://ja.wikipedia.org/wiki/神山繁
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評価は5です。

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