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竹内洋著、中公新書刊
かつては、大学教授などのインテリの意見は、かなりの重さを持っていた様に思います。
そうした人達は「権威」があると思われていました、
しかし現在では、「権威」という言葉は聞かなくなり、代わって「専門家」という呼称になっています。
しかも、マスコミ以外にネット情報が加わったことで、「専門家」の意見が様々であることが明らかになったので、その意見あるいは解説の有り難みがかなり目減りしました。
本書は、1960年代まで日本の社会、取り分け高等教育の分野で重きを成していた教養主義が、どのように形成されたのか、どうして形成されたのか、欧米との違いは何か、何故没落したのかを分析しています。
些か退屈に感じながらも、文系の論理の組み立て方の典型と思われる論の進め方が新鮮でした。
中盤になる頃には、幅広い資料から論証に必要な資料を示しながら、広範な視野から論じる姿勢に感服しました。
著者は私よりも一回り上の世代で、成長時期や環境に違いがありますが、論じられている時代状況を、それなりに体験しているので、感覚的にも納得できる内容でした。
一方で、学生運動が大きな転換点となったとの主張は、少し保留したいと感じます。
他にも石原慎太郎さんの言説の背景を巡る議論など、興味を持って読みました。
現在を理解する一助となる著作と思います。
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○竹内洋 ○教養主義
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評価は4です。
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