金成隆一著、岩波新書刊
何故トランプ大統領が誕生したのか不思議でならなかったので本書を手に取りました。著者によれば、20世紀に全盛を極めたアメリカ経済が生み出した中流階級の不安、不満が要因とのことでした。当時は景気が良く、専門知識や技能を持たない高校卒業者が真面目に働けば家や車などの耐久消費財を手に入れ、子供達を大学に入れ、十分に豊かな生活を送ることが出来た。しかし、経済のグローバル化によって国際化が進展し産業が高度化した為、単純労働市場が拡大しない一方、移民が安い労働力として流入した結果、知識や技能が高くないと安い賃金しか得られない。その結果中流階級が没落し、更に貧富の差の拡大が進んでいる。政治家は資本家の政治資金を目的に、そうした人々の不満を無視し、民主党も労働者に寄り添った政策を取らなくなった。その結果、エスタブリッシュ(既得権階層)に属する民主党は無論共和党の政治家が信用されず、主流派とはほど遠い候補者達が注目を浴び、結果としてトランプ大統領が誕生した。
本当は、もっと多くのニュアンスを含んでいますが、大まかにはこうした感じでした。本書によって確認できたことは、政治家は高邁な理想を掲げて人々の共感を得ることもあるが、膨大な選挙資金の確保のためにはお金を持つ人や組織になびかざるを得ない。一方で、有権者は自分の生活が一番大切だと言うことでした。かつて縫製業を営んでいた知人は、仕事に誇りを持っていましたが、結局海外に仕事が流れ廃業しました。彼も政治に原因を求めていました。
絶えざる「生存競争」の一形態である資本主義経済の帰結であり、それに抗う政策が強まれば国際的な経済社会の中で相対的に国力が低下するという論理はあるものの、自分の現実の生活を維持しずらくなり、生きる上で必須である尊厳を損なわれると、そんな理屈はどこかに行ってしまう。だから、どんなに立派な理念に基づいて政治を行っても、国の経済が上手く回って、国民の多くが大きな不満を抱かないことが最も大事だと言うことになります。
ドイツのメンケル首相が、選挙後に移民の受け入れ制限を設けると表明しました。民主主義は、決定過程を明確にして多数の意見に決するという原理だけであって、表面に見えないように隠蔽したお金や利権の遣り取りは存在しないものと思われてしまう。また、高邁な理想のために投票することも稀にあるかもしれませんが、普通は何らかの利益を得る見込みがある(あるいは主義主張に近い)候補者に投票するのだから、手続き自体が高潔な意味を含んでいない。結局、人の世の現実を本書で実感しました。
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評価は4です。
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何故トランプ大統領が誕生したのか不思議でならなかったので本書を手に取りました。著者によれば、20世紀に全盛を極めたアメリカ経済が生み出した中流階級の不安、不満が要因とのことでした。当時は景気が良く、専門知識や技能を持たない高校卒業者が真面目に働けば家や車などの耐久消費財を手に入れ、子供達を大学に入れ、十分に豊かな生活を送ることが出来た。しかし、経済のグローバル化によって国際化が進展し産業が高度化した為、単純労働市場が拡大しない一方、移民が安い労働力として流入した結果、知識や技能が高くないと安い賃金しか得られない。その結果中流階級が没落し、更に貧富の差の拡大が進んでいる。政治家は資本家の政治資金を目的に、そうした人々の不満を無視し、民主党も労働者に寄り添った政策を取らなくなった。その結果、エスタブリッシュ(既得権階層)に属する民主党は無論共和党の政治家が信用されず、主流派とはほど遠い候補者達が注目を浴び、結果としてトランプ大統領が誕生した。
本当は、もっと多くのニュアンスを含んでいますが、大まかにはこうした感じでした。本書によって確認できたことは、政治家は高邁な理想を掲げて人々の共感を得ることもあるが、膨大な選挙資金の確保のためにはお金を持つ人や組織になびかざるを得ない。一方で、有権者は自分の生活が一番大切だと言うことでした。かつて縫製業を営んでいた知人は、仕事に誇りを持っていましたが、結局海外に仕事が流れ廃業しました。彼も政治に原因を求めていました。
絶えざる「生存競争」の一形態である資本主義経済の帰結であり、それに抗う政策が強まれば国際的な経済社会の中で相対的に国力が低下するという論理はあるものの、自分の現実の生活を維持しずらくなり、生きる上で必須である尊厳を損なわれると、そんな理屈はどこかに行ってしまう。だから、どんなに立派な理念に基づいて政治を行っても、国の経済が上手く回って、国民の多くが大きな不満を抱かないことが最も大事だと言うことになります。
ドイツのメンケル首相が、選挙後に移民の受け入れ制限を設けると表明しました。民主主義は、決定過程を明確にして多数の意見に決するという原理だけであって、表面に見えないように隠蔽したお金や利権の遣り取りは存在しないものと思われてしまう。また、高邁な理想のために投票することも稀にあるかもしれませんが、普通は何らかの利益を得る見込みがある(あるいは主義主張に近い)候補者に投票するのだから、手続き自体が高潔な意味を含んでいない。結局、人の世の現実を本書で実感しました。
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