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佐々木毅著、講談社学術文庫刊
何故、トランプが大統領になれたのか全く理解出来なかったので、何冊か本を読んだところ、以前は民主党支持者であった白人労働者が中流階級から滑り落ちるに従って、アメリカ第一を唱えるトランプに、自分自身の生活の向上とアメリカの威信の回復を託したのだという論に触れ、アメリカの凋落が原因のようだと理解しました。
その一方で、日本の保守とアメリカの保守は異なるのだという論に触れ、確かめる為に本書を手に取りました。
本書で理解してところでは、ヨーロッパの保守主義は、フランス革命により生じた様々な社会改革を否定する立場であるに対し、アメリカは自由と平等、人民主権を基本原理として作られた国家なので、アメリカの保守とリベラルは、どちらもその前提を同じくしている。
保守主義は、「個人主義的で自由放任主義に傾斜する古いタイプの自由主義」であり、リベラルは「個人のより高度な発達を目標に、経済面での政府の役割を強調する流れ」であるとしています。
本書は、1993年に出版されましたが、丁度、クリントンが大統領に就任する直前の時期でした。本書では、保守主とリベラルが、時代の変化によって生じた問題に直面して、自らを変えつつ、相手を攻撃する様々な論客の議論を引いて、その論戦の流れと、その時々の政府の政策を紹介しています。
この変遷を辿ることで、民主政治の原則が明らかになるように構成されており、クリントン政権での政策の方向を示して終わっています。
本書で、アメリカの政策を巡る議論のダイナミズムに触れ、日本の曖昧な「空気」による政治の変化との違いに驚きました。
予定調和を前提とした議論に終始するか、相手の議論を無視して自説を延々と垂れ流すだけの無益な議論の両極端になり勝ちな日本人の議論と異なり、アメリカの触れれば血が流れるような厳しく鋭い議論の応酬と、何と違うのでしょうか。
アメリカの政治状況を観察して理解することは、その影響を大きく受ける日本にとって決定的に重要です。
かつて日本が洪水のような輸出攻勢を掛けた時とバブルの絶頂期に、アメリカの逆鱗に触れ痛い目に逢いましたが、その激しい反応の生成過程も本書で理解出来ます。つまりアメリカの覇権が凋落しつつあった事でした。
アメリカの政治を理解する為に、非常に有益な著作です。
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○佐々木毅 ○歴代アメリカ合衆国大統領の一覧
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評価は5です。
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