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伊藤潔著、中公新書刊
50代に台湾に二回旅しました。
妻と、初めて行く台湾旅行はパックツアーでしたが、到着するとツアー参加客は妻と私だけでした。
専門のガイドを雇った感じで、後にも先にも無い、ある意味とても贅沢な旅行でした。
その時の添乗員の方は、日本で働いたことがあるそうで非常に流ちょうな日本語で、生年月日が私と同じでした。互いに証明書を見せ合ったので間違いありません。
控え目で感じの良い方でした。
自由な日が一日あったので、地下鉄で移動し、町中の食堂でびっくりする程安価で美味しくボリュームたっぷりの食事をしたことも思い出深い。
二度目の台湾旅行は、台湾一周の弾丸ツアーで、添乗員はかなり年配の男性でした。
日本統治時代に日本語教育を受けたとのことで、非常に流ちょうな日本語でした。
ツアーの中には、三人連れの賑やかで愉快な初老のご婦人三人組のお陰で、バスの中は終始和やかでした。
戦時中に出征し戦死した高砂族の方々の墓所がある観光地では、控え目な説明ながら心に残りました。
後に韓国に行った時は、ツアーガイドが、豊臣秀吉の出兵で多くの被害が出たことを何度も持ち出しましたが、噂通りの酷さに出会い二度と行かないことにしました。
中国は、北京オリンピックの数年後に行きましたが、当時の急激な経済成長で富裕層が登場し、中年男性のツアーガイドの金持ち自慢や観光関係者の無愛想さに驚きました。
タイとベトナムは、開発途上国の活気を感じましたが、人々の振るまいが穏やかなことに感銘を受けました。
旅行した東南アジアの中では、台湾に最も良い印象を持ちました。
しかし、日本から近い台湾なのに漠然とした知識しかありません。
また韓国と同様に日本の領土であったのに、現在の日本に対する国民感情の違いや、国民性の違いに興味を持ちました。
たまたま見掛けて本書を手に取ったのは、そんな思いがあったからだと思います。
本書は17世紀初頭にオランダの支配を受けた頃から20世紀末までの台湾が辿った道筋を辿っています。
著者は、台湾生まれの本省人でありながら、日本への留学後に、日本に帰化して日本名を得たとのことです。
書きぶりは、極めて客観的です。
例えば、日本統治時代の日本の統治方針と様々な施策を辿りながら、現代の台湾へ繋がる基礎を形成した日本の功績を示しながらも、それは植民地政策の手段であると、冷静に分析しています。
そして「犬の次に豚が来た」という言葉に象徴される終戦後の国民党の悪逆無道の時代と、やがて訪れる民主化の流れも生き生きと描かれています。
台湾の歴史のあらましを理解するに適した良書と思います。
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○台湾 ○伊藤潔
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評価は5です。
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