読書三昧

本は一冊一冊がワンダーランド。良い本との出会いは一期一会。そんな出会いを綴ります。

技術大国幻想の終わり

2017年08月17日 20時37分08秒 | ■読む
畑村洋太郎著、講談社現代新書刊
シャープ、東芝など、日本の代表的な会社が経営に失敗し、苦しい状況に追い込まれている様に触れると、かつての黄金時代が嘘のように感じます。大分前に「不確実性の時代」という言葉がはやりましたが、先進諸国ではこの数十年がその時代に突入しているのだと思います。
振り返れば、日本が高度経済成長の軌道を辿っていた頃、日本の電機メーカーが世界各国で売り上げを伸ばすのにつれ、アメリカの競合会社は、倒産したり家電事業から撤退しました。そして、アメリカの産業構造が大きく変わり、今日のネット社会の繁栄を招いた技術革新が登場したのでした。
アメリカの産業は、一般化した技術から未知の領域の技術にシフトしたのに対し、日本のメーカーは成功体験に依拠し、その長所を磨き上げる作戦を採ったようです。本書は、その道筋の果てに、消費者を無視した製品開発によって真に訴求力のある製品を作れなかったこと、変化する市場に的確に対応する体制を構築できなかったことが凋落の原因であるとしています。
これらのことは、製造業だけでなく、今日社会活動を行う組織すべてに当てはまることです。今日は昨日の延長ではない。明日もまた今日の延長ではない。変化を感じ取りその原因を探り素早く的確に対応することが求められる時代になっているのです。戦略的、戦術的に。日本人が不得意とする思考形態であると思います。
また、組織階層の問題でも取り上げており、そのような対応には管理層の能力がきわめて重要であるが、現在の日本の教育が必要な人材を育てるシステムになっていないとしています。受け身ではなく自ら進んで世界を理解し解決策を模索する性向を養うことが必要なのでしょう。
著者は1941年(昭和16年)生まれです。工学系の専門家で長らく物作りと経営の現場で知見を重ね学識を深められたようで、本書には、著者の深みのある洞察が、冷静かつ平易に述べられています。
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URL => https://ja.wikipedia.org/wiki/畑村洋太郎
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評価は4です。

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