2013年9月、オバマ米大統領はシリア攻撃を決断、議会手続きも完了し秒読みの段階で中止した。
【ワシントン共同=吉浦寛仁】オバマ米政権はシリアのアサド政権が化学兵器を使い多数の市民を殺害したと結論付ける報告書を8月30日に公表し、軍事介入に向けた国内手続きをほぼ終えた。議会との最終調整が終われば武力攻撃が可能となり、オバマ大統領の決断は秒読み段階に入った。
ロシアや中国の反対でオバマ大米大統領の腰が引けたのが中止の理由だが、それ以降国際社会における米国の影響力が急速に低下し、ロシアのクリミア併合や中国の南シナ海進出へと繋がっていく。
オバマの失政である。
今回のトランプ米大統領のシリア攻撃はオバマ前大統領が3年間も長期にわたり遣り残した仕事(不作為)を実行したことになる。
トランプ大統領の驚くべき決断力の早さに、「いくら兵器工場をピンポイント攻撃しても、人間の血が流れることは避けられず、民間人への誤爆だって有り得る」という批判もある。
人命の価値を数で計ることは出来ないが、トランプ大統領は、誤爆による不可避な死傷者の数と化学兵器を放置したために生じる死傷者の数を比較し、後者のほうが圧倒的に多いと判断したのだろう。
人間の病と国際情勢を単純に比較は出来ないが、癌を早期発見し手術で癌を摘出すれば治癒の可能性が有るのに、手術による出血や痛みを恐れて、放置したら癌は進行・転移し生命そのものを奪うこともある。
だが早い決断で、手術を決行、癌摘出を行ったって命を長らえた例は数多くある。
当日記はトランプ米大統領の敏速な「手術決行」に賛意を送る。
「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成29年(2017)4月9日(日曜日)弐
通算第5261号
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
金正恩斬首作戦はたしかに存在することを中国は実感した
米国の北朝鮮単独爆撃に、中国は沈黙を余儀なくされるだろう
***************************************
シリア空軍基地へのミサイル攻撃は、「戦果」としては疑わしい。
59発撃って命中は僅か23発。滑走路には被害が殆どなく、翌日からIS空爆にシリア空軍は飛び立っている。
つまりシリア空軍基地に壊滅的打撃をあたえてはいない。
しかし、軍事的成果より、政治的効果は激甚であった。
中国首脳との夕食会最中にミサイル発射を習近平につたえ、マティス国防長官が具体的に説明した。だから反論の時間的余裕も、いやその準備もなかった中国側はそそくさと宿舎に引き上げた。
通商交渉でも「百日計画」の策定を呑まされ、南シナ海で国際秩序を護れと言われ、いったいどこに訪米の成果があるのか、習近平は帰国後、鼎の軽重を問われることになるだろう。
夕食会直前に政権の最終意思決定は、トランプの別荘でなされ、テレビ中継でホワイトホウスのオペレーションルームのペンス副大統領と繋がった。
会議にはティラーソン国務、ロス商務、ムニューチン財務、大統領補佐官と顧問四名が居並び、シリア空軍基地襲撃が決まった。バノン上級顧問が隅っこのイスに腰掛けている写真が配布された。
問題は、このタイミングの選び方、まさに中国の反応ぶりをリトマス試験紙のように試したのではないのか。
北朝鮮攻撃のシナリオは(1)金正恩斬首作戦(2)ミサイル基地爆撃破壊(3)核施設破壊。(2)と(3)の同時作戦などがおおまかに考えられるが、どれでもいつでも実行できる態勢は整っており、すでに米軍は600発のミサイルを配備している。しかも在韓米軍とは演習中である。
中国は米国のシリア攻撃を目の前に見て、にぶく対応しただけで、もし北朝鮮に大規模な米軍単独軍事行動がおこなわれても、沈黙を余儀なくされる可能性が高いことが分かった。つまり中国の軍事的介入はない、とトランプ政権は判断したと考えられる。
時期的には予想より早いかも知れない。
北朝鮮が、もし核実験をおこなったら、48時間以内にミサイル発射が命じられる可能性は薄いとはいえ、存在する。
朝鮮半島に戦雲高し。
シリアへのミサイル攻撃後、フロリダ州の別荘の一室でジョセフ・ダンフォード統合参謀本部議長からビデオ会議で報告を受けるトランプ大統領ら The White House/Handout via REUTERS
☆
>北朝鮮が、もし核実験をおこなったら、48時間以内にミサイル発射が命じられる可能性は薄いとはいえ、存在する。
北朝鮮へのミサイル発射は、金正恩の斬首作戦の一環と考えてよい。
これこそが、トランプ米大統領の癌摘出手術である。
☆
朝鮮半島に波高し。
ということは東シナ海に波高し、ということだ。
今朝の沖縄タイムスは、相変わらず能天気な「辺野古移設反対」の関連見出しが。
■二面トップ
国、本格的工事へ着々
辺野古新基地 20日にも護岸着手
最高裁判決を受け作業急ぐ
県阻止の姿勢崩さず
国早い段階から準備
国は最高裁勝訴で「辺野古移設」は「終わった」問題と認識。
一方の県は「最高裁判決がすべてではない。民意で阻止する」というもの。
分かりやすく英文法用語で説明すると、こうなる。
国⇒過去完了形
県⇒現在進行形
筆者の見立てでは、県がいくらジタバタしても悪足掻きに過ぎず、仮に一時工事を中止させることが出来てたとしても工事そのものを止めることは出来ない。
そうそう、今朝の沖縄タイムス社会面の下段にこんな見出しも。
辺野古沖に航路標識
防衛局 大型工事船入る準備か
☆
では、沖縄タイムスは米国のシリア攻撃をどのように報じているか。
共同丸投げで、こんな見出しが。
■三面トップ
「米のシリア関与評価」
首相、トランプ氏に伝達
北腸線で緊密連携
■四面トップ
米空母群、朝鮮半島へ
存在感誇示 北朝鮮けん制
米、即応態勢アピール
中国にも行動迫る狙い
【おまけ】
沖縄タイムス+プラス ニュース
名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブの工事用ゲート前で10日午前、機動隊が新基地建設に反対して座り込む市民約60人を排除し、ミキサー車など工事用車両約35台が基地内に入った。プレハブ小屋や仮設トイレを積んだ車両も確認できた。
メインゲート前では市民約20人が複数回、基地を出入りする米軍車両に立ちはだかり、機動隊に排除された。プラカードを掲げ、「NO BASE」「NO WAR」と声を上げた。米軍のシリア空爆の新聞記事を掲げて抗議する人もいた。
海上は波が高く、目立った作業はない