「日ハムに逃げられたからパンダか」
安倍政権VS共産党の様相 市民「辺野古移設より市民生活を優先で」
10日夜、名護市城公民館。渡具知氏陣営の女性部総決起大会には主催者の予想を超える約540人の市民が集まった。制服姿の女子高生十数人の姿もあった。
「稲嶺市政8年間に閉塞感だけが残った。輝く名護市にしたい」。渡具知氏がこう訴えると「そうだ」と歓声が上がり、会場は熱気にあふれた。公明党の古屋範子副代表も駆けつけ「自公の連携で市政刷新を」と、こぶしを振り上げた。
同党県本部は、平成26年の前回市長選では自主投票としたが、自民党からの強い要請を受けて自公協力が実現した。
名護市長選は投票率を勘案して3万5000票の争奪戦となる様相だ。公明党県本部が推薦を見送った前回は自民党系候補が4000票超の大差で敗れた。それだけに、自民党にとって「基礎票2000~2500票」とされる公明党の力は大きい。(略)
「8年間で名護市は暗くなった。稲嶺氏は辺野古に基地を造らせないと言うだけで、経済や地元振興は置き去りにされてきた」。普天間移設先の地元、辺野古区の高齢住民は10日、産経新聞の取材にそう訴えた。同区住民の大半は「移設支持」で、米軍キャンプ・シュワブのゲート前で反基地活動に参加する住民は数人にすぎないともいう。
一方で周辺11町村の首長・議長の多くも「北部の振興に向けて中核の名護市がガンになっている」と渡具知氏支持に回っている。38年間続いたプロ野球、北海道日本ハムファイターズのキャンプも28年、名護市から一時撤退するに至った。球団から球場など施設改修を要請されながら稲嶺氏が無視を決め込んだからだ。その経済的代償は計りしれない。
稲嶺氏の公約とは裏腹に政府による辺野古移設工事は着々と進む。政府との不毛の対立から稲嶺氏は米軍再編交付金を受け取れず、約135億円の財源を失った。対する渡具知氏は移設前提で同交付金を活用し、学校給食費完全無償化をはじめとする子育て支援や医療整備など市民生活の向上に役立てるという立場だ。
市民の間でも「辺野古より市民生活」という機運が漸次浸透しつつある。「無党派」だというタクシー運転手や飲食店員ら十数人に聞いても然りだった、自身の「権限」で辺野古移設を阻止するという稲嶺氏の公約が「幻想」に過ぎないことに、市民が気づき始めているのは間違いない。
12日夜、名護市で開かれた稲嶺氏を支える市民集会には約1000人の市民らが出席した。稲嶺氏は「辺野古(移設)を止める希望を持ち、あきらめない」と“金科玉条”の持論を唱えた。
共産党の志位和夫委員長も駆けつけ「辺野古(移設)を推進する官邸、自民党丸抱えの相手に負けるわけにはいかない」と声を張り上げた。(略)
稲嶺氏が年明けに唐突に打ち出した目玉公約が「パンダの招致」だ。稲嶺氏は11日の記者会見で「実現性は高い」と胸を張ったが、1頭で年間3億円以上の維持費が必要とされる。
「日ハムに逃げられたからパンダか。そんな財源があるなら、名護市の未来を担う子供たちの給食費無償化に充てた方がどれだけ有益か…」
前回、稲嶺氏を支持したという50代の男性会社員はそう語った。(高木桂一)