映画と渓流釣り

物忘れしないための処方箋

1917 追いかけっこ

2020-02-16 08:40:00 | 新作映画
アカデミー大本命の作品だったけど、最後の最後「パラサイト」にやられちゃった。アカデミーではよくある事だけど、まさか韓国資本の韓国語映画に攫われるとは思ってもみなかっただろう。

ただ、鑑賞して実直な感想としては、「パラサイト」の方が断然優れた映画だって事。ハリウッドの色々な思惑があるのは仕方ないとして、結果は正しい判断だった。一年早ければ「グリーンブック」じゃなくて「ROMA」になっていただけなんだろう。

だからってこの映画がつまらないわけじゃない。第一次世界大戦に詳しくないし、地理的な教養も不足しているためピンとこない部分はあるけど、物語は至って単純だから難しくない。敵のドイツ軍に見つからないように、前線にいる味方のイギリス軍へ伝令を届けるお話だ。

スピルバーグの「プライベート ライアン」に似ているなと思ったけど、あれは第二次世界大戦のお話だったな。30年くらいの違いなのに通信手段と航空機の性能は飛躍的に進歩しているのだと思った。戦場の惨たらしさは何年経っても変わらないけど、殺戮兵器の性能と精度が高まって犠牲者の数は飛躍的に増加している事もわかる。

技術的な進歩によって臨場感あふれる映像を体験できることは嬉しい限りだ。特に映画館での鑑賞は大画面を通して五感に響くような驚きをも与えてくれる。ネタバレになってしまうけど、仕掛け爆弾の爆発や狙撃された弾丸の爆ぜる音などは心臓が止まるかと思った。
使命だけで戦場を駆け抜けた伝令にも心の葛藤がある。この地獄に巻き込んだ戦友は理不尽な最期を迎え、一人敵の銃弾を掻い潜らなければ1600人の命を無駄にするかもしれない。だから走る。

それでもやっぱり映画は人の心を介して物語が語られないと本物の一級品にはならないと思う。「プライベートライアン」にあってこの作品に欠けていたのはそこの部分だ。息子の殆どが戦死した母親のもとへ、末息子だけでも生きて返すためのミッションに命を懸けた男たちの心意気が伝わったから「プライベートライアン」は傑作になった。

映像としての興奮は十分味わえたけど、心を揺さぶるほどの感銘には至らなかったのはそんなところだろう。これがアカデミーを受賞していたら、またアメリカ人(ハリウッド)に幻滅するところだった。