街は10月になると爽やかな風の中に仄かな金木犀の香りに包まれる。
あんなにも明るかったのに、出勤する朝5時過ぎの空は暗いまま黙っている。
あれから毎日毎晩、結子さんの残した残像を観てはベソベソ泣いている。
大好きだった女優の思いもしない最期にずっと戸惑ったままだ。
結子さんの供養になるかどうか分からないけど、これからも残された作品にできるだけ多く触れてゆこう。
そして、先ず自分の心がポキッと折れたりしないよう柔軟な生き方をしてゆこう。
自分の周りに死にたいとまでは思い詰めていなくとも、今日が生き辛かったり明日が来るのが怖かったりする人があれば、寄り添ってあげられるような人になるよう努力してみよう。
お金も慈悲深い愛も与えることはできないけど、せめて話を聞くくらいはわたくしにもできるかもしれない。
結子さんが美しく輝いていたいくつかの映画を思い出しながら、もう泣くのはやめるよう気持ちを切り替えましょう。
演技者にはそれまでとそこからが必ずあるように思う。
「天国の本屋〜恋火」は元気で男勝りな女の子から優しくたおやかな女性に変化した記念碑的作品だと思っている。地域の花火大会を成功させるべく奔走する姪っ子の香夏子はそれまでの結子さん像。叔母で既に他界したピアニストの翔子は後者。二役を演じたことでこの作品がターニングポイントとなった。
テレビドラマも含めデビューからしばらくはボーイッシュな役柄が多く、髪もショートだったから実はあまり好きな女優ではなかった。作品評価も高い「黄泉がえり」での好演は目にとまったけど、女性というより女の子の雰囲気が抜けず恋心を掻き立てられるようなことは無かった。
完全に虜になったのは「いま、会いにゆきます」。以前にも紹介したことがあるけど、我が家に家族を増やすきっかけになった作品だし、結子さんの儚げな美しさが際立っていた。そこから暫く結子さんの映画を追い続けた。着物姿の美しい「春の雪」キネ旬主演女優賞を獲得した「サイドカーに犬」小学校の先生役が主役の沢尻エリカより魅力的だった「クローズドノート」最も多くタッグを組んだ中村監督との「チームバチスタの栄光」「ジェネラルルージュの凱旋」死にゆく奥さん役を朗らかに演じた「僕と妻の1778の物語」そして唯一無二のキャラクターとなった姫川玲子「ストロベリーナイト」。
以降、脇に回ることが多くなったけどその美しさは最後までわたくしの憧れだった。
結子さんが輝いた時代にご一緒できたことを感謝しています。
どうぞ、安らかにおやすみください