2021年1月スタートの冬ドラマは実力のある脚本家が揃い、いつも以上に期待したのだけど終わってみれば随分淋しい結果になってしまった。
最後まで楽しませてくれたのは宮藤官九郎の「俺の家の話」だけで、それ以外は今までのキャリアからすれば低い評価になってしまう。一応簡単に書き並べてみるけれど、つまらなかったドラマの感想を書くのって結構しんどい。
「ウチの娘は、彼氏が出来ない‼︎」
ラブストーリーはやっぱり上手いなと感じたけど、家族の話は浮世離れしていて現実感がない。特に音信不通の血を分けた父親と親身になって育ててくれた血縁のない母親という弄り甲斐のある設定ながら、ファンタジーのような作り物にしてしまってはドラマにならない。
菅野美穂、久しぶりに観たけど彼女にしか出せない味がちゃんと残っていて、今後も出し惜しみしないで露出して欲しい。浜辺美波、美しい可愛い演技力もある。それでも何か一つ足りないような気がする。満遍なく合格点を取らなくていいから、ドカンと一発印象に残るような役を演じるべきだろう。
「にじいろカルテ」
岡田惠和ドラマとしては不満しか残らない酷いものだった。豪華で上手い役者を揃えたのにもったいない。架空の山村が舞台なのは良いとしても、虚構と現実がチグハグし過ぎていて人にもロケーションにも物語にも全く共感できなかった。前作「姉ちゃんの恋人」が傑作だったので余計落差を感じる。テレビ朝日品質に問題があるのかもしれない。
井浦新、もうこの程度のドラマに顔出すのやめようよ。
「天国と地獄」
綾瀬はるかと高橋一生の演技合戦を堪能するためのドラマとしてみれば成功したのだろうけど、森下佳子のポテンシャルからしたらつまらないドラマだった。設定が複雑で善悪を明確にし辛い物語は連続ドラマ向きとは思えない。二時間で完結する映画であれば緊迫感を維持しながら物語を収められたであろうに。
このシーズン一番の期待作であっただけに残念だった。
「俺の家の話」
そう来たかというのが最終回を観た感想。父寿三郎の死を最後にもってきて俺の家の話は完結するのだと思っていたから、全ての視聴者は上手くだまされたと泣きながら観終えたんじゃないかな。
クドカンじゃなければ湿っぽいお涙頂戴ドラマになってしまっただろうけど、役者の頑張りもあって上質なコメディとして完成した。シックスセンスネタも程よくブレンドされていたからくどくなかったし、何よりも父と子の温かい情愛を描くのにこの手の使い方はとても効果的だった。長瀬も西田も渾身の演技で父子のドラマに幕を引いてくれた。しっかり家族が描けたドラマがやっぱり面白い。宮藤官九郎の脚本は映画より連続ドラマで映えると常々思っていたけど、「あまちゃん」以来の傑作だと思う。この作品を最後に表舞台から退くという長瀬智也にとっても代表作となる作品だった。彼の醸し出す独特の雰囲気はひと時江口洋介が纏っていたお兄ちゃんキャラを髣髴させてくれ、代えがたいものだったから残念だな。西田敏行も立ち演技が難しくなっているようで、こちらも長くは観ること出来ないかもしれない。いい役者が欠けてゆくのは辛いもんだ。
「モコミ」
こちらもドップリ家族の物語だけど、痛みも喜びもみんな中途半端に描かれてしまい心の底から応援できなかったのは残念だった。家族一人一人表向きとは違う顔を持っているという使い古された題材は、よっぽど深層心理にまで辿り着けないとかえって嘘くさくなる。一話30分の深夜ドラマでも去年の「コタキ兄弟」のような傑作も生まれるのだからやっぱりクリエーターの力なんだと思う。