つい最近原作を読んだばかりなので、映画の脚色に些か驚いている。
大泉洋を当て書きで書かれた原作は出版不況が前面に訴えられているので、如何にも小説家がつくり上げたドラマだと感じた。引換え映画版は社内の権力構造や駆け引きがメインになっており、登場人物のキャラもかなり変更されている。
大泉洋の毒気が映画版では薄まっている反面、原作では不倫相手の部下だった高野恵が松岡茉優の演技もあって主役と同等の重要さで描かれていた。佐藤浩市の狡猾な社長も原作にはない設定だし、創業者ジュニアも原作にはない。
ハッキリ言って、映画の脚本の方が断然面白かった。数多登場する人物説明もキレの良い吉田大八の演出テンポで上手く捌けており、原作で感じたスピード感の無さとは真逆の印象を受ける。傑作「桐島、部活やめるってよ」の時と同じように映画ならではの楽しみを味わえる作品だと思う。作品名にもある騙し合いの妙味があるのは原作の方かもしれないが、その原作を上手く手玉に取った映画はそのままでも面白いけれど、わたくしのように原作を既に読んでいる人にとって新鮮に感じるのではないだろうか。
久し振りに吉田監督作品を堪能できた。