映画と渓流釣り

物忘れしないための処方箋

2023春ドラマ5番組

2023-05-06 16:36:00 | 旧作映画、TVドラマ
「教場0」
お正月特番ドラマとして制作され高評価だった番組を連ドラにするとは、いかにもフジテレビらしい浅はかさだけど、脚本君塚良一で演出は中江功というエースを投入して本気で月9枠に挑んでいる。二話で指導される刑事候補が変わっていくのも飽きっぽい視聴者には観やすい作りにもなっている
木村拓哉は特番ドラマの時より若い設定だし義眼になる前なので不気味さは軽減されている。キャストで面白いなと思ったのは事務員役の堀田真由だ。掴み所のない不思議な味わいで毎回楽しみ
序盤は安定した王道の作りで、今後もそうそう崩れそうもないから期待したい

「王様に捧ぐ薬指」
橋本環奈は癖のある役を与えられた方が魅力的なので、プライムタイムに放送される恋愛ドラマじゃやっぱりつまらない
逃げ恥以降、夫婦の形を変形させながらドラマチックに描こうと試行錯誤しているけど、いつも既視感だらけで食傷気味だ。このままだとあと二話でリタイアしそうな退屈なドラマになりそう

「ペンディングトレイン」
山田裕貴と赤楚衛二は役柄にあっているし、そもそも上手い若手役者なんですんなり受け止められた。脇に実力ある役者も配置されているので群像劇としても見応えある。そんな中でも古川琴音は自己中な派手女を楽しそうに演じていて頭一つ抜けている
脚本はオリジナルなんだろうか?金子ありさも大河ドラマを担当したくらいなので実力はソコソコあるだろうけど、このシチュエーションで10話持たせるのはきつくないかな。原作あるなら仕方がないけど、乗客もあんなに多いとパーツ毎にドラマ作りづらいだろうに。早朝とか地方都市の最終電車設定なら人数も絞れたし、一人一人にキャラ振りできたからもっと纏まりあるストーリーになったと思う
名作猿の惑星と同じ落とし所にしたくなかったのかもしれないが、最初から未来に跳んでしまったことをネタバレさせてしまったのはどうかと思うけど

「日曜の夜ぐらいは」
山田太一の傑作「想い出づくり。」をリスペクトしたような作り。岡田惠和の脚本はしっとりしていて心地いい。想い出づくりの主人公三人はそれぞれの悩みを抱えながらも結婚する前提でのお話だったのに、40年後のドラマではヤングケアラーや孤独な仕事に没入する女性たちを描いている
まだ一話しか観ていないけれど、この春放送されるドラマの中では注目すべき作品じゃなかろうか
清野菜名がちょっとだけ苦手で、荒んだ生活を見せられた序盤は辛かったけど、ツアーに参加してから本来の自分を曝け出すくだりではグッと寄り添いたくなる主人公になっている。脚本上手いな
岸井ゆきのは貫禄の演技。映画「ケイコ目を澄ませて」で得た自信がそうさせているはず。やっぱ、良い女優は映画でミッチリしごかれるべきだろう。教場にもゲスト出演してた生見愛瑠は伸び代がありそうで期待したい

「らんまん」
一にも二にもあいみょんが歌う主題歌「愛の花」を毎朝聴けるのが嬉しい
ドラマも得意の偉人物語なのでこの作ハズレはないだろう
神木隆之介はイメージぴったりだから、これからの朝を気持ちいいものにしてくれそうだ





villageは国家の縮図なのか

2023-05-06 09:17:00 | 新作映画


わたくしの郷里にある八ッ場ダムのことを考えた
半世紀前からの課題に決着が付いたのは呆気なかった。子供の熱病のように短期間で冷めた政権交代によって半世紀近くペンディングになっていたダムは時を経ず水を満々とし、線路も道路も立派に整備され今になれば一体誰が反対していたんだろうと思う
幼少の頃に見た、今や湖底に沈んだ街道沿いに掲げられていた「ダム建設反対!」のアジ看板は何処に行ったのか
反対していた人々は今どうしているのだろう

さて、映画について
作品毎に違った題材を扱い、標準以上の作品を作っているのは凄いこと
藤井監督まだ三十代、これから深みを増して是枝監督のような異才を放つ様になれるか、それとも森田監督のように職人監督のまま終わってしまうのか
次々と作品が公開されるというのは需要があるわけで喜ばしいのだけど、器用にまとまってソコソコの満足感をもたらすような作家になる恐れもあるということ。今回の作品も良く出来ていて褒めたいのだけれど、もっと薄ら寒さを感じられる映画になって欲しかったと高望みする気持ちもある

出世作「新聞記者」も、みてくれは社会派作品のようだった。でも、望月記者本人のドキュメンタリー映画の方が断然面白かったし、劇映画であるなら熊井啓監督作品のような暗さと遣る瀬無さを観せないと単なる作り物でしかない。ヤクザを主題にした映画も余命10年を描いた作品も、結局上っ面の物語に感心しただけで心の奥底に刺さるものはなかった

残念ながら今作も上っ面の面白さだけで終わっている(その面白さだけで充分なのかもしれないが)
手垢のついた主題を軸に小さな村社会の人間関係の軋轢が描かれた。ゴミ処理場、不法投棄、政治や行政との癒着、知っている。大昔からある臭い物に蓋をする社会、昔のことは水に流して清算するコミュニティー。知っているんだよそんなこと
だから映画作家の貴方は(ボンクラな人じゃないと思うから)映画にも印象的に映された真っ黒なあの穴、ゴミ処理場の真っ只中に空いたあの穴の中を観せて欲しかったのだ

否定的な文面になってしまったが、面白い映画であることはちゃんと伝えておこう
横浜流星のダークさも嫌味じゃなかったし、黒木華の受け身演技はいつもながら感服した

そう言いながらもう一つ
村にはあんなに若い人は居ない
若い人って、村社会の感覚だと40代。下手すると50代でも若手だったりするし
20代の人なんていないのだよ。主な住人の老人達はお迎えが来るまでどう生きていくかが大切で、孫子の世代に残るであろう負の遺産に構っていられるほど余裕はない。田舎に生まれ育った還暦過ぎたジジイが言うのだから、都会暮ししか知らない若き世代に反論の余地はないだろう

そうやって村(village)も国家も上辺をうまくすくい取りながら転がっている
わたくしもその中で同じ方向に速度を合わせて転がっている