むぎわら日記

日記兼用ブログです。
野山や街かどで見つけたもの、読書記録、模型のことなどを載せております。

『たった1つの図でわかる!【図解】新・経済学入門』髙橋洋一(あさ出版)

2024年12月26日 | 読書
題名にある図とは、供給曲線と需要曲線のこと。ミクロ経済でもマクロ経済でも為替変動でも金融政策でも、すべてこの図に当てはめると、単純に理解できると言うのです。
ミクロ・マクロ経済くらいは高校の社会科で習うので、簡単すぎるかなと思いましたが、ニュースで取り上げられる為替相場や増税・減税の効果など、わかりやすく解説されていました。キャスターやコメンテーターの発言で、どこを無視して、どこを聴くかが整理されて有意義でした。
著者は、この図に当てはめれば経済の9割は理解できると言います。残りの1割は、各人の技量だと主張していました。
わたしは、残り1割はハッキリと解らないので、気象と同じく、経験則や統計等を元にした勘であると理解しました。経営・経済の専門家で仕事をしている人でも、ほとんどの人が間違えるのは、その1割がカオスの中にあるからでしょう。
とは言え、9割を理解するには、これだけで十分だと言うので、投資などを躊躇している人は、基礎知識として読んでおくのも良いかもしれません。

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『いじめとひきこもりの人類史』正高信夫(新潮新書)

2024年12月23日 | 読書
餌付けをされたニホンザルでは、個体同士の階級が出来、やがて血縁関係の階級へと発展し、餌を優先的に得られる個体とそうでない個体に別れることが観察されています。しかし、餌付けされていないニホンザルでは、そのようなことが観察されていません。人間に置き換えると狩猟生活の時代は獲物を狩れば平等に配布されるが、農耕時代になると平等ではなくなっていったようです。
集団生活からはじき出された人は、村の外へ生活の場を移していきました。日本では、共同生活をしている里と、はじき出された人が棲む山(山男、山姥)とが成立しますし、ヨーロッパでは、村と森(バンディット)にわかれます。
社会からはじき出された者は、職人・芸術家などとなり、生計を建てることになります。しかし、農耕が発展していくと、山や森などの住処が減っていき、のけ者にされたものの居場所がなくなってきました。行き場のなくなったものたちの場所は、部屋の中だけになってしまい引きこもりが誕生したと言うのが「人類史」の部分となります。
この本の問題点は、そのあとにあるのですが、引きこもりを治療するクスリがあると著者は主張し、その実験結果などを踏まえ、その効果をアピールします。そんなクスリがあるなら結構なことですが、なんとなく胡散臭く感じました。
読み終わって調べてみると、そのデータは著者により捏造されたもので、勤めていた京都大学に2022年1月25日、研究不正があったと認定され、懲戒解雇相当の処分にすると発表され、その後、雲隠れしているようです。
前半は面白かったのですが、後半、おかしなことになっていました。
こういうこともあるのですねぇ。


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『「めんどくさい」が消える脳の使い方』菅原洋平(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

2024年12月18日 | 読書
やらなければならない仕事や家事、やりたいと思っていてもやらないでいる趣味、めんどくさいから、やろうとするとめんどくさくなる、こんな体験は誰にでもあると言えます。わたしは、1日に何回もめんどくさいと思ってしまいますし、やらないでしまうことも多いと思っています。
そんなとき、めんどくさいを克服して行動に移せる提案をしてくれるのが本書です。
この手の本は、「すぐやる人になる」とか「1歩を踏み出すために」とか、いろいろ出ていますが、ここでは脳科学を根拠に、提案の説明をつけ足しています。
要は、自分にあった理屈付けの本に出会うかどうかで効果が決まるわけです。
脳内物質や脳の神経系の働きなどを根拠に、いろいろな提案がされています。
これは、すでに行っている。そういう方法もあるのかなど気が付くことも多く、脳の仕組みに興味がある自分としてはうなずけることも多かったと思います。
物足りない点は、脳科学の分野のエビデンスがハッキリしないこと。どのような研究で得られた結果なのか学術的な記述がなされていない点です。まあ、気軽に読める本にするために省略しているのでしょうが、裏を取りたい人は、他の本に頼ることになります。
特に、興味を引かれたのは、ドーパミンの作用でした。
例えば絵を描きたいと思っているが、めんどうになり、結局、描かないことをくりかえしているとします。このとき、脳は「絵を描きたいけど、めんどうになり、結局、描かないだろう」と予想しています。そして、描かないと、「やっぱり予想が当たった」と考えるので、ドーパミンが放出され快感を得ることになります。これが繰り返されると快感を得るため、めんどうになり描かないことを繰り返すことになります。
これを突破するには、脳の予想を裏切り、描いてしまうこと。一度、裏切ってしまうと、ドーパミンの出が悪くなるので、抜け出すことも可能だと言うのです。
思い当たる節があるので、こんど、実践してみようと思います。


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『日清戦争 近代日本初の対外戦争の実像』大谷正 (中公新書)

2024年12月15日 | 読書
太平洋戦争や日露戦争などのことは、いろいろな本で読んでいるのですが、日清戦争については、高校の歴史の時間に勉強したきりでした。なんとなく、近代的な日本軍が、旧式の清を破り、下関条約・三国干渉の結果、台湾をゲットしたくらいのイメージでした。
しかし、戦争の実態は、いつ始まって、いつ終わったか、どこと戦ったのかも朧げな、複雑な様相を呈していたようです。
軍夫の動員は、軍人と同じくらいの規模となったことにより、その犠牲も多くありました。
清の装備は、ドイツの近代的な銃器で武装しており、大砲も鋼鉄製のものでしたが、日本軍は村田銃と青銅砲が主力で、清の装備より近代的だとはいえなかったようです。
また、補給体制が整っておらず、日本側の死因のうち、戦死・戦傷死10%、病死88%で、銃弾・砲弾より、脚気・感染症・凍傷の方が多かったのです。 
日本の勝因としてあげられるのが、中央集権体制が確立されており統率して動くことができ、清軍はいろいろな軍がバラバラに動いていて戦意が低く統率がとれていなかったといわれています。しかし、日本軍でも中央が現地を完全にコントロールできず、たびたび現地軍が暴走しているので、戦意が高すぎたとも言えるでしょう。
また、教科書では、下関条約・三国干渉で、日清戦争が終結したことになっていますが、割譲された台湾に台湾民主国が設立され、統治のために戦うことになりました。この台湾との戦争は、植民地戦争の様相となり、日清戦争の約半数の犠牲は台湾でうけたものになります。11月には台湾統治宣言を出し、一応、決着はつきますが、山間部に籠った抗日組織との戦闘は、その後10年に渡りつづくことになります。
朝鮮では、日本軍による閔妃殺人事件が起こり、それが切っ掛けに抗日勢力が力をつけクーデターで親露政権が誕生し、三国干渉で失った遼東半島もロシアに租借され、多くの犠牲を払った割にロシアの進出を許してしまいました。
教科書に載っていた、「魚(朝鮮)を釣り上げようとする日本と中国、横どりをたくらむロシア(ジョルジュ・ビゴーの風刺漫画)」の意味が、今更ながらよく解りました。



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『活版印刷三日月堂 空色の冊子』ほしおさなえ(ポプラ文庫)

2024年12月12日 | 読書
 活版印刷三日月堂シリーズの過去がつまった番外編となります。
 このシリーズは、全6冊。

 1巻『星たちの栞』
 2巻『海からの手紙』
 3巻『庭のアルバム』
 4巻『雲の日記帳』
 番外『空色の冊子』(過去)
 番外『小さな折り紙』(未来)
 となっており、すでに本編4冊と番外編の未来を読んでいるので、シリーズ読了となりました。
 本書には、本編の主人公 弓子の赤ん坊のときからの過去を織り交ぜながら、本編に登場した人たちや、その周りの人たちの人間模様を描きます。
 このシリーズを通して、感じるのは、どの話もささやかな創作の物語だと言うことです。
 それは、栞だったり、朗読会であったり、小冊子であったり、卒園アルバムだったり、と、誰もがやったことがある、どちらかと言えばアマチュア側のものでしょう。
 それを手伝うのが町の印刷屋三日月堂です。
 このシリーズを通して、そんな小さな営みがつづいていることに癒しを感じます。確かにプロの生命を削って作るような創作物はすばらしいですが、アマチュアの娯楽としての創作物もちがった楽しさがあるものです。それを思い出させてくれる小説集だと思います。

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『津軽』太宰治(青空文庫)

2024年12月09日 | 読書
著者がふるさとの青森県の金木に帰り、津軽地方を旅する紀行文になっています。
家族や旧友との再会、そして素朴な交流をしながら、旅をつづけます。3週間かけて津軽地方を1周したと言うことですので、現代と比べると、えらくのんびりしています。
描写がうまいのでgoogle mapなどを見ながら読むと、津軽旅行に生きたくなります。それだけでも十分、郷土に恩返しをしたと言えるでしょう。
ラストの乳母との再開の場面は、小説のラストシーンさながらで、まさに「人間合格」と言える出来です。

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『介護士K』久坂部 羊(角川文庫)

2024年12月03日 | 読書
南木佳士、帚木蓬生など、医師の兼業作家を愛読しているのですが、久坂部洋もその一人です。この三人の中で、文学賞からもっとも遠く、もっともえげつない作家であると、賞賛の言葉を送りたいのです。
作者は在宅医療や老人医療に携わっているのですが、この作品でも、「こんなこと、お医者様が書いていいの!?」と思うようなことを平気でバンバン書いてきます。もちろん、自分の意見としてではなく、小説の登場人物の言葉を通してです。ある介護施設の老人の三人連続の不信死を巡り、介護現場・福祉制度の問題点をえげつなく取り上げていきます。建前をぶち壊す本音の部分をぶち込んでくるので、ある意味、爽快感があります。
この小説では主人公が二人いて、視点を交互に移しながら、ストーリーが進んでいきます。一人は疑惑のイケメン看護師K、もう一人はそれを追うルポライターの女性というエンタメの王道です。2視点交互切り替えはプロの小説家でも難しいのですが、ひっかかりなく読めるのは、プロ中のプロの文章力を持っている証ですね。
途中で、「この辺りの緊迫感とか、『罪と罰』を彷彿とさせる、久坂部羊版罪と罰を書く気なのか?」と思えるところがあったのですが、あとがきで、『罪と罰』のマニア向けオマージュをちりばめたと書かれており、「やられた、さすが羊先生!」とうならされました。
そして、最後のオチの一撃が、何がほんとうで何が嘘なのか、人は自分が作ったストーリーを信じてしまう生き物だと思い知らされることになりました。
これから、介護を受けることになるご老人方(自分も他人事ではない)、読んでおいて損はありません。

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『大航海時代の日本人奴隷 増補新版』ルシオ・デ・ソウザ, 岡美穂子(中公選書)

2024年11月30日 | 読書
十六世紀後半から十七世紀前半、日本で言えば、戦国時代後半から江戸時代初期の時代、ポルトガルとスペインが世界の海を支配し全盛を極めていました。
また、日本では豊臣秀吉が朝鮮出兵を行ったり、キリシタン追放、江戸幕府の鎖国と、急激に外国との係わりが変化していった時代です。さらにヨーロッパでは魔女狩りが盛んになり、異端審問のため、ユダヤ教徒がアジアなどに逃れる動きもあったようです。
そんな時代にイエズス会、スペイン、ポルトガルが日本人奴隷を禁止したこともあり、歴史のダークサイドである人身売買の奴隷に掛かる公的記録は乏しく断片的です。
主人が異端審問にかけられ証言者としての記録や、主人が亡くなった時の遺言で解放され、財産を受け継ぎ大金持ちになった奴隷の記録、暴動を起こし処刑された記録、また、ポルトガル人やスペイン人と結婚した記録などが残っているのです。
また、公に禁止された日本人奴隷が現場では、家事奴隷や、傭兵として有能で、欠かせない存在でいることにより、無くなることはなかった矛盾もありました。
日本人が生存していた記録は、マカオ、フィリピン、印度、スペイン、ポルトガル、メキシコ、ペルーなどにも及び、ほとんど全世界に散らばっていたのです。
奴隷は、さらわれたり、騙されたり、戦の捕虜だったり、親に売られたり、自分で自分を売って奴隷として国外へでたりと様々で、その運命も様々でした。
主人の後を継ぎ大金持ちになったり、傭兵として暴れまわったり、年老いて解放という名の解雇で物乞いに落ちたり、折檻で命を落としたりと、人の運命はわかりません。
奴隷にも年季奉公のような期限付きのものもあれば、終身奴隷の身分もあり、金を貯めてそれを払えば自由人になれたりと、様々だったようです。
日本の国内では、奴隷と言う言葉はつかわれませんが、年季奉公や遊郭の遊女なども、システムとしては奴隷とそん色なかったと言えるでしょう。
そんなことを考えながら読むと、もしかして、現代の日本でも、奴隷ではないけれど、奴隷のようなシステムにハマってしまっている人もいるのではないかと考えさせられました。

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『地下室の手記』ドストエフスキー(新潮文庫)

2024年11月27日 | 読書
地下室にこもった男がつづった物語を、読者が読まされる形式の小説となっています。
その男自体が主人公となるのですが「自尊心が低く、かつプライドが高い」困った性格をしていて、世の中の全員が敵だと思っているような人間です。
地上が生きているのが苦しくて、地下で本を読んで暮らしている設定なので、現在で言えば、引きこもりでしょう。こういう人間がロシアにも多くいるというのですから、昔から引きこもりというのはあったのです。
その男が、自分が主人公の物語を手記という形にしたためいるのですから、面白い話の訳がありません。前半の3割程度と、後半7割程度のボリュームで2つの話が載っていて、前半の話は、面白くもなんともない、この『地下室の手記』を真似てシロートが書いたらこうなるみたいな小説でした。後半は、プロの小説家の仕事で、小説はこう書けば、こんなネタでも小説として面白く読めるよ、というお手本のような出来です。
私は、令和元年の「京都アニメーション放火殺人事件」の犯人を思い浮かべてしまいました。彼とドストエフスキーの違いは、この作品の後半のような小説を書けなかったのでしょう。
解説によると、この後につづく『罪と罰』から『カラマーゾフの兄弟』までの5大長編へつづく転換点となった作品だそうです。つまならい人間の普遍的な性質を物語として面白く書く才能が開花した記念すべき作品となったということでしょうか。


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『イザベラ・バードの日本紀行』イザベラ・バード(講談社学術文庫) 

2024年11月23日 | 読書
イギリスの女性旅行家である著者が明治初期に日本を訪れ、単独で西洋人未踏の地である日本の奥地へ足を踏み入れます。
横浜→江戸→日光→南会津→会津坂下→津川→新潟→米沢→山形→秋田→青森→函館→室蘭→紋別の北日本の旅が前半3/4を占めており、これが圧巻でした。
特に峠越えをする地域の風土や、アイヌとの暮しなど、文献が乏しいド田舎の庶民の暮しの様子が歯に衣を着せぬ描写で書かれています。明治初期の日本の田舎(6~7月)では、男は、ほどんど素っ裸で暮していたことや、畳にはノミがたくさんいて、そのままでは眠られず携帯用折り畳みベットと蚊帳を持ち歩いていたことなども、予想以上に衛生状態が悪いことがわかりました。宿屋ではプライバシーが皆無で、障子に穴を開けて常時除かれていたことや野次馬が多く警官が来て追い払ってくれたことなども面白いです。
逆に、治安がよく、西洋人の女一人が旅をしていても、襲われたり騙されたりすることがないことや、祭りなどの大勢の人が集まる場でも、驚くほど警官の数が少ないことなどがあげられていました。
日本の近代化が急速に進んだのも治安の良さが大きく貢献しているのでしょう。
北海道ではアイヌとともに生活し、彼らの生活をよく観察して、記録に残しており、貴重な資料になっているはずです。
また、スケッチによる挿絵も精密で、写真よりわかりやすく感じました。
北海道の噴火湾から室蘭・紋別の絶景をほめたたえていたので、北海道に行ったら、よってみたい場所に加わりました。
後ろ1/4は、東京より神戸・大阪・京都・奈良・伊勢神宮などを巡っていますが、置く日本の記録より希少価値が低く感じます。それでも、10年くらい前までは攘夷だと刀を持って殺気だった侍が闊歩していた土地が、安全に旅をできる土地に変わったのには驚かされます。
当時の日本の財政状況や、政治のあり方などが総括的に書かれており、なりふり構わず西洋化に進んでいく様子が垣間見れました。

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