第104回芥川賞候補作。
この作家さんは若くして(35歳)亡くなっていますが、この作品は20歳過ぎくらいに書かれた作品です。
桜のつぼみが膨らみ始めたころから、葉桜になるまでの間を切り取って描写しています。
自分は誰なのか? というテーマ、今風に言えば自分探しが主軸となります。
20~25歳のころが一番人生で辛い時期(死亡原因の中で自殺の割合が多い)にあたりますし、その中で自分探しで、誰もが少しは悩むものでしょう。
そして、自分のように50歳を過ぎて、自分をよく理解しているようでいて、本当の自分とは何か理解していないと言う事実、理解していない状態に慣れただけという事実に気づかされました。
ピュアなテーマが重厚に描かれており、なぜ、芥川賞にならなかったのか調べてみたら、そのときは小川洋子が受賞されていました。相手が悪かったですね。
時と共に消えていくには惜しい作品ですので、機会があったら一読を。