第二次世界大戦の日本軍の軍医が主人公の短編15連発です。
『蠅の帝国 軍医たちの黙示録』の続巻となります。
古今東西、極寒のシベリアから、酷暑の東南アジアまで、広大な戦場で幾人もの軍医がさまざまな任務を帯び戦っていました。
あとがきによると、作者は子供の頃から戦記物のファンだったのですが、どの戦記物も一つの場所で個人が見た戦争を描いたものであり、戦争の全体像が見えにくいという点に気が付きました。戦争中はとなりの島でも、かなり様相が違っていたはずで、それを書いていくことで、戦争を俯瞰していこうという試みだったようです。
あとがきには、硫黄島(激戦の末守備隊全滅)ととなりの父島(米軍上陸せず、補給途絶え、飢えとの戦い)の例が取り上げられています。考えてみれば、アッツ島(玉砕)ととなりのキスカ島(全員脱出)も極端に違いますね。
『蠅の帝国』と『蛍の航跡』の2巻で30本の軍医の物語が読めますので、いろいろな戦場の様子を疑似体験することができます。
ちなみに『蛍の航跡』は日本医師会より第1回日本医療小説大賞を受賞しています。
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