親の敵(かたき)を追って、それを討ち取るのが敵討ち。
その苦難が尋常ではない。
当てもなく敵を求めた旅が始まります。
藩から抜け浪人の身となり、細々と食いつなぎながら、敵を求めて旅をしなければなりません。
1年や2年で敵に出会えるわけではなく、十数年かかって敵を討つ例もあります。
それどころか、出会ったときには二人とも老人になっていたり、金が尽き刀を売って町人になってしまったり、野垂れ死んだりという例もあるのです。
そのつらい旅の中、酒や女に溺れそうになる誘惑、恨みを晴らすより安らかな生活をした方が殺された親の願いに近いのではないかという葛藤、それに耐えながら、いつ出会えるか解らぬ敵を捜さなければなりません。
読んでいてつらくなる小説です。
敵討ちの恨みの恐ろしさと空しさから言えることは、例え親が殺されても、殺人者に公正な裁きを行える司法機関と、遺族が恨みを捨て安らかで幸せな生活ができる社会構造が必要なのだろうと思いました。
まあ、殺人が無くなることが一番なのでしょうが……