日々のことを徒然に

地域や仲間とのふれあいの中で何かを発信出来るよう学びます

1台のポンプ

2015年05月28日 | 回想


 退職して間もなく15年が過ぎる。諸事、艱難辛苦を共にしたことも多いが、在職中をひと口で言えば「いい時代に勤められた」と思っている。長く勤める、年功序列など今は嫌われたり排除される風潮になっているが、在職中はその仕組みの中で波風を乗り越えた。そんなことを思いながら、OB仲間との工場見学に参加した。 

 創業20周年記念に建築された体育館の玄関口にモニュメントが展示されている。外観は工場などの生産現場なら普通に見られるポンプで特別な姿には見えない。しかし、工場の歴史を示す貴重なポンプとなっている。工場は日本初の石油化学工業発祥の地で、1958(昭和33)年2月、エチレンプラント(1E)へ初めて原料のナフサを供給したポンプで、「日本の石油化学工業の黎明を告げる鬨(とき)の声ともいうべき機器」(ポンプの由来より)として13年間動き続け、1E停止後も大事にされている。

 工場ではナフサを分解しエチレンを生産していた。エチレンはプラスチックや化学繊維などの石油化学製品の基礎原料になる。ポリエチレンはエチレンから作られ、スーパーの買い物袋や各種の製品の外装など身近に接していて生活から切り離せない物となっている。食品を冷蔵庫に保存する時のラップフィルムもその基はエチレン。食品を除けば石油化学製品は数えきれないほど身の周りに見られる。

 最新の会社情報を聞きながら役目を終えたり世界に誇る装置など思い出しながら車で案内される。久々に工場独特のにおいを吸いこむ。社員でいえば定年間近になっても運転が続くプラントがあり、頭の下がる思いがする。「来年定年です」という後輩の親身な応接に感謝しながら、彼らの新入社員教育の一端を担当したことを懐かしく思い出す。
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