数年前、どこかに仕舞いこんだ古いノート、折にふれ探していたそれが見つかった。何の変哲もない26穴のファイル、厚手の濃い茶色の表紙が懐かしい。
開くと原子記号や化学反応式、物質の特性を表すグラフや結合の仕方、伝熱や蒸留などといった、化学プラントを運転するに必要な項目が目に飛び込んでくる。そしてそのひとつひとつがよみがえってくる。
好んで使っていた万年筆のインク、ブルーブラックの色は少し褪せた感じはするが、合いの手の朱の色鉛筆とのコンビネーションはそのままで、丁寧によく書き残したとものと、自分をほめてやりたい。
これは35年前、社内教育で受講した化学工学についての記録で、およそ150頁。15時からの就業前の1.5時間、希望する者が社内外の講師から講義を受けた。会社も力を入れたし期待もしたのか受講は超勤扱いだった。超勤も魅力だったがそれに勝る講座の内容だった。全講座を受講した。
講座は考えなが行うプラントオペレーションに役立った。この数年後に異動でプラント運転を離れたが、意欲的に学ぼうとした記念としてこの化工ノートは大切に残した。
しばらくぶりの旧友と会話するように頁を繰ってみる。よかったことだけが頁の間から話しかけてくる。いい職場だった。
(写真:講義を整理したノートの内容)