アルバム『透明な色』を20回くらい聴いて、印象に残った曲についてコメントする。
『僕がいる場所』。
NHK「乃木坂46 SHOW」でも披露されていた。
自分が死んだ後のことを想像し、残された恋人(妻)に語りかけている歌である。本当に不治の病にかかっているという解釈もできるし、そうではなくいつか訪れる日のことを想像しているだけとも取れる。
いずれにせよ、自分が死んでも前向きに生きてほしいという思いを歌っているのだ。設定としてユニークだが、昨秋公開されていた映画『ささらさや』『思いのこし』あたりから着想を得たのかもしれない。
1番では部屋の隅が「僕のいる場所」と歌っているのに、2番では赤ちゃんに生まれ変わって現れると歌っているのは一貫していない。でも、死を前にすると混乱、錯乱するものだろうから瑕疵とは考えない。
明るい曲調でサラリと悲しい未来を歌っていて、印象的な曲だ。
『あなたのために弾きたい』。
何回聴いても感動する。「乃木坂46 SHOW」での生演奏もよかった。
絶賛した過去記事はこちらから。(その1。その2。)
『他の星から』。
SF調の歌詞が印象に残る曲だ。知らぬ間に異星人に侵略されているような違和感を覚えながらも、深く考えるよりも身近な人間関係の方が大事。そういったノンポリ女子高生の刹那的な心象を歌っている。明るい曲調ゆえにかえって、漠然とした恐怖を感じた。
飯田橋、神楽坂、紀の善のあんみつ、三味線のお稽古といった具体的な日常の描写が効いている。「法律がどう変わってもいい」という部分、敢えて「憲法」としていない所が秋元康のバランス感覚と見た。
『世界で一番孤独なLover』。
ピーナッツさんの言うように小室哲哉のようなサウンドだ。あらゆる音が人工的で、歌唱部分も感情を一切入れず、歌詞を機械的に置いて行くような歌い方だ。
別れの場面を淡々と歌うことで悲しみを際立たせるという効果を上げている。
『雨のピアニスト』『強がり時計』『君の嘘を知っていた』といったハードな別れの曲とはまた違った味わいの曲だ。
『失いたくないから』。
Disk2で一番気に入った曲だ。夏の日の情景と心象を断片的に描いた歌詞は、いかようにでも解釈できる。この夏は現在なのか、遥か過ぎた日の回想か。君と僕の関係は、いつもの片思いか、それとも付き合っているのか、付き合っていたのか。全ての歌詞が曖昧で、それが良い意味で広がりとなっている。
冒頭の水道の蛇口は『何度目の青空か?』を連想させる。コンバースの紐を直すふりをするのは『抱きしめちゃいけない』を連想。急に夕立が来て制服姿の女生徒が濡れるのは『夕立の前』。体育館の向こうに虹が出るのは『君と虹と太陽と』。AKBグループの名曲のモチーフを多数引用しながら、青春のほろ苦い雰囲気を描出している。
一方、曲調は淡々と流れ、叙事詩を朗読するような風情だ。SKE48『水のないプール』『万華鏡』の雰囲気に少し似ている。キャッチーなメロディがある訳ではないが、何回聴いても飽きない曲だ。
『13日の金曜日』。
13日の金曜日というのは2人で観ている映画のタイトルであって、歌の舞台は土曜日だ。歌詞の最初に「土曜の夜は」とわざわざ断っている。しかし、映画の中のカップルと、映画を見ながらハラハラしている2人の状況をシンクロさせている歌詞で、今が13日の金曜日と歌っているような錯覚をさせる。これは計算づくだろう。「きゃあスクリーム」というくだりには、私は榊原郁恵『夏のお嬢さん』の「アイスクリーム、ユースクリーム」を思い出した。
『ダンケシェーン』。
この曲は以前から知っていた。確かに印象が強烈で、一度聴いたら忘れないサビだ。好きな曲かと言われれば、どちらかと言えば重苦しい感じがして敬遠したいような曲なのだが、なぜか無意識に口ずさんでいる。完全にマインドコントロールされている。
ドイツ語というのが乃木坂にぴったり嵌っているのだろう。
『なぞの落書き』。
歌い出しのソロが印象的だ。ピーナッツさんも書いているが、卒業式の後の気だるさを表現しているとも取れるし、とぼけたような子供っぽい歌声は耳に残る。生田以外の声は判別できなかったが、この子は例外だ。CDのクレジットによると、斎藤飛鳥、星野みなみ、堀未央奈のうち誰かだ。
それから、間奏のアコースティックギターが躍動している。間奏になるとワクワクする曲も滅多にないだろう。
『ひとりよがり』。
西野七瀬のソロ。夢を追いかけるために恋人と別れる歌で、恋人のために歌うことに幸福を見い出す生田絵梨花のソロ『あなたのために弾きたい』とは対照的な歌詞だ。その2曲をそれぞれDisk1、Disk2の最終曲とした構成も洒落ている。
淡々とした曲調から盛り上がっていく構成もドラマティックだ。西野の歌唱は、力強さに欠け、弱々しく聞こえ、物足りない。しかし、か弱い翼で大空に飛び立つ小鳥をイメージさせて、それもまたいいと思う人もいるのだろう。
シングル曲10曲についての私の感想はこちら。
『透明な色』へのピーナッツさんの感想はこちら。
Disk1
Disk2
kizudarakeさんの感想はこちら。
『僕がいる場所』。
NHK「乃木坂46 SHOW」でも披露されていた。
自分が死んだ後のことを想像し、残された恋人(妻)に語りかけている歌である。本当に不治の病にかかっているという解釈もできるし、そうではなくいつか訪れる日のことを想像しているだけとも取れる。
いずれにせよ、自分が死んでも前向きに生きてほしいという思いを歌っているのだ。設定としてユニークだが、昨秋公開されていた映画『ささらさや』『思いのこし』あたりから着想を得たのかもしれない。
1番では部屋の隅が「僕のいる場所」と歌っているのに、2番では赤ちゃんに生まれ変わって現れると歌っているのは一貫していない。でも、死を前にすると混乱、錯乱するものだろうから瑕疵とは考えない。
明るい曲調でサラリと悲しい未来を歌っていて、印象的な曲だ。
『あなたのために弾きたい』。
何回聴いても感動する。「乃木坂46 SHOW」での生演奏もよかった。
絶賛した過去記事はこちらから。(その1。その2。)
『他の星から』。
SF調の歌詞が印象に残る曲だ。知らぬ間に異星人に侵略されているような違和感を覚えながらも、深く考えるよりも身近な人間関係の方が大事。そういったノンポリ女子高生の刹那的な心象を歌っている。明るい曲調ゆえにかえって、漠然とした恐怖を感じた。
飯田橋、神楽坂、紀の善のあんみつ、三味線のお稽古といった具体的な日常の描写が効いている。「法律がどう変わってもいい」という部分、敢えて「憲法」としていない所が秋元康のバランス感覚と見た。
『世界で一番孤独なLover』。
ピーナッツさんの言うように小室哲哉のようなサウンドだ。あらゆる音が人工的で、歌唱部分も感情を一切入れず、歌詞を機械的に置いて行くような歌い方だ。
別れの場面を淡々と歌うことで悲しみを際立たせるという効果を上げている。
『雨のピアニスト』『強がり時計』『君の嘘を知っていた』といったハードな別れの曲とはまた違った味わいの曲だ。
『失いたくないから』。
Disk2で一番気に入った曲だ。夏の日の情景と心象を断片的に描いた歌詞は、いかようにでも解釈できる。この夏は現在なのか、遥か過ぎた日の回想か。君と僕の関係は、いつもの片思いか、それとも付き合っているのか、付き合っていたのか。全ての歌詞が曖昧で、それが良い意味で広がりとなっている。
冒頭の水道の蛇口は『何度目の青空か?』を連想させる。コンバースの紐を直すふりをするのは『抱きしめちゃいけない』を連想。急に夕立が来て制服姿の女生徒が濡れるのは『夕立の前』。体育館の向こうに虹が出るのは『君と虹と太陽と』。AKBグループの名曲のモチーフを多数引用しながら、青春のほろ苦い雰囲気を描出している。
一方、曲調は淡々と流れ、叙事詩を朗読するような風情だ。SKE48『水のないプール』『万華鏡』の雰囲気に少し似ている。キャッチーなメロディがある訳ではないが、何回聴いても飽きない曲だ。
『13日の金曜日』。
13日の金曜日というのは2人で観ている映画のタイトルであって、歌の舞台は土曜日だ。歌詞の最初に「土曜の夜は」とわざわざ断っている。しかし、映画の中のカップルと、映画を見ながらハラハラしている2人の状況をシンクロさせている歌詞で、今が13日の金曜日と歌っているような錯覚をさせる。これは計算づくだろう。「きゃあスクリーム」というくだりには、私は榊原郁恵『夏のお嬢さん』の「アイスクリーム、ユースクリーム」を思い出した。
『ダンケシェーン』。
この曲は以前から知っていた。確かに印象が強烈で、一度聴いたら忘れないサビだ。好きな曲かと言われれば、どちらかと言えば重苦しい感じがして敬遠したいような曲なのだが、なぜか無意識に口ずさんでいる。完全にマインドコントロールされている。
ドイツ語というのが乃木坂にぴったり嵌っているのだろう。
『なぞの落書き』。
歌い出しのソロが印象的だ。ピーナッツさんも書いているが、卒業式の後の気だるさを表現しているとも取れるし、とぼけたような子供っぽい歌声は耳に残る。生田以外の声は判別できなかったが、この子は例外だ。CDのクレジットによると、斎藤飛鳥、星野みなみ、堀未央奈のうち誰かだ。
それから、間奏のアコースティックギターが躍動している。間奏になるとワクワクする曲も滅多にないだろう。
『ひとりよがり』。
西野七瀬のソロ。夢を追いかけるために恋人と別れる歌で、恋人のために歌うことに幸福を見い出す生田絵梨花のソロ『あなたのために弾きたい』とは対照的な歌詞だ。その2曲をそれぞれDisk1、Disk2の最終曲とした構成も洒落ている。
淡々とした曲調から盛り上がっていく構成もドラマティックだ。西野の歌唱は、力強さに欠け、弱々しく聞こえ、物足りない。しかし、か弱い翼で大空に飛び立つ小鳥をイメージさせて、それもまたいいと思う人もいるのだろう。
シングル曲10曲についての私の感想はこちら。
『透明な色』へのピーナッツさんの感想はこちら。
Disk1
Disk2
kizudarakeさんの感想はこちら。