ナッキーさんの記事に触発されて、中山忍のアルバム3枚を聴き直してみた。
ポップなセカンドアルバム『虹のリトグラフ』、前衛的なサードアルバム『箱入り娘』もいいが、やはりファーストアルバム『決心』が最高傑作である。
内気で臆病な少女の、狭い日常と堂々巡りの心象を描いた曲ばかり10曲。シングル曲3曲を含む。アルバム全体を通して統一感があり、完成度が高い。
消極的で、自分からは告白できない。遠くから見つめているだけで、そんな自分をもどかしく思っている。そんな少女は、1988年当時でも珍しかった。あまりにステレオタイプで、時代錯誤感さえあった。いわば古典復興(ルネッサンス)。おニャン子旋風が全てをなぎ倒してしまった後の、アイドルの原点への復帰でもあったのだろう。
中山忍の歌唱が、また絶妙だった。
ナッキーさんが書いているように、声量が極端に小さい。ささやくような歌い方で、過剰なエコーがそれを補っている。更に発音が不明瞭で、歌詞がよく聞き取れない。「ときめき」が「どぎめき」に聞こえる。加えてリズム感もいまひとつで、曲に乗り切れていない箇所が随所に見られる。要するに技術的には粗だらけで、つまり下手だ。
それなのに感動する。下手なのに感動させるのは真のプロだ。
楽曲が彼女の歌唱を引き立てる素晴らしい出来だ。
正統的なアレンジが、彼女の声を1つの楽器として取り込んで、心地よい音楽として昇華させている。そのため、歌詞がよく聞き取れないことがむしろプラスに作用している。
一番好きな曲は9曲目の『恋はお伽噺じゃない』だ。
この曲の歌詞には、『小さな決心』『涙、止まれ』『負けないで、勇気』というシングル曲3曲のタイトルが織り込まれている。これはキャンディーズの『微笑返し』と同じ趣向だ。歌詞の最後に「明日の私が微笑(わら)う」と、『微笑返し』のタイトルまで織り込んでいる。
それから、紅茶を飲みながら過去を回想しているという状況は、岩崎宏美の『思秋期』を下敷きにしている。しかし曲調は『思秋期』と違ってアップテンポだ。
もう1つ。ナッキーさんから指摘があったが、「臆病だった自分が妹に思える」という歌詞の「妹」は、中山美穂の妹ということを暗示しているのだろう。
「恋はお伽噺じゃない」とは、ハッピーエンドが約束された恋などない、多くの恋は失恋で終わるという意味だろう。
『恋はお伽噺じゃないから』という、林寛子のシングル曲もある。
薬師丸ひろ子のアルバム曲には『おとぎばなし』(中島みゆき作詞、作曲)という曲がある。「おとぎばなしを聞かせてよ 恋はかなうと聞かせてよ」と、恋がかなうのはお伽噺だと歌っている。
ポップなセカンドアルバム『虹のリトグラフ』、前衛的なサードアルバム『箱入り娘』もいいが、やはりファーストアルバム『決心』が最高傑作である。
内気で臆病な少女の、狭い日常と堂々巡りの心象を描いた曲ばかり10曲。シングル曲3曲を含む。アルバム全体を通して統一感があり、完成度が高い。
消極的で、自分からは告白できない。遠くから見つめているだけで、そんな自分をもどかしく思っている。そんな少女は、1988年当時でも珍しかった。あまりにステレオタイプで、時代錯誤感さえあった。いわば古典復興(ルネッサンス)。おニャン子旋風が全てをなぎ倒してしまった後の、アイドルの原点への復帰でもあったのだろう。
中山忍の歌唱が、また絶妙だった。
ナッキーさんが書いているように、声量が極端に小さい。ささやくような歌い方で、過剰なエコーがそれを補っている。更に発音が不明瞭で、歌詞がよく聞き取れない。「ときめき」が「どぎめき」に聞こえる。加えてリズム感もいまひとつで、曲に乗り切れていない箇所が随所に見られる。要するに技術的には粗だらけで、つまり下手だ。
それなのに感動する。下手なのに感動させるのは真のプロだ。
楽曲が彼女の歌唱を引き立てる素晴らしい出来だ。
正統的なアレンジが、彼女の声を1つの楽器として取り込んで、心地よい音楽として昇華させている。そのため、歌詞がよく聞き取れないことがむしろプラスに作用している。
一番好きな曲は9曲目の『恋はお伽噺じゃない』だ。
この曲の歌詞には、『小さな決心』『涙、止まれ』『負けないで、勇気』というシングル曲3曲のタイトルが織り込まれている。これはキャンディーズの『微笑返し』と同じ趣向だ。歌詞の最後に「明日の私が微笑(わら)う」と、『微笑返し』のタイトルまで織り込んでいる。
それから、紅茶を飲みながら過去を回想しているという状況は、岩崎宏美の『思秋期』を下敷きにしている。しかし曲調は『思秋期』と違ってアップテンポだ。
もう1つ。ナッキーさんから指摘があったが、「臆病だった自分が妹に思える」という歌詞の「妹」は、中山美穂の妹ということを暗示しているのだろう。
「恋はお伽噺じゃない」とは、ハッピーエンドが約束された恋などない、多くの恋は失恋で終わるという意味だろう。
『恋はお伽噺じゃないから』という、林寛子のシングル曲もある。
薬師丸ひろ子のアルバム曲には『おとぎばなし』(中島みゆき作詞、作曲)という曲がある。「おとぎばなしを聞かせてよ 恋はかなうと聞かせてよ」と、恋がかなうのはお伽噺だと歌っている。