11月の終わりから先日24日までに、とても面白い3つの判決・決定があった。
それは、議会には
「お金などを返せと請求する権利を『放棄する』議決権」
というすごい権限(地方自治法96条1項10号)があるのだけれど、その効力に関するもの。
地方自治法96条
最近、この権利放棄の議決があちこちで出ている。
いま関連する裁判は次の3つ。
●(1) 神戸市の外郭人件費補助、
2億5千万円の返還命令が確定
最高裁 朝日 2009年12月11日
●(2) 神戸・公金返還訴訟:請求放棄条例は無効 「住民訴訟否定」
◇神戸市長に55億円命令
--大阪高裁判決 毎日新聞 2009年11月28日
●(3) 栃木・さくらの公金返還訴訟:請求放棄議決、無効 三権分立に反する--東京高裁判決
毎日新聞 2009年12月25日
興味ある人は、この3つの裁判所の判断を報道から読み比べれてほしい。
そもそも、普段からこんなことやってだめだぞ、と表明しておかないと何が起きるのか分からないのが議会。
↓【(3)の 東京高裁判決から】↓
地方自治法96条1項10号に基づく権利の放棄の可否は,議会の良識にゆだねられているものではあるが,裁判所が存在すると認定判断した損害賠償講求権について,これが存在しないとの立場から,裁判所の認定判断を覆し,あるいは裁判所においてそのような判断がなされるのを阻止するために権利放棄の決議をすることは,損害賠償請求権の存否ついて,裁判所の判断に対して,議会の判断を優先させようとするものであって,権利義務の存否について争いのある場合には,その判断を裁判所に委ねるものとしている三権分立の趣旨に反するものというべきであり,地方自治法も,そのような裁判所の認定判断を覆す目的のために権利放棄の議決が利用されることを予想・認容しているものと解することはできない。
したがって本件議決は,地方自治法により与えられた裁量権を逸脱又は濫用したものとして違法無効なものというべきであり,本件議決により秋元に対する損害賠償請求権は消滅するものではない。
人気ブログランキング→→ ←←ワン・クリック10点
10位、11位あたり
●「地方議会は有害」論 行政のムダ遣い擁護?
j-cast 2009/12/16 13:13
<テレビウォッチ>納税者である住民が自治体相手の納税訴訟に勝ったが、議会のとんでもない裏ワザで元の木阿弥になるケースが相次いでいる。
グーグル書籍データベース訴訟 日本では「和解参加」が大勢 : J-CAST ...
NHK未払い訴訟 費用かさみ「倒産」説 : J-CASTニュース
Google からクリッピング - 2009年12月26日
番組が「そんなのあり?」と取り上げた納税者無視の裏ワザとは??
大阪・大東市。住民が2年前、市の条例に定められていないにもかかわらず、非常勤職員に退職慰労金を支給したのは違反だと、損害賠償請求の訴訟を起こした。
1審の大阪地裁は、市側の違法性を認め市長ら4人に270万円の賠償を命じたが、市側は不服として控訴した。
ところが、2審の大阪高裁の判断が注目される最中の昨2008年12月、市議会が裏ワザとなるある条例を可決した。
それは『損害賠償請求権の放棄』。市が賠償する必要はないという『放棄』を議決したのだ。
これを受けて大阪高裁の2審は「放棄の議決により、損害賠償請求権は消滅した」と判断、住民側の敗訴となった。
原告側の住民代表は「議会は、数さえあればどんなことでも出来てしまう。極論すれば裁判所はなくてもいい」と悔しがる。
しかも、税金の無駄遣いを正す納税者訴訟をめぐる議会の『損害賠償請求権の放棄』は、この10年間で、他に埼玉・久喜市、兵庫・神戸市など8自治体でも起きている。
ただし、議会が議決した『損害賠償請求権の放棄』に「無効」を言い渡したケースもある。
神戸市が職員を派遣している外郭団体に、人件費として補助金を出したのは違法だとした納税者訴訟。神戸地裁は昨年4月、市長などに48億円の返還請求を行うよう命じた。
その後、市側は不服として控訴。今年2月には市議会が『請求権の放棄』を賛成多数で可決した。
しかし、11月2日に開かれた2審の大阪高裁では、こんどは「放棄の議決は、議決権の乱用に当たる」と「無効」を言い渡したのだ。
もとが違法だったのに、市側は「法律に基づいて合理的に放棄したのだから」と最高裁の上告している。
スタジオに生出演した地方制度調査会の副会長を務める慶大教授の片山善博(元鳥取県知事)は議会の横暴を次のように非難した。
「納税者訴訟は、議会に代わって税金の無駄づかいを正す納税者の法律上の権利。せっかく権利を行使し、取り戻そうとしたのに議会が無にしてしまう。本来、議会は住民の立場に立って行政を監視しなければならないのに、それもナシ。税金のムダ遣いをなくそうとしても消してしまう。これでは議会無用論どころか議会有害論になる。行政の監視役がお仲間、インサイド、グルですよグル」
活性化のための地方分権も結構だが、議会がこのていたらくでは分権実現のあかつきに何が起きる事やら……
/文 モンブラン
●補助金返還、住民側の勝訴確定 最高裁が神戸市の上告棄却
2009/12/10 19:18 【共同通信】
神戸市が三つの外郭団体に派遣した職員らの人件費に充てるため、補助金を支出したのは違法として、市民団体のメンバーが04、05年度分の計約2億5千万円を返還するよう求めた住民訴訟の上告審で、最高裁第1小法廷(金築誠志裁判長)は10日、市側の上告を退ける決定をした。
矢田立郎市長らに計約2億1800万円を返還させるよう市に命じた一審神戸地裁判決を変更し、請求通り計約2億5千万円を返還させるよう命じた二審大阪高裁判決が確定した。
三つの外郭団体は「こうべ市民福祉振興協会」「神戸市地域医療振興財団」「神戸市障害者スポーツ協会」。
●神戸市の外郭人件費補助、2億5千万円の返還命令が確定
朝日 2009年12月11日
・・・二審判決を受け、神戸市は今年2月、多額の賠償金を矢田市長らに背負わせるのを避けるため、矢田市長と外郭団体への返還請求権を放棄する条例改正案を市議会に提案し、賛成多数で可決された。
しかし、05~06年度に支出した別の補助金の違法性が問われた同様の住民訴訟では、大阪高裁が先月27日、返還請求権を放棄する議決について「議決権の乱用で無効」として、約55億円を矢田市長と外郭団体に請求するよう市に命じる判決を言い渡した。
神戸市は10日、この大阪高裁判決を不服として最高裁に上告した。この日の最高裁の決定については「内容を把握していないのでコメントできない」(財務課)としており、今後の対応については上告した訴訟の結果を見た上で判断する方針だ。
●「債権放棄」なお対立 神戸市の補助金返還確定
神戸 2009/12/11 10:43
神戸市の上告が棄却され、矢田立郎市長らに約2億5千万円を返還させるよう命じた二審大阪高裁判決が確定した補助金返還訴訟。市側は「非常に厳しい判断」と受け止めるが、上告後に議決された債権放棄については「判断が示されたとはいえない」と、それを「無効」とした別の補助金返還訴訟の控訴審判決(市が10日に上告)とは「異なる」とみる。一方で勝訴した原告住民側は「債権放棄が有効なら、棄却されないはず」と訴えている。
上告棄却の決定に、「決定書が届いていないので詳細が分からずコメントできない」と神戸市。ただ、「(市側の)上告理由はない」とした今回の最高裁の決定は、いわゆる“門前払い”で、ある職員は「最高裁は控訴審判決だけをみて判断した」とする。
つまり、控訴審判決後、市の債権放棄を認めた市会の議決は、考慮されていないと理解できるという。
これに対し、原告の市民団体「ミナト神戸を守る会」の東條健司代表は「事実上、議決は無効と判断されたに等しい」と指摘。「これを機に外郭団体の必要性を見直すべきだ」と話す。
補助金を返還させるのか、議決通り債権を放棄するのか。議決を無効とした同様訴訟の最高裁判断を待つのか。市の対応が注目される。
(藤原 学、田中陽一) |
●公金返還訴訟 神戸市が最高裁へ上告
神戸
神戸市が外郭団体に、派遣した職員の人件費として補助金を支出したのは違法として、大阪高裁が、矢田立郎市長と外郭団体などに対し、計55億円を市に返還するよう命じた判決を不服として、同市は10日、最高裁に上告する。
先月27日の判決で大谷正治裁判長は、控訴審の争点となっていた市側の債権放棄を「住民訴訟の制度を根底から否定するもので、有効とは言えない」と判断。「(条例改正案を可決した)議会は市長の違法行為を放置し、是正の機会を放棄したのに等しい。議決権の乱用に当たる」と非難した。(藤原 学)
●神戸・公金返還訴訟:請求放棄条例は無効 「住民訴訟否定」--大阪高裁判決
◇神戸市長に55億円命令
毎日新聞 2009年11月28日
神戸市が外郭団体に派遣した市職員の給与として補助金を支出したのは違法として、市民団体が市を相手取り、矢田立郎市長に約79億円を返還請求するよう求めた訴訟の控訴審で、大阪高裁(大谷正治裁判長)は27日、約45億円の返還請求を命じた1審・神戸地裁判決(08年4月)を変更し、約55億円の返還請求を命じた。また、1審判決後に市議会が制定した返還請求権放棄の条例については「議決権の乱用。住民訴訟制度を根底から否定するもの」とし、条例を無効とする初判断を示した。【日野行介】
訴えていたのは、市民団体「ミナト神戸を守る会」のメンバー。市が05~06年度、20の外郭団体に派遣した職員の給与分を含む補助金などを支出したのが地方公務員派遣法に違反するとして、全額の返還を求めていた。
判決は、派遣職員の給与支出について「市の職務に従事していない職員に給与を支給できないことは当然。補助金などから支払われることが予定されており、派遣法を逸脱する」と違法性を認定。補助金のうち約55億円を給与分と推認し、返還を求めるよう命じた。
控訴審で市長側は、1審判決が命じた返還請求権を放棄する条例(今年2月成立)を根拠に「請求権は消滅した」と請求棄却を求めた。この条例について、大谷裁判長は「請求権放棄には、公益上の必要性や合理的理由が必要」と指摘。その上で、「放棄する合理的理由はない。住民訴訟を無にしてしまうものだ」と結論付けた。
◇矢田立郎・神戸市長の話
極めて意外で驚いている。適法に行われた議会の議決を否定するもので、上告する方向で検討したい。
◇自治法改正で議決相次ぐ
住民訴訟で敗訴した自治体が、議会の賠償請求権放棄の議決を受けて敗訴確定を免れるケースは、全国各地で相次いでいる。
山梨県玉穂町(現・中央市)発注の工事を巡り、元町長が予定価格を漏らし町に損害を与えたとして、町を相手に元町長への賠償請求を求めた訴訟では、1審で住民側が勝訴した。しかし、町議会が賠償請求権放棄を議決。東京高裁は議決を有効と認め、住民側逆転敗訴とし、07年に最高裁で確定した。
土地区画整理組合に派遣された埼玉県久喜市職員への給与支払いを巡り、住民が市を相手取って市長らに返還させるよう求めた訴訟でも、住民側勝訴の1審判決後に市議会が請求権放棄を議決し、07年に住民側逆転敗訴が確定した。
栃木県氏家町(現・さくら市)の浄水場用地購入を巡る住民訴訟や、東京都檜原村の非常勤職員に対する賃金支出を巡る住民訴訟でも、住民側勝訴後に議会が請求権放棄を議決し、係争中だ。
こうした状況が生まれたきっかけは、02年9月の地方自治法改正だ。それまでの住民訴訟は、違法支出をしたとする首長らを直接訴えることができた。しかし法改正で、首長らに賠償請求するよう自治体を相手に提訴する制度に変わった。「首長ら個人が訴訟当事者になると、負担が大きすぎる」との自治体関係者の声を受けた改正だったが、当時から反対論が根強かった。
同法は議会の議決権限として「自治体の権利の放棄」を定め、これが請求権放棄の根拠になっている。しかし、住民訴訟を骨抜きにするような対応が各地で相次いだため、政府の地方制度調査会は今年6月、「住民訴訟制度の趣旨を損ないかねない」として、当時の麻生太郎首相に訴訟係争中の請求権放棄を制限する措置を講じるよう答申した。総務省は法改正などを検討中だ。
全国市民オンブズマン連絡会議幹事の高橋利明弁護士は「議会は自治体の執行部を監視する立場なのに、逆に不正を免除するようなことをしてきた。市民から委ねられた役割を放棄したに等しく、議決権乱用以外の何物でもない。住民訴訟の原告にとって歯ぎしりするような行為だったので、今回の判決は大歓迎だ」と話した。【北村和巳、伊藤一郎】 |
●栃木・さくらの公金返還訴訟:請求放棄議決、無効 三権分立に反する--東京高裁判決
毎日新聞 2009年12月25日
栃木県氏家町(現さくら市)が適正価格を大幅に超えて浄水場用地を購入したのは違法として、住民が合併後の市を相手に支出時の町長に1億2192万円を返還させるよう求めた住民訴訟の控訴審判決で、東京高裁は24日、元町長に全額支払いを請求するよう命じた1審判決を支持し市の控訴を棄却した。
市議会は控訴審結審後、元町長への賠償請求権を放棄する議決をしたが、房村精一裁判長は「三権分立の趣旨に反し裁量権を逸脱、乱用した。議決は違法で無効」と指摘した。市は25日にも上告する。
原告は同市の会社役員、桜井秀美さん(55)。桜井さんは、氏家町が04年に2億5000万円で購入した用地について、適正価格は7590万円と主張。08年12月の宇都宮地裁判決は訴えを認めた。市が控訴したが、結審直後の9月、市議会は元町長への賠償請求権を放棄する議案を可決。これを理由に市は請求棄却を求めていた。
高裁は1審同様「町の支出は違法」と元町長の賠償責任を認定。議決について「裁判所の認定判断を阻止するための議決で、裁判所の判断に対し、議会の判断を優先させようとするもの。地方自治法も、そうした議決は認容していない」と指摘した。請求権放棄で敗訴を免れようとする自治体の動きを巡っては、大阪高裁が11月、神戸市の支出を巡る住民訴訟で「住民訴訟制度を否定するもの」と議決を無効とする判断を示している。
代理人の米田軍平弁護士は「東京高裁では請求権放棄を認める判決が3件続いていたが、流れは変わる」と話した。【伊藤一郎】
◇人見健次・さくら市長の話
上告して最高裁の意見を聞きたい。
●請求権放棄の議決は無効=市に返還請求命令-浄水場用地費訴訟・東京高裁
2009/12/25-01:18
栃木県氏家町(現さくら市)が浄水場用地を不当に高額で購入して町に損害を与えたとして、住民が市を相手に、適正価格との差額を当時の町長に返還させるよう求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は24日、元町長への約1億2000万円の返還請求を命じた一審判決を支持し、市側の控訴を棄却した。一審判決後、元町長への請求権を放棄した議会の議決を違法と判断した。
同種訴訟では11月、大阪高裁が神戸市の条例改正を無効と判断している。
一審判決後の今年9月、合併後の市議会は元町長への損害賠償権を放棄することを議決。市側はこれを根拠に、請求を退けるよう求めていた。
房村精一裁判長は、市議会の議決について、「高裁で、土地購入価格が不当に高額と認定されることを阻止するために決議された」と認定。「議決権の乱用で、三権分立の趣旨に反する」と指摘した。
一審宇都宮地裁は昨年12月、住民側の請求を全面的に認め、差額の支払い請求を命じていた。
●賠償命令無にする地方議会、東京高裁が認めぬ判決
朝日2009年12月24日22時32分
住民訴訟で自治体の首長側が賠償を命じられても、議会が首長への請求を放棄してしまう「帳消し」が各地で相次いでいる問題で、東京高裁は24日、栃木県さくら市の公金支出訴訟の控訴審判決で、「帳消し」の市議会議決を無効とする判断を示した。房村精一裁判長は「議決権の乱用」と指摘し、議会の姿勢を「三権分立の趣旨に反する」と批判した。
自治体議会による「帳消し」をめぐっては、これまで一審で勝訴した住民側が議決によって逆転敗訴するケースが続いてきた。しかし、大阪高裁が11月、神戸市の補助金をめぐる訴訟で「議決権の乱用」とする判断を示したことから、この日の東京高裁の判決も注目されていた。
訴訟は、合併してさくら市になる前の旧氏家町が購入した浄水場の用地代が周辺価格と比べて高すぎるとして住民が起こした。2008年12月の宇都宮地裁判決は住民側の主張を認め、当時町長だった前市長に約1億2千万円を請求するよう市に命令。これを不服として市が控訴した。
市議会は、控訴審判決が言い渡される直前の今年9月、前市長への賠償請求権を「放棄する」と議決。この議決の是非が判決の焦点となった。
房村裁判長は一審と同様、前市長が用地を不当に高い価格で買収したことを認定した。そのうえで、市議会の議決について「高裁で(一審と)同様の認定がなされることを阻止するために決議された」と判断。「裁判所の判断より、議会の判断を優先させようとするもので三権分立の趣旨に反する」と述べた。
さらに、議会による請求権放棄が地方自治法で認められていることに触れ、「同法は裁判所の認定判断を覆す目的のために権利放棄の議決が利用されることを予想・認容していない」との法解釈を明示。議決は無効と結論づけ、市側の控訴を棄却した。(浦野直樹)
判決全文
|
| Trackback ( )
|
![](/images/clear.gif) |
|
|
|
|