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てらまち・ねっと



 市民運動でも、議員としても長く役所にかかわってきたからか、なお、実感する一つが「官製ワーキングプア」問題。非正規職員の労働者としての位置付けや待遇。
 以前、最高裁判例などを前提に議会で一般質問したら、市の答弁は「国が法改正などで示してくるだろうから、その時に・・」という主体性と責任感のないもの。

 (例/2016年2月25日ブログ ⇒ 質問1番 「市の職員給与の現状確認と格差の是正を」 答弁者市長  )

 昨年の12月に政府の有識者会議が、法改正し問題の解決をはかるような議論を示し、大きな期待が持たれた。
 しかし・・・

 昨日、日経が「改正地方公務員法、20年4月施行 非正規の待遇、改善に道」といかにも行政寄りの記事を出した。
 他方で、以前から「格差是正につながらない法改正」などの指摘があるから、状況を認識しないといけない。
 ということで、今日は同記事と以下を比較して並べておく。

●闘い取った判例に反する 地方公務員法改正/民主法律協会(民法協) 2017年07月15日 官製ワーキングプア研究会 川西 玲子

●非正規公務員の実態は? 欺瞞の地方公務員法・地方自治法改正 格差是正につながらず、国・地方自治体は使用者としての責務を果たせ/WEBRONZA - 朝日新聞社の言論サイ 2017年04月24日 上林陽治 地方自治総合研究所研究員

 なお、今日は「立冬」とか。今朝の気温は8度、快適に早朝ウォークしてきた。

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●≪改正地方公務員法、20年4月施行 非正規の待遇、改善に道≫
       日経 2017/11/6
▼ 地方公務員法と地方自治法が改正され、非正規職員を取り巻く環境は2020年4月に大きく変わる。
「会計年度任用職員」という身分を新たに創設。昨年4月時点で64万人いた非正規職員の多くがそちらに移る見通しだ。
正職員に比べて大きく見劣りする待遇が、改善する可能性が出てきた。

▼ 非正規の待遇は劣悪だ
総務省は今春までに「地方公務員の臨時・非常勤職員に関する実態調査」を実施。
そのデータを情報公開請求して入手したところ、最低賃金並みの例がいくつも見つかった。

一般事務職では、都道府県と政令指定都市でも時給700円台が9県市あった。長崎県の臨時職員のように、通勤交通費すら支払わないケースが珍しくない。
最低賃金以下だった茨城県美浦村は徴税担当で、実績に応じて「能率報酬」が支払われる。

◇非正規の位置づけはこれまであいまいだったが、5月の法改正で特別職は「助言、調査等を行う者」に限定される。
臨時職員も正職員の産休などで「欠員が生じた場合」だけとなる。
国は会計年度任用職員への移行を促し、フルタイムには期末手当や退職手当を支給できるようになる。

◇改正法は「支給できる」という規定ながら、総務省は「正規と非正規を同じ考え方で処遇していただく」(給与能率推進室)とする。

8月に国が作成して全国の自治体に配布したマニュアルには、フルタイムに通勤手当や期末手当、退職手当を「支給すること」。
パートタイムでも、通勤費用と期末手当は「支給すべき」と記される。
罰則規定はないが、改正法の付則で総務大臣に「勧告」する権限が与えられた。2000年の地方分権一括法施行後では異例の強い文言で待遇改善を迫る。

▼非正規を4000人以上抱える横浜市は対応を進める考えだが、
「任用方法や勤務条件を一から作り、条例や規則を整備し、システムを改修しなければならず、結構な作業だ」(人事課)とぼやく。

総務省はすでに全国20カ所以上で説明会を開いている。
自治体の関心は強く、10月に大阪府で開いた際は約100人が参加。事前に110の質問が出され、終了後も個別に質問を受けるなど4時間以上に及んだという。

▼現実問題として待遇改善には財源が必要だ。
正職員の給与は人事院や人事委員会勧告で決まり、民間準拠が建前。だが、比較対象となる民間は、給料が相対的に高い従業員50人以上の事業所に限られる。
条件を満たす事業所が一つもない市町村は14年時点で265あった。
地方では恵まれているとみられている正職員を少し引き下げ、非正規に回す選択肢があってもいい。
(日経グローカル副編集長 磯道真)=6日発行の同誌に詳報

●闘い取った判例に反する 地方公務員法改正
        民主法律協会(民法協) 2017年07月15日 官製ワーキングプア研究会 川西 玲子
1 地方公務員法改正で「会計年度任用職員」という身分を創設
地公法・地方自治法の改正は、全国 万人の臨時・非常勤の永年の悲願であった。法の谷間からの脱却、不安定な身分、均等待遇からの置き去りを改善させるためには法改正は必然であった。しかし残念ながら無残な結果となった。現行の臨時・非常勤を新たに創設した「会計年度任用職員」という身分に移行させるという。そもそも総務省が苦肉の策でひねり出した「会計年度任用職員」とはいかに実態とかい離している代物か。また公務非正規の「雇止め」と「手当支給」の貴重な判例の到達にいかに反しているのか今回の法改正を考えてみる。

2 「雇止め」――「中野区非常勤保育士事件」のような判決をさせないための改「正」
・・・(略)・・・

3 「手当支給」――枚方市・東村山市判決に明確に反する
・・・(略)・・・

4 身分移管を機に民間委託の推進 も
そもそも「会計年度任用職員」とは会計年度内で処理できる業務につく職員と考えるのが当たり前だが、その名前と実態は大きくかい離している。総務省調査(平成28年)で10年以上同一人を繰り返し任用しているのは保育士では41%、給食調理員では31%、消費生活相談員では32%の自治体があることがわかった。人材不足の折から、どこの自治体でも募集しても人が集まらないと頭を抱えている。総務省は臨時・非常勤の身分移管の際には、現に存在する職を漫然と存続させるのではなく、民間委託の推進など、簡素で効率的な行政を実現せよと要請している。

今回の法改正が働き方改革の公務員版と言われるように安上がりの非正規の活用とパブリック分野での企業の利潤追求が狙われていることは明らかだ。
法の施行は平成32年4月、これからは闘いの場は国会から自治体に移る。今年も第5回「なくそう! 官製ワーキングプア」大阪集会を9月23日(祝)にエル・おおさかで開催する(午前分科会・午後全体会)。民法協にも共催団体になっていただいており、大いに学び、交流し元気を蓄えて闘いに備える集会にしたい。たくさんのご参加をお待ちしています。

●非正規公務員の実態は? 欺瞞の地方公務員法・地方自治法改正 格差是正につながらず、国・地方自治体は使用者としての責務を果たせ
      WEBRONZA - 朝日新聞社の言論サイ 2017年04月24日 経済・雇用 私は非正規公務員 上林陽治 地方自治総合研究所研究員

 私は非正規公務員、ある自治体で働く臨時職員です。

 任期1年の有期雇用ですが、毎年更新して今年4月で5年目に入りました。しかし、勤めている自治体からは来年3月で辞めていただくといわれています。理由ははっきりしませんが、「そのようになっている」ということだそうです。

 1年任期といっても、丸々1年ではなく、期間は4月1日から翌年の3月30日までで、3月31日の1日だけ採用されていません。普段は健康保険加入なのですが、3月だけは国民健康保険に加入しています。先日、コンビニで保険料を支払いました。

 給料は、ここ数年で結構上がって今は時給850円になりましたが、昨年の源泉徴収票を見ると、年収170万円ほどでした。ボーナスはありませんし、通勤費もでません。フルタイム勤務で週5日働いていますし、子どももいますから、他の仕事を掛け持ちするわけにもいかず、勤務する自治体から頂く給料と児童扶養手当がすべての収入です。

1. 進展する官製ワーキングプア~とまらない非正規化、拡大する格差
(1) 非正規公務員は64万人、11年間で4割増
・・・(略)・・・
⑵ 広がる格差、官製ワーキングプアの進展
 逼迫する地方財政と小さな政府への指向性の下で、正規公務員の定数削減が推進され、非正規公務員へと置き換えられていった。
 置き換えが進むのには、それなりの理由がある。最大の理由はやはり賃金の相対的低さだろう。
・・・(略)・・・

2.格差是正につながらない欺瞞の法改正
 ところで政府・総務省は、2017年3月7日、地方公務員法と地方自治法の改正案を閣議決定した。今次通常国会での成立を目指し、3年後の2020年4月1日に施行する。

 法改正の目的は、地方自治体で働く非正規公務員の採用根拠を明確にし、勤務条件を確保するために期末手当(賞与)を支払えるようにすると喧伝されている。また、3月28日に政府の働き方改革実現会議が決定した「働き方改革実行計画/同一労働同一賃金の実効性を確保する法制度とガイドラインの整備」のなかでも、「(地方公務員の)非常勤職員制度を整備し、任用・服務の適正化と期末手当を支給可能とすることを一体的に進めるため所要の法改正を図」り、「各地方公共団体における適正な任用・勤務条件の確保を推進する」という文言を挿入した。

 地方公務員法改正案のポイントは、同じ事務職員でも「臨時職員」「特別職非常勤職員」「一般職非常勤職員」というように自治体ごとにばらばらで、制度の趣旨に合わない不適正な採用実態であったものを、「会計年度任用職員」という採用類型を新設し、これに統一するといものである。そして地方自治法改正案では、会計年度任用職員に期末手当を支払えるとした。
・・・(略)・・・だが、政府・総務省が用意した今回の地方公務員・地方自治法改正案は、「同一労働同一賃金」原則から大きく逸脱した、政府方針に反したものとなってしまっている。したがって、この法改正で住民に最も身近な市区町村で働く職員の3人に1人、総務省調査で64万人にまでに至った非正規公務員の処遇が改善すると考えるのは早計である。

 それは、今回の法改正が欺瞞だからである。
(1) 判例法理から逸脱する常勤・非常勤の区分
 今回の法改正では、地方公務員法に22条の2を新設し、フルタイムとパートの2種類の会計年度任用職員を位置づけるとしている。問題は、フルタイムとパートで処遇に関する規定が異なる点である。「1週間あたりの通常の勤務時間に比し短い時間であるもの」=パートタイム会計年度任用職員には、地方自治法で、従前通りの生活保障的な要素を含まない報酬と費用弁償に加えて期末手当を支払うとしたのに対し、「一週間当たりの通常の勤務時間と同一の時間であるもの」=フルタイム会計年度任用職員には、これも従前通り、地方自治法で、生活給としての給料と、扶養手当や退職手当等の手当を支払うとしている。

 しかし、パートとフルタイムで処遇を違えるという考え方は、法改正に先立ち総務省に設置されていた有識者研究会が昨年12月にまとめた報告にはなく、「常勤職員と同様に給料及び手当の支給対象とするよう給付体系を見直すことについて、立法的な対応を検討すべき」とのみ記されていた(図表6参照)。この報告書を受けて今年1月に与党や地方団体等の協議に付された地方自治法等改正案原案でも、「会計年度任用職員など労働者性が高い一般職の非常勤職員について、常勤職員と同じく、給料・手当の支給対象とする」としていた(図表7参照)。

フルタイムとパートで処遇を違える
 ところが国会に上程された成案は、原案を大きく変更して、フルタイムには給料と期末・勤勉手当を含む諸手当を支払い、パートには報酬と費用弁償を支払い、期末手当を支払うことができるとしたのである。

 すなわち、勤務時間を唯一の要件として処遇を違えたのである。
・・・(略)・・・
 成案では、判例上、「常勤の職員」と認められてきたパートの非正規公務員から、将来においても退職手当をはじめとするさまざまな手当が支給される権利を奪うことになる。

 なぜ、成案は、報告書や原案から逸脱していったのか。
 第1に、地方団体から、「手当支給による財政負担の増加が見込まれる中、議会等の理解が得られるためには、国レベルで支給されている手当に限定すべき」という意見が寄せられたからである。
 第2に、パートの会計年度任用職員に支給される賃金を、給料と手当ではなく報酬と費用弁償のままとしたのは、これまで通り非正規公務員への賃金を、人件費ではなく消耗品代である物件費に計上し、給与関係経費を見かけ上、低く見せるためである。

 すなわち正規公務員と同様に、住民福祉の向上のための公共サービスを担う労働者性ある非正規公務員の処遇を改善する必要性は顧みられることなく、これまで非正規公務員をワーキングプアの賃金水準で使ってきた地方自治体の使用者の意向を優先し、人件費を見かけ上も抑制するという、他事事項を考慮したものだったのである。

(2)格差是正につながらない法改正
・・・(略)・・・
 しかしながら国会に上程された地方公務員法・地方自治法改正案は、政府方針の一環をなす上記ガイドラインからも逸脱している。なぜなら、勤務時間が短いという要件のみに基づいて、期末手当以外の諸手当を支払えないものとしたからである。

 民間労働者の正規・非正規間格差は、非正規の賃金水準は正規の6割程度と言われる。これに対し、地方公務員の正規・非正規間格差は、先に記したように、一般事務職員の場合、正規公務員の4分の1の水準に過ぎない。このような絶望的な格差は、期末手当の支給を3年後に認めるというだけでは是正できない。

(3)事業主たる地方自治体に処遇改善の義務付けなし
 最大の問題は、事業主たる地方自治体に、非正規公務員の処遇改善を義務付けていない点である。

 民間労働者に関しては、「同一労働同一賃金」の実現に向け、正規と非正規の労働者間に待遇差を設ける場合、企業の説明義務を法律で明記する方針を政府は固め
・・・(略)・・・
 現行の非正規公務員の勤務条件の改善のための法環境は、民間に比べて、2周回も遅れている(1周遅れは非正規国家公務員)。もしかしたらスタートラインにも立てていない。

3 欺瞞を生んだ絶望的な格差
 無期雇用の正規公務員と同一の職務に就いていたとしても、会計年度職員のような有期職員が就く仕事は「非常勤の職」「臨時の職」だとして、その処遇に格差があることを許容し、あるいは、常勤か非常勤かという勤務時間の長短だけに依拠して、支払う給与の種類を違えることは、明らかに「同一労働同一賃金の原則」に反する取り扱いだ。これでは、地方公務員の正規・非正規格差は解消しないどころか、固定化しかねない。

 なぜ、こんなことになってしまったのか。・・・(略)・・・
 地方公務員における正規・非正規格差は、「同一労働同一賃金」政策実現の道筋の障害物になっている。だから格差状況は隠蔽され、官製ワーキングプアが放置されてきた。また、国・地方自治体の使用者は、民間事業者であれば当然の雇用上の改善義務も免れている。それは、公務員の勤務関係の法的性質は民間の労働法制とは別体系の公法上のものであり、雇う者と雇われる者との関係は労使対等の雇用契約ではなく、使用者の意思が優先する任用行為によるものと考えられているからである。だから、国・地方自治体の使用者は、非正規公務員を長期にわたって雇用しても無期転換させる義務はなく、勤務条件を改善すべき責任も生じない。

 今日、正規公務員の賃金水準の4分の1から3分の1というワーキングプアレベルの非正規公務員が、地方自治体で働く職員の3人に1人という状況までに悪化した。少なくとも、労働契約法やパート労働法に準じ、非正規公務員の使用者たる責務を果たさせることが、国・地方自治体に求められている。

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