●財政規律欠く補正予算のバラマキ避けよ 日経 2017/11/10
会計検査院が2016年度決算の検査報告をまとめた。税金の使い方などに問題があると指摘したのは計423件、金額では874億円あまりにのぼった。
先進国でもっとも財政状態の悪い日本では一銭たりとも予算の無駄遣いは許されない。それなのに不適切な支出が後を絶たないのはどういうことか。各省庁に猛省と再発防止を求める。
たとえば、厚生労働省による海外の戦没者の遺骨収集事業では、領収書が水増しされて一部の使途が不明だったほか、虚偽の内容の領収書を作っていた。
原子力発電所事故の復旧作業にあたった警察、消防などの計10万人程度の職員から健康診断のデータを集める事業では、たった645人分の情報しか集められず、その後も事業を見直さなかった。
今回の検査報告は、国の財政健全化を妨げる構造的な問題の一端にも、光を当てている。
いくら当初予算で歳出や新規国債発行額の上限を定めても、予算成立後の年度途中で補正予算が編成される。その結果、当初予算で求められる財政指標がどれだけかけ離れるか、補正予算の編成過程で示されていない――。会計検査院はこう指摘した。
その通りだが、補正予算によって当初予算が「骨抜き」にされ財政の悪化を重ねてきたのは、周知の事実でもある。
会計検査院が追及すべきは、不要不急の補正予算の編成を繰り返してきた政府・与党である。その問題と改善策に、もっと踏み込むべきだった。検査報告は不十分な内容といわざるを得ない。
17年度についても、安倍晋三首相はすでに補正予算案の編成を指示した。財政規律を欠いた安易なバラマキは許されない。
待機児童対策を進めるための保育所の建設費や、九州北部の豪雨災害の対策費用など、補正が必要な予算はあるだろう。
問題は、景気が底堅く財政で下支えする必要がないのに、従来型の公共事業が大盤振る舞いされる可能性が強まっていることだ。日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)対策という名目の農業予算の膨張も、心配だ。
これにともなって新規国債発行額を増やせば、国と地方の基礎的財政収支を黒字にする目標を堅持する、といった首相の言葉が疑われる。補正予算は必要最小限の内容に絞り込まねばならない。
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