●2018年3月1日 「地方版総合戦略の策定に関するアンケート」の結果
(公財)地方自治総合研究所 自治体行政計画研究会
【目的】 当研究会の問題意識の一つに、「近年、法律等に基づいて市町村に要請される行政計画の数が増え、自治体への負担が著しく増加しているのではないか」があります。
このことを考えていく前段として、2014 年末から 2015 年度にかけて、全国の市町村に策定が要請された地方版総合戦略を事例にとり、計画策定過程がどのようなものであったか、またこのことを担当職員がどのように受け止めていたかについてアンケートを実施しました。
【実施方法】2017 年 11 月 10 日に全ての市町村の地方版総合戦略担当者に郵送でアンケート用紙を配布。
●地方創生政策が浮き彫りにした国-地方関係の現状と課題
-自治総研通巻474号 2018年4月号-
―「地方版総合戦略」の策定に関する 市町村悉皆アンケート調査の結果をふまえて ―坂 本 誠
・・・(略)・・・
4. まとめ~調査結果から得られる示唆
第1に、総合戦略の策定に際して外部委託が広範になされたこととその実態が把握できた。
皮肉なのは、外部委託した市町村よりも外部委託をしなかった市町村の方が策定した総合戦略の内容について肯定的な評価をしていることである。・・・(略)・・・計画策定におけるコンサルタントの役割や外部委託のあり方については見直す必要があるのではないだろうか。
また、東京都に本社を置く業者が受注件数・受注金額ともに過半数を獲得しており、結果として、総合戦略策定費相当分として予算措置された額の多くが東京都に「一極集中」する格好となった。
・・・(略)・・・、ソフト事業は、出版・デザイン・コンサルタント・IT関係などソフト事業ならではの専門性に対応できる人材や企業が都市部に偏在しているため、特に農村部においては事業投資が地域内で循環しづらい側面がある。「ハードからソフトへ」の方向性はよしとしても、それが地域内の経済循環に及ぼす影響を考慮しながら対応策を検討する必要があるのではないか。
第2に、策定過程における都道府県の関わりについては、都道府県ごとに対応の違いが見られた。
第3に、市町村担当者は、地方創生政策の成果については概ね肯定的に受け止めているものの、それに伴う事務量については強い負担感を抱いていることが確認された。また、自由記入欄には、交付金の硬直的な運用など国のトップダウン的な姿勢に対する批判や、そもそも人口減少対策は本来的に国の役割ではないかとの疑問が寄せられた。
市町村の要望が国に届きやすくなっている一方で、国からの統制(制約)が強まっているとの認識が市町村に広がっていることが明らかとなった。特に後者に関しては、小規模かつ自主財源の乏しい市町村において、国からの統制(制約)が強くなっていると感じている傾向が確認された。地方分権改革が進む一方で、多くの市町村がそれとは異なるベクトルを感じているという現実を重く受け止める必要がある。
「権限」「財源」「人間」の「三ゲン」が地方分権の三要素と言われて久しいが、地方分権改革の結果として国から地方に移されたのは「事務」とそれを遂行する「責任」ばかりで、「権限」を裏付ける「財源」の移譲は進まずむしろ切り詰められ、結果として将来的な見通しの立たないままでの財政運営を強いられている。そして「人間」(職員)はといえば、人員数の削減が進められたうえに、残された人間も厳しさを増す職場環境に痩せ細っているのが現状ではないか。
ある意味で、地方創生政策はそうした現状を象徴しているとも言える。
・・・(略)・・・
そしてもっと根本的に言えば、本調査が明らかにした地方創生政策の市町村における実相およびそれとともに浮き彫りになった地方自治の最前線の現場に漂うある種の閉塞感は、地方分権とは何だったのか、どうあるべきなのか ―国と地方が対等な立場で(たとえば国と地方の協議の場などを通じて)従来の地方分権改革の検証と今後の対応方針を議論していく時期にあることを指し示しているのではないだろうか。
(さかもと まこと 公益財団法人地方自治総合研究所客員研究員) |