tetujin's blog

映画の「ネタバレの場合があります。健康のため、読み過ぎにご注意ください。」

大晦日のトラウマ

2020-01-06 23:12:35 | プチ放浪 都会編

今年の干支、庚子(かのえ・ネズミ)じゃなくてトラウマ。
ソウル経由のエチオピア・アディスアベバへ14時間のフライト。そこからコトヌー(Cotonou)へ約3時間。合計17時間の往復フライト。
アフリカの旅は、フライト時間の長さもさることながら、「奴隷貿易」と呼ばれる人身売買が公然と行われていたその残虐さに心が打ち砕かれた旅だった。

黒人奴隷が英植民地に初めて連れてこられてから400年。最終的にイギリス領植民地の幾つかは、アフリカ人の枯渇から奴隷貿易を廃止せざるを得なかった。ラテンアメリカやアメリカ合衆国カリブ海域、インド洋諸島や中東そしてインドでも、アフリカ系の人は奴隷だったのだ。

奴隷海岸へと続く長い道のり。要塞/商館/収容所兼用の狭い拠点に収容し船を待った。400年間に1240万人のアフリカ人を運んだ奴隷船。1人分のスペースが、80センチ×18センチ。棺桶みたいな空間に閉じこめられ、3ヶ月から9ヶ月も航海させられた。しかも、航海中の死亡率は8~34パーセントという。
収容所をいくつか廻って、思考が停止した。想像を絶するものだった。体中の筋肉がこわばり続け、胃がムカムカした。何も考えられなくなった。

アフリカの人たちは、奴隷貿易の話をしたがらない。自分たちの祖先が、人間として扱われなかった、悲惨な境遇にあったという屈辱の歴史だからだ。
だからこそ、なんで彼らは闘わなかったのだろうと旅の途中では考え続けていた。それがむごいマインドコントロールの結果であったにせよだ。
・・・周りを回ることで過去のすべての記憶を忘れることができる。そして帰らずの門。どんな気持ちで彼らは渡っていったのだろう。

今、旅を終えて思うのは、人はなんであんなに残酷になれるのだろうということ。自分に似たような「生物」であればあるほど、人は恐れからくる「憎しみ」の感情を抱くものなのだろうか。

要塞/商館/収容所兼用の狭い拠点にあったキリスト教の教会は、今は使われていない。祈りを捧ぐ十字架があればと思うがそれもない。訪れた人々の心を救済するすべはないのだ。アフリカの人たちがそれを許さないのかもしれない。

せめてもの救いは、アフリカ系アメリカ人がかつての奴隷たちの収容所に訪れた際に、たわむけに花を贈ってたこと。アフリカには花を贈る習慣がなく、現地のショップでは花は売られていない。アメリカを発つ際に用意したものなのだろう。

旅の間、一人でこの悲劇・かつての残虐さに打ちひしがれていたのだが、別のツアーで訪れていた女性から、「奴隷たちが収監されていた部屋に入って頭が痛くなった」とのLINEが来た。彼女と心の苦しさを共有することで、少しは救われた気がした。昨年の大晦日だった。


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