司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

株式会社の定款認証手数料,12月から最低1万5000円に引下げ

2024-11-20 00:25:43 | 会社法(改正商法等)
日経記事
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA190XE0Z11C24A1000000/

「政府は19日、株式会社の設立に必要な公証人による定款認証の最低手数料を1万5000円に引き下げる政令を閣議決定した。」(上掲記事)

 なんだかなの感。

「財務基盤の弱いスタートアップの負担を減らし新規参入をしやすくする。」(上掲記事)

 公証人の手数料を「負担」に感じることは稀で,むしろ負担を感ずるのは,設立登記の登録免許税(最低15万円)の方であろう。

cf. 令和6年9月3日付け「公証人手数料令の一部を改正する政令案」

〇 改正の内容
 定款認証手数料について,定款に記載され,若しくは記録された資本金の額が100万円未満である場合において,①発起人が自然人で,かつ,3人以内であり,②発起人が設立時発行株式の全部を引き受け,③取締役会を設置していない定款であるときは,1万5000円(現行 3万円)に改める。

〇 施行期日
 令和6年12月1日
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神社境内地等に極度額16億円の根抵当権が設定

2024-11-19 23:53:57 | 法人制度
神戸新聞記事
https://www.kobe-np.co.jp/news/society/202411/0018359102.shtml

「登記簿などによると、国の重要文化財に指定されている本殿の他、拝殿やトイレなど神社内の全ての建物が登記されており、土地を担保に繰り返し融資を受けられる根抵当権が2023年9月以降に設定された。今年2月に急死した当時の宮司が借金の担保にしたとみられるが、神社関係者はいずれも知らされておらず、契約書も残されていなかったという。」(上掲記事)

 神社関係者はいずれも知らされておらず・・・・・いかにも不自然であるし,根抵当権の設定については,おそらく宗教法人法第24条本文に違反して,無効であると思われる。


宗教法人法
 (事務の決定)
第19条 規則に別段の定がなければ、宗教法人の事務は、責任役員の定数の過半数で決し、その責任役員の議決権は、各々平等とする。

 (財産処分等の公告)
第23条 宗教法人(宗教団体を包括する宗教法人を除く。)は、左に掲げる行為をしようとするときは、規則で定めるところ(規則に別段の定がないときは、第十九条の規定)による外、その行為の少くとも一月前に、信者その他の利害関係人に対し、その行為の要旨を示してその旨を公告しなければならない。但し、第三号から第五号までに掲げる行為が緊急の必要に基くものであり、又は軽微のものである場合及び第五号に掲げる行為が一時の期間に係るものである場合は、この限りでない。
 一 不動産又は財産目録に掲げる宝物を処分し、又は担保に供すること。
 二 借入(当該会計年度内の収入で償還する一時の借入を除く。)又は保証をすること。
 三 主要な境内建物の新築、改築、増築、移築、除却又は著しい模様替をすること。
 四 境内地の著しい模様替をすること。
 五 主要な境内建物の用途若しくは境内地の用途を変更し、又はこれらを当該宗教法人の第二条に規定する目的以外の目的のために供すること。

 (行為の無効)
第24条 宗教法人の境内建物若しくは境内地である不動産又は財産目録に掲げる宝物について、前条の規定に違反してした行為は、無効とする。但し、善意の相手方又は第三者に対しては、その無効をもつて対抗することができない。
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法務大臣初登庁後記者会見の概要「選択的夫婦別氏制度及び同性婚に関する質疑について」

2024-11-15 14:46:06 | 民法改正
鈴木法務大臣初登庁後記者会見の概要(令和6年11月12日(火))
https://www.moj.go.jp/hisho/kouhou/hisho08_00558.html

〇 選択的夫婦別氏制度及び同性婚に関する質疑について
【記者】
 選択的夫婦別姓制度と同性婚についてお尋ねします。
 選択的夫婦別姓制度の導入を望む意見は国民の間に一定数あり、今年は財界からも早期実現を求める提言がなされ、さらに国連の女性差別撤廃委員会からも導入するよう勧告があったばかりです。また、大臣は、以前、報道機関のアンケートに制度導入に関して賛成と回答されたと認識しております。現在の個人としての賛否と、法務大臣として制度導入に対するお考えを教えてください。
 また、同性婚についても、これを認めない現行法を違憲とする司法判断がいくつか出されております。さらに大臣は、同じように報道機関のアンケートで、この法制化に賛成と回答されていたように思います。同性婚についての個人のスタンス、そして大臣として、法改正に対するお考えを教えてください。

【大臣】
 今、選択的夫婦別氏の話、そして同性婚についてということで御質問いただきました。
 私個人としてどう考えるか、これは法務大臣としてという会見ですので、個人としてということは、この場にてお答えするのは差し控えさせていただきたいと思います。その点は御理解いただきたいと思います。
 その上で、法務大臣としてということですけれども、夫婦の氏をどうしていくのか、この問題については、まさに御指摘のように国民の間でも様々な意見、議論というものがあります。そういった中で、様々な動きも最近出てきています。国民各層の意見、あるいは国会の議論もあろうかと思いますので、こういった国会における議論等を踏まえてその対応を検討していくことが必要ではないかと思っています。そういったことで言えば、国民の間に加えて、やはり国民の代表ということですので、国会議員の間でしっかりと議論をいただいて、より広く、この理解が進んでいくことがまずは大事だと思いますし、その上で、法務省としても積極的に色々な情報提供を引き続き行っていきたいと考えています。
 同性婚の導入につきまして、やはりこれも我が国の家族の在り方の根幹に関わる問題でもあります。国民的なコンセンサスの意味では、進めるのであれば、得ていかなくてはいけないと思います。そういった中で同じような答えで恐縮ですけれど、やはり国民各層の意見や、国会における議論の状況、それに加えて同性婚に関する訴訟の動向や、あるいは地方自治体でのパートナーシップ制度の導入や運用の状況というものについても、注視していきたいと考えています。
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弁護士が知っておくべき商業登記実務

2024-11-14 10:00:16 | 会社法(改正商法等)
 昨日(11月13日)は,異業種の勉強会で,「弁護士が知っておくべき商業登記実務」についてお話。最近の改正論点(申請書等の閲覧に関する改正や代表者住所の非表示措置)について等々。

 先日の岐阜での「税理士のための会社法再入門」に続き他士業向けです。
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ペーパーカンパニーを設立して開設した法人口座が,特殊詐欺グループによる詐取金の振込先として使われていた

2024-11-14 09:39:26 | 会社法(改正商法等)
京都新聞記事
https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/1370399

https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/1370765

「「ちょっとした小遣い稼ぎをしないか」のうたい文句で、知人を通じて、法人の代表者の名義人となる協力者を募集した。名義を貸すと、報酬は約5万円。複数の法人分の名義を貸す人もいた。3人は協力者から実印や印鑑証明書、身分証を預かり、申請書を作成したという・・・・・「生活困窮者や犯罪歴のある人を狙い、名義を貸してくれる人を『闇バイト』のような形で募っていた」・・・・・3人はこうした手口でペーパー会社を登記し、ネット銀行で法人口座を開設。男性は「口座は中国人やベトナム人のグループに売られ、特殊詐欺などの犯罪収益が振り込まれていたようだ」とも証言した。」(上掲記事)

 3人は,司法書士法違反容疑で逮捕されている。

 こういう事件があると,会社名義の口座開設がまた厳しくなるな。ネット銀行,ゆる過ぎるのでは?
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「外縁(事実上の離婚)の実務」

2024-11-13 11:36:41 | 家事事件(成年後見等)
中込一洋「外縁(事実上の離婚)の実務」(弘文堂)
https://www.koubundou.co.jp/book/b10088717.html

「「外縁」とは、法律上の婚姻をした夫婦の共同生活が実質的に破綻しているものの法律上は離婚していない状態をさします。」(上掲HP)

という切り口から,破綻している夫婦間の法律問題を論じたもので,レファレンスとして有益であると思われる。
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被相続人の兄弟姉妹(養子)が相続人となるべき場合において,当該兄弟姉妹(養子)の養子縁組前の連れ子は,被相続人の傍系卑属であっても代襲相続をすることはできない(最高裁判決)

2024-11-12 17:17:13 | 民法改正
最高裁令和6年11月12日第3小法廷判決
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=93490

【判示事項】
 被相続人とその兄弟姉妹の共通する親の直系卑属でない者は被相続人の兄弟姉妹を代襲して相続人となることができない

「民法887条2項ただし書は、被相続人の子が相続開始以前に死亡した場合等について、被相続人の子の子のうち被相続人の直系卑属でない者は被相続人の子を代襲して相続人となることができない旨を規定している。これは、被相続人の子が被相続人の養子である場合、養子縁組前から当該子の子である者(いわゆる養子縁組前の養子の子)は、被相続人との間に当該養子縁組による血族関係を生じないこと(民法727条、大審院昭和6年(オ)第2939号同7年5月11日判決・民集11巻11号1062頁参照)から、養子を代襲して相続人となることができないことを明らかにしたものである。そうすると、民法889条2項において準用する同法887条2項ただし書も、被相続人の兄弟姉妹が被相続人の親の養子である場合に、被相続人との間に養子縁組による血族関係を生ずることのない養子縁組前の養子の子(この場合の養子縁組前の養子の子は、被相続人とその兄弟姉妹の共通する親の直系卑属でない者に当たる。)は、養子を代襲して相続人となることができない旨を定めたものと解される。」

 真っ当な判断である。

 日経の記事がわかりやすい。

cf. 日経記事
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE0634Q0W4A101C2000000/


令和6年9月15日付け「被相続人の兄弟姉妹(養子)が相続人となるべき場合において,当該兄弟姉妹(養子)の子が代襲相続人となることにつき,養子縁組前の連れ子も,被相続人の傍系卑属であれば代襲相続をすることができる?」
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船井電機の代表取締役会長は,さて?

2024-11-11 19:45:05 | 会社法(改正商法等)
日経記事
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF119B20R11C24A1000000/

「10月初旬までに代表取締役会長に就任した元環境相の原田義昭氏は・・・・・会長に就いた経緯については「8月末だったか『船井』の役員が来て、『側面から応援してください』というので、顧問か顧問弁護士になるのかと思った。本社の役員会であいさつしたあとで、代表権をもつ会長になったと知らされた」と説明した。」(上掲記事)

 株主総会で取締役に選任され,取締役会で代表取締役に選定され,各々就任承諾をしているはずであるが,自覚がないとは・・・。

 ところで,上記について,未だ登記されていないようであるが・・・(破産の登記等は,10月29日にされている。)。

 ちなみに,従来の船井電機株式会社は,現在は,「FUNAI GROUP株式会社」(本店 東京都千代田区)であり,破産手続開始決定を受けたのは,令和5年2月21日に設立され,同年3月31日に吸収分割により「旧船井電機」から事業を承継したのと同時の商号変更により「船井電機株式会社」(本店 大阪府大東市)となったものである。
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株式会社の最低資本金規制異聞

2024-11-11 11:16:48 | 会社法(改正商法等)
日経記事(有料会員限定)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF165R30W4A011C2000000/

 昨日(11月10日)の朝刊「私の履歴書」であるが・・・。

「設立に最低必要な資本金200万円を母から借りて銀行に預け、預かり証明書を持って設立登記を済ませた。その1週間後には全額を銀行から引き出して母に返済した。創業時の資金は正真正銘ゼロからの出発となった。」(上掲記事)

 昭和50年8月のお話。株式会社に最低資本金規制が導入されたのは,平成2年改正商法(平成3年4月1日施行)による。当時,「額面株式の金額は500円を下ることを得ず」(昭和25年改正後の商法第202条第2項)の時代であり,発起人は7人以上(昭和13年改正後の商法第165条)で,かつ,募集設立が主流であったから,500×8株=4000円が事実上の最低資本金であったと思われる。

「設立に最低必要な資本金200万円」は,どういう意味だろう?

 そして,「全額を銀行から引き出して母に返済した」・・・ん~。
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取締役が成年後見開始の審判を受けた場合の「委任の終了」

2024-11-08 17:44:46 | 会社法(改正商法等)
法制審議会民法(成年後見等関係)部会第9回会議(令和6年10月22日開催)
https://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900001_00262.html

 法制審議会の議論の俎上に上がっているようである(部会資料6 8頁以下)


〇 委任の終了事由
(1)現行法の規律
 民法第653条は、委任は、①委任者若しくは受任者の死亡(同条第11号)、②委任者若しくは受任者が破産手続開 始の決定を受けたこと(同条第2号)又は③受任者が後見開始の審判を受けたこと(同条第3号)によって終了すると規定する。

(2)規律の趣旨等
 委任は当事者間の個人的な信頼関係を基礎とするものであるとされており、民法第653条が定める委任事由の終了は、特別な人的信頼関係の基礎をなした当事者の属性が消滅又は変質した点に求められるとされる。そして、同条第3号については、受任者が精神上の障害により判断能力を欠く常況となり、後見開始の審判を受けるときは、委任者の信頼の基礎となった受任者の事務処理能力が失われたことを意味するから 委任が終了することになるとされる。

ア 会社法(平成17年法律第86号)第330条は、株式会社と役員(取締役、会計参与及び監査役をいう。以下同じ。)及び会計監査人との関係は、委任に関する規定に従うと規定する。そのため、役員が後見開始の審判を受けた場合には、その地位を失うことになる。この場合において、地位を失った役員が、会社法第331条の2等の会社法の規定に従い、再び役員に就任することは妨げられない。
 会社法の上記の規律については、後見開始の審判を受けた役員が当然にはその地位を失わないこととすると、当該役員が後見開始の審判を受けていないことを前提としてその者を役員に選任した株主の期待に反するおそれがあり、したがって、役員が後見開始の審判を受けた場合には、その時点において、役員がその地位を失うこととした上で、改めて、その者を役員として選任するか否かについては、株主総会の判断に委ねることとすることが相当であるとの考慮があるとされる。
 なお、「委任に関する規定に従う」との規定は、会社法第402条第3項及び第651条第1項のほか一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成18年法律第48号)等複数の法律に存在する。

イ また、会社法第331条の2は、成年被後見人及び被保佐人が取締役に就任するために必要となる手続について次のとおり規定する。なお、取締役選任の効力は、株主総会における選任決議のみで生ずるものではなく、少なくとも被選任者が就任を承諾することがその発生に必要であると解されている(最高裁平成元年9月19日第三小判決・集民157号627頁参照)。
 まず、成年被後見人が取締役に就任するには、その成年後見人が、成年被後見人の同意(後見監督人がある場合にあっては、成年被後見人及び後見監督人の同意)を得た上で、成年被後見人に代わって就任の承諾をしなければならない(会社法第331条の2第1項)。なお、同項は、保佐人が民法第876条の4第1項の代理権を付与する審判に基づき被保佐人に代わって就任の承諾をする場合について準用される。
 また、被保佐人が取締役に就任するには、その保佐人の同意を得なければならない(会社法第331条の2第2項)。なお、これらの規定によらないでした就任の承諾は初めから無効であるとされる。

ウ そして、会社法第331条の2第4項は、成年被後見人又は被保佐人がした取締役の資格に基づく行為は、行為能力の制限によっては取り消すことができないと規定する。
 この規律の趣旨については次のとおり説明される。
 すなわち、民法第102条は、制限行為能力者が代理人としてした行為は、行為能力の制限を理由として取り消すことができないと規定する。そして、成年被後見人又は被保佐人が法人の代表者として第三者との間で契約を締結した場合には、同条の類推適用により、当該契約は取り消すことができないと解することができると考えられる 。もっとも、取締役の資格に基づく行為はこのような対外的な業務の執行以外にも存在するが、それらについても同様に解することができるかは必ずしも明らかではない。
 この点、取締役の職務の執行については、その効果は株式会社に帰属し、成年被後見人又は被保佐人自身には帰属しないため、これらの者の保護を目的としてその取消しを認める必要性は乏しいとされ、また、株主は自ら取締役に選任した成年被後見人又は被保佐人によって発生する結果(不利益である場合も含めて)を引き受けるべきであるともいうことができ、株式会社やその株主の保護を目的としてその取消しを認める必要性も乏しいとされる。
 そこで、成年被後見人等がした取締役の資格に基づく行為は、行為能力の制限によっては取り消すことができないこととされる。

(4)検討
 これまでの部会において、民法第653条第3号について障害を有する者の社会的参画との関係でどのように考えるかとの意見等が出された。
 委任の終了事由に関する規律の見直しの要否については法定後見制度の見直しの内容を踏まえて検討する必要があると思われるが、現時点で、この点についてどのように考えるか。


 なお,令和元年会社法改正の前の法制審議会統治統治等関係部会の議論では,

「民法第653条第3号は任意規定と解されており,仮に,取締役等が後見開始の審判を受けたことを終任事由とする旨の規定を設けないものとする場合には,株式会社と取締役等との間において,取締役等が後見開始の審判を受けたことを終任事由としない旨の特約を締結することができると解することもできると考えられるが・・・・・取締役等の終任事由についても,会社法に明文の規定がないからといって,直ちに任意規定であると解することはできず,強行法規であると解することもできる。」

として,取締役等が後見開始の審判を受けたことを終任事由とする旨の規定等は設けられなかったものである。

cf. 平成30年6月26日付け「会社法制の見直し~取締役等の欠格条項の削除に伴う規律の整備」
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