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https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39458370X21C18A2SHA000/?nf=1
法制審議会の議論が大詰めを迎えている会社法改正のポイントがまとめられている。
見出しは,「社外取締役、非上場の大企業も義務化」とあるが,仮案(2)では,「監査役会設置会社(公開会社であり,かつ,大会社であるものに限る。)であって金融商品取引法第24条第1項の規定によりその発行する株式について有価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければならないものは,社外取締役を置かなければならないものとする。」とされていることから,非上場の株式会社で義務付けの対象となるのは,それほど多くはないであろう。
記事には,「法務省幹部は「今回の法改正で非上場では数百社が義務化の対象になる」とみている。」(上掲記事)とあるが。
ところで,会社法において社外取締役を置くことを義務付けた場合には,社外取締役が欠けたときにされた取締役会の決議の効力が問題になり,「補足説明」では,次のとおり説明されている。
遅滞なく選任されない場合に,いつから無効の問題が生ずるのかが明確ではないが,解釈に委ねられるということであろうか。
(補足説明)
当部会においては,仮に,会社法において社外取締役を置くことを義務付けた場合には,社外取締役が欠けたときにされた取締役会の決議が無効となることを回避するために,事実上,複数の社外取締役を選任する必要が生じ,上場会社等に対し,社外取締役を一名選任することにとどまらない影響等を及ぼす懸念があるという指摘がされている。
法律的には,補欠の役員の選任(第329条第3項),権利義務取締役(第346条第1項)又は一時役員(同条第2項)に関する規定が用意されており,社外取締役の員数が欠けた場合についても,これらの規定の適用があると考えられる。
他方で,当部会においては,仮に,上場会社等について社外取締役を置くことを義務付けた場合であっても,社外取締役を欠くときに有効に取締役会の決議をすることができなくなるという帰結は現実的でないという指摘がされており,社外取締役は取締役会の単なる一構成員であると扱うべきであり,社外取締役を欠くときに有効に取締役会の決議をすることができないとまで考える必要はないという指摘がされている。
当部会における議論を踏まえると,社外取締役が欠けている状況が長期間に及ぶ場合等には,社外取締役が欠けていることが取締役会の決議の効力におよそ影響を及ぼさないとまで言うことは難しいが,社外取締役が欠けた場合であっても,遅滞なく社外取締役が選任されるときは,その間にされた取締役会の決議は無効とならないと解釈することができると考えられる。
また,当部会においては,仮に,会社法において社外取締役を置くことを義務付けた場合には,社外取締役が欠けたときに直ちに過料の制裁が課されることを懸念する指摘がされている。しかし,当部会における議論を踏まえると,社外取締役が欠けた場合であっても,遅滞なく社外取締役が選任されるときは,直ちに過料の制裁が課されることにはならないと解釈することができると考えられる。
cf. 法制審議会-会社法制(企業統治等関係)部会
http://www.moj.go.jp/shingi1/housei02_00297.html