名古屋地裁平成25年2月8日判決
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=83427&hanreiKbn=04
弁護士法23条の2に基づく弁護士会照会を申し出た弁護士が,被照会団体に対し,同団体が報告を拒絶したことが同弁護士に対する不法行為に当たるとして,損害賠償を求めた事案において,具体的な事実関係を考慮した上で,不法行為法上の違法性を否定し,請求を棄却した事例
「弁護士法23条の2に基づく弁護士会照会の制度は,弁護士の使命(同法1条1項)を踏まえて設けられた公的性格を有する公的な制度であり,相手方を公務所又は公私の団体に限定し,かつ,報告の請求の主体を個々の弁護士ではなく弁護士会とするなど,適切な運用を図るための手続が設けられていることなどからすれば,被照会者は,同法に基づき,弁護士会に対して照会に対する報告をすべき法的義務を負うものと解すべきである」
「弁護士法上の報告義務があり,これに違反して,照会に対する報告をしなかったとしても,直ちにこれが不法行為法上違法であると評価されることにはならない。しかし,弁護士会照会は,依頼者から事件を受任した弁護士の申出により行われるものであり,上記した弁護士の営業上の利益に関係することからすれば,一切,不法行為法上違法となる余地がないとするのも相当でなく,被侵害利益の要保護性,被侵害利益の侵害の程度やその態様,被告の負担や報告によって予想される不利益の程度等の事情のいかんによっては,被照会者が,不法行為法上も報告義務を負い,これに反して報告をしないことが,権利や法律上保護される利益を侵害するものとして違法と評価される場合もある」
一般的に報告義務があるとした上で,不法行為法上は違法でない場合がある,という論理である。当事者間の利益衡量の問題としているわけであるが,すっきりしない感である。