設立時取締役とは,株式会社の設立に際して取締役となる者をいう(会社法第38条第1項かっこ書)。
株式会社の設立の手続は,原則として発起人が行うので,設立時取締役が有する権限は,限定されているが,設立時代表取締役の選定(会社法第47条第1項)と設立手続の調査(会社法第46条第1項)については,設立時取締役が行うべき行為であるとされている。
したがって,あまり注目されていない論点であるが,設立時取締役が選任され,就任の効力が生ずる時点が問題となり得る。
設立時取締役が定款で定められたときは,出資の履行が完了した時に,設立時取締役に選任されたものとみなされ(会社法第38条第3項),定款で定められていないときは,発起人は,出資の履行が完了した後,遅滞なく,選任しなければならない(同条第1項)。
いずれにしても,出資の履行の完了が設立時取締役を選任するための要件とされている。
それでは,公証人の認証後であることも要するのか?
発起人が作成した定款は,公証人の認証を受けなければ,その効力を生じない(会社法第30条第1項)。しかし,この「効力を生ずる」の意味合いが実は明らかではない。
すなわち,公証人の認証を受けた後でなければ,定款の規定に基づく設立の手続を行うことができないのか,単に,定款の内容を確定させる効果だけにすぎない(会社法第30条第2項参照)のか,いずれであるのかである。
この点,発起人が出資の履行をする時期は,定款の認証前であっても,定款の作成又は発起人の全員の同意の後であれば差し支えないとして取り扱われていることからすれば,後者と考えてよいのであろう。
この理からすると,設立時取締役が定款で定められたときは,公証人の認証の前であっても,出資の履行が完了した時に,設立時取締役に選任されたものとみなされ,設立時取締役は,設立時代表取締役の選定をすることができることになる。
しかし,どうやら,公証人の認証を受けた後でなければ,設立時取締役は,設立時代表取締役を選定することができない,と考える立場があるようで・・・甚だ疑問である。
同様の話として,一般社団法人の設立において,設立時理事が定款で定められた場合,やはり選任の時点が問題となり得る。この場合,会社法第38条第3項のような規定がないことから,定款の作成時点で選任されたものとして取り扱うのが合理的であろう。
しかし,どうやら,上記設立時取締役の場合と同じく,公証人の認証を受けた後でなければ,設立時理事は,設立時代表理事を選定することができない,と考える立場があるようで・・・甚だ疑問である。
定款認証前に諸々の手続を行うことに関しては,いささか古い先例であるが,定款認証前に株式の引受け及び役員の選任をなし,その後定款の認証を受けている株式会社の設立の登記申請は,受理してよい(昭和31年10月19日法務省民四第103号回答),というものがある。
すなわち,定款認証前に諸々の手続を行うことは,容認されてきたのである。
この点が,会社法等によって,変更されたとは考えられない(条文の整理がされた点は別として。)。
条文の整理によって取扱いが変更された点を除けば,従来(会社法前)の登記実務が踏襲されているはずであり,またそうすべきであるから,定款認証前の行為を安易に否定すべきではないのだが,無理解の故か,どうも硬直的な取扱いが増えているような感があるのである。
株式会社の設立の手続は,原則として発起人が行うので,設立時取締役が有する権限は,限定されているが,設立時代表取締役の選定(会社法第47条第1項)と設立手続の調査(会社法第46条第1項)については,設立時取締役が行うべき行為であるとされている。
したがって,あまり注目されていない論点であるが,設立時取締役が選任され,就任の効力が生ずる時点が問題となり得る。
設立時取締役が定款で定められたときは,出資の履行が完了した時に,設立時取締役に選任されたものとみなされ(会社法第38条第3項),定款で定められていないときは,発起人は,出資の履行が完了した後,遅滞なく,選任しなければならない(同条第1項)。
いずれにしても,出資の履行の完了が設立時取締役を選任するための要件とされている。
それでは,公証人の認証後であることも要するのか?
発起人が作成した定款は,公証人の認証を受けなければ,その効力を生じない(会社法第30条第1項)。しかし,この「効力を生ずる」の意味合いが実は明らかではない。
すなわち,公証人の認証を受けた後でなければ,定款の規定に基づく設立の手続を行うことができないのか,単に,定款の内容を確定させる効果だけにすぎない(会社法第30条第2項参照)のか,いずれであるのかである。
この点,発起人が出資の履行をする時期は,定款の認証前であっても,定款の作成又は発起人の全員の同意の後であれば差し支えないとして取り扱われていることからすれば,後者と考えてよいのであろう。
この理からすると,設立時取締役が定款で定められたときは,公証人の認証の前であっても,出資の履行が完了した時に,設立時取締役に選任されたものとみなされ,設立時取締役は,設立時代表取締役の選定をすることができることになる。
しかし,どうやら,公証人の認証を受けた後でなければ,設立時取締役は,設立時代表取締役を選定することができない,と考える立場があるようで・・・甚だ疑問である。
同様の話として,一般社団法人の設立において,設立時理事が定款で定められた場合,やはり選任の時点が問題となり得る。この場合,会社法第38条第3項のような規定がないことから,定款の作成時点で選任されたものとして取り扱うのが合理的であろう。
しかし,どうやら,上記設立時取締役の場合と同じく,公証人の認証を受けた後でなければ,設立時理事は,設立時代表理事を選定することができない,と考える立場があるようで・・・甚だ疑問である。
定款認証前に諸々の手続を行うことに関しては,いささか古い先例であるが,定款認証前に株式の引受け及び役員の選任をなし,その後定款の認証を受けている株式会社の設立の登記申請は,受理してよい(昭和31年10月19日法務省民四第103号回答),というものがある。
すなわち,定款認証前に諸々の手続を行うことは,容認されてきたのである。
この点が,会社法等によって,変更されたとは考えられない(条文の整理がされた点は別として。)。
条文の整理によって取扱いが変更された点を除けば,従来(会社法前)の登記実務が踏襲されているはずであり,またそうすべきであるから,定款認証前の行為を安易に否定すべきではないのだが,無理解の故か,どうも硬直的な取扱いが増えているような感があるのである。