司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

孫への遺贈は,相続登記の申請義務化の対象になり得るのか

2024-08-06 20:17:57 | 民法改正
 相続対策として,祖父又は祖母から孫への一代飛ばしの遺贈を内容とする遺言がされることがあるであろう。

 遺言者A,Aの子B,Bの子Cという関係において,AがCに不動産を遺贈する旨の遺言をしたところ,Bが死亡し,その後にAが死亡したという場合には,Aの相続において,CはAの代襲相続人であることから,Cは遺贈の登記の申請義務を負う(不動産登記法第76条の2第1項後段)し,Cは,単独で登記の申請をすることができる(不動産登記法第63条第3項)。

 しかし,Aが死亡した時点でBが健在であれば,CはAの相続人ではないことから,Cは遺贈の登記の申請義務を負わないし,Cは,単独で登記の申請をすることができない。Cは,遺言執行者又はAの共同相続人全員を登記義務者として共同申請をすることになる。

 ところで,Aが死亡し,遺贈の登記を申請する前に,Bが死亡した場合はどうか。

 Aの遺言がなければ,Cは数次相続によって後発的に「相続により所有権を取得した者」として相続登記の申請義務を負う(不動産登記法第76条の2第1項前段)ものであるところ,自らに対する「遺贈」がある場合には申請義務を免れるのは背理であるように思われる。

 確かに,遺贈は,意思表示に基づく物権変動であり,「相続を契機とする承継よりも売買等による承継に近い面がある」(村松秀樹ほか「Q&A令和3年改正民法・改正不登法・相続土地国庫帰属法」(金融財政事情研究会)265頁)ことは否定できないが,孫への遺贈は,主に相続対策としてされるものであり,「相続を契機とする承継」と限りなく同視できるものである。

 事後的に相続人たる地位を取得することとなった者(例えば,先順位の相続人の放棄により相続人となった者や,代襲により相続人となった者)に対する遺贈についても,申請義務が及び,単独申請が可能であると解されている(後掲中間試案の補足説明184頁)ことからすれば,Aが死亡し,遺贈の登記を申請する前に,Bが死亡した場合についても,Cは後発的に相続人たる地位を承継しているのであるから,同様に解するのが合理的ではないだろうか。

 また,「相続人以外の第三者が受遺者である遺贈については,登記原因証明情報として遺言書等が提供されることは同様であるが,被相続人の財産であった不動産の所有権の移転の登記が相続人の関与なくされることを認めると,相続人が受遺者である遺贈のケースとは異なり,遺贈の真正性に疑義のある事案が生じてしまう懸念も払拭することができないとの指摘があることから,その対象外とする」(後掲中間試案の補足説明184頁)と考えられている点についても,孫Cに対する遺贈であり,Cが後発的に相続人たる地位を承継している場合においては,相続人が受遺者である遺贈のケースとほぼ同視することができ,遺贈の真正性に疑義のある事案はほぼ生じないであろう。

 したがって,遺言者Aが死亡し,受遺者である孫C(Aの子であるBの子)が遺贈の登記を申請する前に,Bが死亡した場合についても,Cは後発的に相続人たる地位を承継しているのであるから,Cに遺贈の登記の申請義務が及び,またCの単独申請が可能であると解すべきである。

cf. 民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)等の改正に関する中間試案の補足説明
https://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900001_00007.html
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住所から地番を検索

2024-08-06 16:45:33 | 不動産登記法その他
フリー版不動産チェッカー
https://bot.torus.co.jp/free

 民間事業者のものであるが,地図上にピンポイントにチェックを入れるだけで,又は「住所」で検索するだけで,目的物件の「地番」が表示される便利な機能である。住居表示が実施されている地域では,特に役立つであろう。
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令和2年民法改正後の「特別養子縁組申立時点の児童の年齢内訳」等

2024-08-06 14:15:39 | 民法改正
特別養子縁組推進のための環境整備に関する調査研究報告書 by 令和4(2022)年度 厚生労働省子ども家庭局 子ども・子育て支援推進調査研究事業
https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/cd892ed4-1ec9-4b60-aa2c-ec45d3967729/90e75924/20231023_policies_kosodateshien_chousa_suishinchosa_r04-01_h19.pdf

「本調査研究では、特別養子縁組推進のための環境整備に資することを目的として、まず先行研究をもとに特別養子縁組の相談支援から縁組成立後支援までの一連のプロセスや体制整備に関する課題を全体的に調査・把握した。その上で、児童相談所・民間あっせん機関の取り組み実態と課題を明らかにするとともに、養子縁組当事者の支援ニーズ等を調査・分析した。」

 令和2年民法改正後の状況に関して,52頁にある「特別養子縁組申立時点の児童の年齢内訳及び申立後の成立状況の内訳」が興味深い。
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不動産の自治体への遺贈

2024-08-06 14:08:18 | 不動産登記法その他
兵庫県宝塚市“阪神間モダニズム邸宅”の「旧安田邸」を残す取組み
https://www.homes.co.jp/cont/press/reform/reform_01338/

「地方自治法は自治体が所有する公有財産を行政財産、普通財産に分けており、旧安田邸は普通財産。行政財産には庁舎や消防施設のように市が直接使用する公用財産、市民が利用する学校、図書館などの公共用財産があり、これらには自治体はお金を出して維持管理をする。
 ところが普通財産は主に経済的価値を発揮するため、つまり市の財政に寄与すべきものであり、管理処分はされてもそこに公費が使われることはない。維持管理してもらいたいなら公共用財産などとして使ってもらえるような形でなければ難しいのかもしれない。
 過去に市に寄贈され、展示施設、学習施設などとして使われている建物は行政財産となっていることを考えると、最初の受遺の時点が悔やまれるというものである。」(上掲記事)

 市民が不動産の遺贈の意向を示しても,自治体からは,清算の上,金銭での遺贈を希望されるが,こういうことである。
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住民票に旧姓を併記するための手続の簡略化

2024-08-05 14:56:34 | いろいろ
時事通信記事
https://www.jiji.com/jc/article?k=2024080300395&g=soc

「政府は、住民票に旧姓を併記するための手続きについて、申請者が戸籍証明書を取得、提出せずに済むよう簡略化する方針だ。戸籍情報を市区町村間で連携するシステムが2024年3月に稼働したことを受け、申請を受けた市区町村がシステムを通じて旧姓を照会、確認し、オンラインで手続きを完了させる。」(上掲記事)

 自治体の負担は増えるわけだが。
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代表取締役等住所非表示措置について

2024-08-05 14:50:28 | 会社法(改正商法等)
代表取締役等住所非表示措置について
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00210.html?s=09

 通達等が掲載され,最新の内容に更新されている。
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経営支配権と増資の公正性を巡る争い

2024-08-02 09:16:58 | 会社法(改正商法等)
日経記事(有料会員限定)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOTG267HB0W4A720C2000000/

「6月の株主総会で経営陣を入れ替える株主からの動議が可決されそうだったが、議案採決されず流会となった。さらに会社側は9月の臨時総会までの間に増資を公表。株主側は反発し司法的な解決を求めた」(上掲記事)

 記事によると,外観的には,あたかも会社側が意図的に質疑応答を繰り返して,時間を引き延ばし,「流会」に持ち込んだ上,増資で議決権比率を有利に変えようというしているように見える。

 上場企業でこういうことをやりますか,という感。
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代表取締役等の住所の非表示措置に係る民事局長通達~上場会社の場合

2024-08-02 09:02:10 | 会社法(改正商法等)
「商業登記規則等の一部を改正する省令の施行に伴う商業登記事務の取扱いについて(通達)」(令和6年7月26日付け法務省民商第116号法務省民事局長通達)が発出されているが,上場会社の場合については,


「代表取締役等住所非表示措置の申出をする株式会社について、金融商品取引所に当該株式会社の株式が上場されていることを認めるに足りる書面の添付を要するものとされた。
 この書面には、当該株式会社の上場に係る情報が掲載された金融商品取引所のホームページの写し等が該当する。
なお、この書面の当該株式会社の代表取締役等による奥書等は不要である。」

 まあ,こんな感じか。
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暑い京都市~猛暑日ランキングでトップ

2024-08-01 13:59:47 | 私の京都
京都新聞記事
https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/1301774

 ここ10年間の平均では,年24.7日で,全国47都道府県庁所在都市ではトップ。

 とはいえ,全国的には,岐阜県多治見市27日,大分県日田市26日という,京都市を上回る,さらにすごい都市もあるのだが。

 本日までで8連続猛暑日で,予報では,8月14日まで続くようである(その後は,不明)。
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