tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

支払能力シリーズ11: 分配と成長の基本的関係

2016年12月14日 11時43分27秒 | 経営
支払能力シリーズ11: 分配と成長の基本的関係
 「人間が資本を使って付加価値を生産する」と繰り返し書いてきましたが、これが今日の分配と明日の成長との間に密接な関係があるという経験的な事実の基本にあることがご理解いただけてきているのではないかと思います。

 一般的な労使関係論の中では、人件費と資本費への分配は「労使の分配」という形で認識されますが、これはいわば、昔の「労資関係」の名残りで、使:使用者が、資:資本家のように思われているだけで、現実には、使用者は資本家ではありません。
 今の使用者(マネジメント)は、企業の「長期的な安定発展」を考える「システム・マネジャー」の役割を担っているのです( 経営者革命)。

 従って、経営者は企業の長期的な安定発展を構想・計画するためにはいかなる技術革新、どれだけの資本投下が必要かを常に意識し、そのための資本のどれだけを利益から、資本市場から、金融機関から調達するかを考えることが必須となります。

 これは、おカネの面の投資の問題ですが、もう一つ、その技術を開発し、使いこなす人間が、実はより重要な問題かもしれません。これには、従業員の教育訓練、適切な人材の採用といった人間への投資が必要になってきます。

 経営者はそのための資本(資金)の調達に責任があります。実はこのうち、人間にかかわる部分は「人件費」です。旧来の労働分配率理論では、この分析は出来ません。

 すでにシュンペーターが、名著「経済発展の理論」で、経済発展のベースは、技術革新と書いていますが、技術革新を進めるのも人間で、それを生産に応用するのも人間で、実際に生産するのも人間です。
 ビジネスがサービス業であれば、こうした発展は100パーセント近く人間への投資によるものという事でしょう。

 正確に言えば、労働分配率の中の教育訓練などの対人投資部分は「投資」と読み替えて分析する必要もあるのでしょう。

 企業の成長発展のためには技術開発・革新を含めた設備投資、いわゆる企業高度化のためにどれだけの資本支出が必要になり、そのうちどこまでを内部留保で賄うか(人件費に関わる部分は経費になりますから)が企業発展のカギになります。

 こういいますと、「すべては企業のためで、『人間が資本を使って』の『人間』の部分はどうなるの、といったことになりそうですが、ここで「将来基準」の問題が出てくるのでしょう。
 企業の発展の中身は生産性の向上です(品質も価格に反映されます)。生産性の向上が早ければ、労働分配率は一定でも、生産性の向上に比例して賃金上昇率も早くなります。

 企業経営における経験的な事実として、労働分配率の低めの企業の方が成長が早い、あるいは逆に成長率が高かった時代の労働分配率は低かった、という分配と成長の関係は明らかです。「成長率と労働分配率は逆相関」の関係にあるようです。

 さて、こうした分析を適正労働分配率の検討にどう生かすかが労使の課題です。