tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

同一労働・同一賃金と日本的経営

2016年12月21日 13時37分18秒 | 経営
同一労働・同一賃金と日本的経営
 今、政府部内で行われている同一労働・同一賃金の議論を見ていると、日本における経営と労働の在り方がほとんど解っていない人たちが、勝手な議論をして大変奇妙な結論を出しそうで、心配しています。

 大体、賃金制度というものは、企業で働く人たちが、労使双方が納得して気持ちよく働けるように作られてきているものでしょう。
 今の政府の議論に、労使双方が納得しているとはどう考えても思われません。現実にはそんなことを言われても困ると双方がそれぞれに考えているのではないでしょうか。

 日本の賃金制度は、日本的経営の中で形作られたものです。そして、日本的経営の理念は、欧米で一般的なものとは大きく違います。当然賃金制度も違ってきます。

 日本的経営の特徴は、企業と人間の結びつきが長期的なものあるという前提に立っています。これはかつてアベグレンが注目し、また、ドラッカーが、日本には長寿命の企業が欧米に比して圧倒的多いと驚嘆したことにもつながります。

 企業は人間が付加価値を創るためのシステムとして考案し、それが安定して進化し、成長発展することが社会に貢献するという視点から、欧米でも「ゴーイング・コンサーン」という概念が生まれています。日本流に言えば「企業は老舗を目指せ」でしょうか。

 パフォーマンスの良い企業は、社会が必要とし(提供する商品・サービス面でも、雇用の面でも、きちんと毎年税金を払う事からも・・・・・)潰れては困ると思われています。

 日本の社会文化的伝統の中では、そして当然、日本的経営の中でもそのためには「企業と人間の安定した長期的な結びつきが大事」といいう了解が成立して来ていたのです。
 
 企業と人間の関係がこうしたものであれば、その中での賃金制度もそれと整合するようなものとして考えられます。
 こうして出来上がってきたのが正社員に対する日本の賃金制度で、一口で言えば、入社から定年退職までのトータルな仕事(会社への貢献)と生涯賃金が見合っているという事なのです。生涯賃金で同一労働・同一賃金ですから「年功的な色彩」の賃金制度もこうした中では合理的で納得性もあります。

 勿論、こうした体系は企業内の制度として決まりますから、賃金制度体系はそれぞれの企業で差異もあります。その違いは、企業の行っている仕事(業種、業態)や、企業文化、企業の財務体質、企業全体のパフォーマンスなどによって生じます。

 正社員の賃金制度は基本的にこうした背景の中で作られ、今でも、日本人のメンタリティの中では納得、肯定されています。
 しかし現実には、企業は正社員でない労働力も必要としてきました。その人達は従来それほど数が多くなく、異なった賃金制度が適用されていました。

 次回、そうした人たちへの賃金制度の仕組み、そして、そうした非正規雇用が異常に増えた結果どうなったかを見てみましょう。