tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

企業における人件費支払能力測定の実務:第5回―付加価値分析は経営計画に適している―

2017年02月17日 13時32分53秒 | 経営
企業における人件費支払能力測定の実務:第5回
―付加価値分析は経営計画に適している―
 前回、人件費支払能力測定の前提になる経営計画策定のために活用する「経営指標」とその計算式、そして経営指標計算のために必要なB/S、P/L、SS、の勘定科目を 一覧表にしました。

 企業経営とは大変複雑なものですが、それを、人間が資本を使ってより効率的に付加価値を作り出すという経営の基本構造に還元して考えたとき、人間と企業を結び付ける経営の基本構造(スケルトン)は、前回挙げた指標で、基本的に把握できます。

 これは「付加価値分析」と活用したものですが、付加価値分析は企業における人間と資本の関係を分析するのに適しています。B/SやP/Lは利益計算には適していますが、企業の成長発展の動態分析には適していません。
 付加価値分析で、特に、労働分配率、資本設備(有形・無形)と生産性の関係を追っていけば、企業の成長・発展のメカニズムが見えてくると思います。  

 そこで今回と次回で、前回挙げた12個の主要経営指標について簡潔にその意味するところを見ていってみましょう。

① < 付加価値率> 付加価値/売上高(%)
  付加価値はその企業に組織化されている人間と資本が生み出した経済価値です。日本中で生産された付加価値の合計がGDPで日本人はそれで生活しています。同様に、企業はその企業で生産した付加価値で企業生命を維持しています。
 企業は売上高で生きているのではありません。売上高の中の付加価値で生きているのです。そこで売上高のうちの何%が付加価値かを知ることが重要で、それが「付加価値率」です。

 付加価値率は業態によって大きな差があります。製造業では平均的に20%程度ですが、卸売業では数%、ソフト会社では数十%といった差があります。
 問題は、わが社の付加価値率が上がっているかです。毎年同じことをやっていれば、付加価値率は確実に毎年下がります。
 何か新しい顧客に訴える製品、商品、サービスを開発して初めて付加価値率の維持向上が可能になります。
 という事で、付加価値率は「企業の元気度の指標」などと言われます。

② <付加価値生産性> 付加価値/従業員数(円)
 正確には付加価値労働生産性です。従業員には社長からパート従業員まで、その企業で雇用している従業員はすべて入ります。派遣の場合は「人件費」として入れて(当然付加価値にも入って来る)計算することも、外注扱いで除外することも可能です(入れたほうが総合的な判断が可能になる)。

 これは、先に述べました企業の二大目標の1つ、「企業成長の指標」です。従業員一人当たりの人件費と従業員一人当たりの資本費の合計額ですから、経営計画の最大の目標は、如何にこの数字を成長させていくかを考えることでしょう。この数字が、企業の成長発展と体質改善の可能性の限度を決めます。勿論、人件費、賃金上昇の基本的な指標になります。

③ <1人当たり人件費> 付加価値生産性×労働分配率(円)
  労働分配率は12個の比率の中には入っていないように見えますが、きちんと入っています。それは、下の「付加価値構成比」の中の「人件費」がそれです。
 ここで労使関係の歴史的にも最大の論争点である「付加価値を労働と資本でどう分配するか」という大変重たい問題が出てきます。
 この経営計画では、労働分配率を恣意的に決めることはありません。それは、企業の体質改善、資本構成の高度化、生産性向上、企業成長とのバランスの中で、最適な数字という形で産出されることになります。
  労働分配率によって、その後の付加価値生産性が影響され、1人当たり人件費の上昇が影響を受けるというプロセスが組み込まれています。以下次回