企業における人件費支払能力測定の実務:第6回
―付加価値分析は経営計画に適している―(つづき)
(今回は前回の続きです)
④ <付加価値構成比> 付加価値構成項目の構成比:合計100%
人件費、課税前利益、金融費用、賃借料、租税公課、減価償却費のそれぞれが付加価値に占める割合です。
これらの内の人件費の構成割合が「労働分配率」です。
租税公課は一般的には与えられる数字ですが、それ以外は、それぞれに重要な意味を持ちます。
金融費用は借金体質かどうか、つまり自己資本比率に関係し、賃借料は設備投資かリース調達かに関連し、減価償却費は装置産業化すれば大きくなり資本構成高度化でも膨らみますが、生産性、企業成長にはプラス要因です。
課税前利益(分析目的によっては経常利益)は企業体質改善と技術開発・高度化投資なアドの最重要な原資で、企業発展の原動力です。
付加価値構成比は、企業の戦略的な要素を反映するものでもありますから実績の分析でも計画の際でもよく見ていく必要があります。
⑤ <減価償却費> 償却前有形固定資産×(平均)減価償却率:(円)
減価償却費は本当の意味では付加価値ではありません。これは有形無形の固定資産などを購入した場合、それは5年とか10年かけて使うものですから、買った時に全額経費にするのではなく、その使用期間(耐用年数)の間に分割して経費計上しようというもので、つまりは経費です。
しかし、経費計上しても、必ずしも金は出ていかず、出ていくのは、新しいものに代替するときです。その間資金繰りとしては余裕になるので利益(内部留保)などに準じて仮に付加価値に算入し算入したものを「粗付加価値」とします。
GDPのGはGross(粗)で、減価償却を算入した国レベルの粗付加価値です。
ここでは、企業の生産性向上、成長を支える固定資産投資の役割とコストを数値で見るために「粗付加価値」を使うことにしています。
⑥ <自己資本比率> 自己資本/総資本(+割引手形):(%)
言わずと知れた経営計画の2大目標の一つです。企業が運用している設備資金、投資資金、運転資金などの総額の中で、自前の金が何%かを示します。自前の金で経営しているほど経営の安定度は高いので、企業体質の指標と言われます。
むかしから、会計学者は、半分は自己資本でという事で50%が標準などと言いますが、一つの判断基準でしょう。
かつてアメリカの企業の劣化ぶりを GMの例で見ましたが、よく例に引かれるファナックなどの90%前後、といった数字は経営基盤の盤石の安定性を示しています。
付加価値との関連では、自己資本比率の高い企業は金利支払いは少なく、その分は人件費と利益に回ることになります。
自己資本比率については 2つの見方があって、高すぎるのは積極的にリスクを取りにいかない消極的経営といった批判が所謂ファンドなどから出されます。これはその企業の企業文化、性格、経営理念の問題でしょう。
⑦ <有利子負債比率> 有利子負債/負債総額:(%)
負債の中でも買掛金や支払手形など、金利のかからないものもあります。付加価値の関係するのは金利のかかる負債ですから、この比率は重要です。
近年のように、ゼロ金利の中では、有利子負債もあまり苦にならないといった感覚もありますが、金利が正常化すれば負担は大きくなります。
バランスシートでは欄外注記ですが、「受取手形割引残高」も加えて計算すべきでしょう。
⑧ <金利水準> 金融費用/有利子負債:(%)
長・短期借入金の金利、社債利息、割引料などの金融費用などが全体の平均で、どのくらいの金利水準になっているかで、付加価値の中から金融機関などに流出していく金額が決まります。ゼロ金利時代でも、金利は決してゼロではないので、より低い金利水準が可能であるか検討すべき問題でしょう。
自己資本比率、有利子負債比率との関連も的確に検討することが重要です。次回に続く
―付加価値分析は経営計画に適している―(つづき)
(今回は前回の続きです)
④ <付加価値構成比> 付加価値構成項目の構成比:合計100%
人件費、課税前利益、金融費用、賃借料、租税公課、減価償却費のそれぞれが付加価値に占める割合です。
これらの内の人件費の構成割合が「労働分配率」です。
租税公課は一般的には与えられる数字ですが、それ以外は、それぞれに重要な意味を持ちます。
金融費用は借金体質かどうか、つまり自己資本比率に関係し、賃借料は設備投資かリース調達かに関連し、減価償却費は装置産業化すれば大きくなり資本構成高度化でも膨らみますが、生産性、企業成長にはプラス要因です。
課税前利益(分析目的によっては経常利益)は企業体質改善と技術開発・高度化投資なアドの最重要な原資で、企業発展の原動力です。
付加価値構成比は、企業の戦略的な要素を反映するものでもありますから実績の分析でも計画の際でもよく見ていく必要があります。
⑤ <減価償却費> 償却前有形固定資産×(平均)減価償却率:(円)
減価償却費は本当の意味では付加価値ではありません。これは有形無形の固定資産などを購入した場合、それは5年とか10年かけて使うものですから、買った時に全額経費にするのではなく、その使用期間(耐用年数)の間に分割して経費計上しようというもので、つまりは経費です。
しかし、経費計上しても、必ずしも金は出ていかず、出ていくのは、新しいものに代替するときです。その間資金繰りとしては余裕になるので利益(内部留保)などに準じて仮に付加価値に算入し算入したものを「粗付加価値」とします。
GDPのGはGross(粗)で、減価償却を算入した国レベルの粗付加価値です。
ここでは、企業の生産性向上、成長を支える固定資産投資の役割とコストを数値で見るために「粗付加価値」を使うことにしています。
⑥ <自己資本比率> 自己資本/総資本(+割引手形):(%)
言わずと知れた経営計画の2大目標の一つです。企業が運用している設備資金、投資資金、運転資金などの総額の中で、自前の金が何%かを示します。自前の金で経営しているほど経営の安定度は高いので、企業体質の指標と言われます。
むかしから、会計学者は、半分は自己資本でという事で50%が標準などと言いますが、一つの判断基準でしょう。
かつてアメリカの企業の劣化ぶりを GMの例で見ましたが、よく例に引かれるファナックなどの90%前後、といった数字は経営基盤の盤石の安定性を示しています。
付加価値との関連では、自己資本比率の高い企業は金利支払いは少なく、その分は人件費と利益に回ることになります。
自己資本比率については 2つの見方があって、高すぎるのは積極的にリスクを取りにいかない消極的経営といった批判が所謂ファンドなどから出されます。これはその企業の企業文化、性格、経営理念の問題でしょう。
⑦ <有利子負債比率> 有利子負債/負債総額:(%)
負債の中でも買掛金や支払手形など、金利のかからないものもあります。付加価値の関係するのは金利のかかる負債ですから、この比率は重要です。
近年のように、ゼロ金利の中では、有利子負債もあまり苦にならないといった感覚もありますが、金利が正常化すれば負担は大きくなります。
バランスシートでは欄外注記ですが、「受取手形割引残高」も加えて計算すべきでしょう。
⑧ <金利水準> 金融費用/有利子負債:(%)
長・短期借入金の金利、社債利息、割引料などの金融費用などが全体の平均で、どのくらいの金利水準になっているかで、付加価値の中から金融機関などに流出していく金額が決まります。ゼロ金利時代でも、金利は決してゼロではないので、より低い金利水準が可能であるか検討すべき問題でしょう。
自己資本比率、有利子負債比率との関連も的確に検討することが重要です。次回に続く