tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

「残業代削減分」をどう配分するか

2018年06月08日 10時24分23秒 | 労働
「残業代削減分」をどう配分するか
 この問題については、以前にも 一度取り上げましたが、最近具体的な企業の事例なども出てきたようなので、また少し考えて見たいと思います。

 前回も触れましたが、残業が減って、企業業績に変わりがければ、総体的に見れば、残業の減った分は生産性が上がったという事になるでしょう。

 このブログでも、賃金上昇の基本的な基準は「生産性の向上」と書いてきていますが、これに労働時間の問題も加えれば、「生産性の向上は労働時間の短縮と賃金の上昇に配分可能」という事になります。働く者のサイドからすれば、「配分すべき」という事でしょう。
 例えば、生産性が5%上がったら、労働時間短縮2%分、賃金上昇に3%分といった形です。

ところで、厚労省の毎月勤労統計を見ますと昨年度、一般従業員(パートを除く)の総労働時間は前年度比0.0%所定外労働時間は1.3%増(所定時間が短縮されて所定外が増えた)でしたが、今年に入って所定外労働時間は1月-1.3%、2月-1.4%、3月-0.7%、4月(速報)-1.3%(いずれの前年比)で、残業は減って来ています。

 こうした傾向が年間にわたって続いた場合、この削減分を従業員にどう配分するかという事になるのは当然でしょう。

 年間総労働時間で年間の付加価値を除した値「時間当たり付加価値生産性」が3%上がって、総実労働時間が1.3%短縮したとすれば、3%のうち1.3%は労働時間短縮の効果という事になります。

 さてこれをどう配分するかという事ですが、理論的には時間当たり換算の賃金を3%引き上げれば、生産性向上の成果は労使均等に分配されたことになります。
 しかし現実の世界では、そのために会社は多額の新鋭設備を導入したとか、パート従業員が増えたとか、解り易く残業代だけの収支計算にすべきだとか、年2回のボーナスに反映したほうが即効性がるとか、いろいろな見方があるでしょう。

 現実の問題としては、配分の原資をどう特定するか、どういう形で配分するか、などは、各社各様の事情があるでしょう。
 これは、それぞれの企業で、労使交渉、労使協議会などで、お互いに納得できるような形で考えていくのが一番いいようです。

 労使がきちんとやらないと、また政府が口を出したり、余計な法律を作ったりという事になるかもしれませんので・・・。