日経平均の上昇は海外投資家の買いに支えられて急上昇、国内投資家の利益確定売りで1、2日の踊り場の後、また今日は大幅上昇のようです。証券関係の専門家の中には、バブル期の38000円を越えて42000円ぐらい迄行くといった元気のいい意見も聞かれます。
しかしいずれFRBは利下げに動き、日銀もゼロ金利脱出に動くとなれば、日米金利差の縮小で、為替レートは円高に動いて輸出企業の差益は消える可能性が大きいでしょう。
企業収益の改善は、企業の努力結果というのが正常な状態ですから、日米経済の正常化というのは株価にとっては現状の「浮利」が消えるというマイナス要因になる可能性をはらんでいるようです。
但し実体経済の原則として、円高になればそれは国内物価にとっては低下要因です。既に先日の日銀発表の企業物価の12月の対前年上昇率は0.0%になって、輸入物価の値下がりを追いかけています。しかも昨年から続いた消費者物価の調理食品、加工食品、飲料、調味料からトイレットペーパーに至る生活必需品の一斉値上げの動きもこの所終息傾向が明らかですから、消費者物価上昇率は昨年の3.1%をピークに次第に落ち着くでしょう。
政府も経団連も今年は本気になって、賃上げ分の価格転嫁の促進を言っていますから、その分の消費者物価の上昇はあるでしょう。
しかし賃金上昇が消費者物価を押し上げるのは、雇用者報酬がGDPの半分強ですから、生産性にの上昇を上回った賃上げ分の半分強が消費者物価の上昇になるとうのが、便乗値上げがない場合の賃金と物価の関係です。
春闘賃上げが昨年プラスXになっても生産性向上もあるでしょうし、それほど大幅な消費者物価の上昇にならず、消費者物価は政府・日銀の目標の2%に向かって上昇率を下げていくという所でしょう。
結果的に、今年の早いうちに、昨年12月で20カ月連続になった実質賃金の対前年低下の記録も終わるのではないかと考えます。
労使関係という意味では長期不況に悩まされた長すぎた記憶が、日本的労使関係に歪みを与えた結果の、世界にも例を見ないような長期の「自家製デフレ」現象も多分消滅して、労使の付加価値配分関係も、正常化に向かっていくのではないでしょうか。
その結果は経済成長率が急にはあがらなくても、国民所得の6割以上を占める個人消費が、勤労者世帯の「平均消費性向」の回復と共に軌道に乗り、社会全体の雰囲気も変わってくるのではないでしょうか。
賃上げ率の改善は、昨年以上となるでしょうし、遅れていた生活必需品の一斉値上げの時期も過ぎ、消費者物価の安定と相まって実質賃金が前年比プラスになって安定すれば、それはそのまま実質経済成長率のプラスの要因になるわけです。そしてそれはバランスのとれた日本経済の正常な成長路線に繋がるでしょう。
多分、放っておいてもこうした傾向に自由経済の復元(バランス回復)力で進むはずですから、先ず労使がマクロ経済のバランスについての相互理解を進め、政府は、そうした安定状態を破壊するような為替変動、更には物理的な戦争状態に入るような事を避けるよう徹底した努力をすることを肝に銘じてほしいと思うところです。
それが「国民の生命と財産を守る」という政府の最も重要な役割の具体策でしょう。