日本製鉄がUSスティールを買収するというニュースを聞いて驚いたのはこの春ですが、多くの障害にもかかわらず、話はどんどん進んでいるようで、9月に結論は12月に伸びましたが日本製鉄の意志は固く、あくまで買収の成立を目指しているようです。
この話を聞いてまず気になったのはUSスティールの労働組合USWが反対しているということでした。
しかしその後話が進んでくると、大統領選の期間でもあり、バイデン大統領も必ずしも賛成ではないようで、今日は、ハリス候補が反対を表明したというニュースが入ってきました。
アメリカでは、会社は株主のものですから、組合が反対しようが、誰が何と言おうが株主がOKならば、ということかもしれませんが、トランプさんは「そんな事はさせない」といっているようです。
日本製鉄にしてみれば、アメリカの株主の意向が頼りという所ですが、かつて、世界トップだった企業も今は世界鉄鋼業界では27位だそうで(日本製鉄4位)で、株主は日本製鉄に買ってもらって、少し株価が上がればと考えているのかもしれません。
もうだいぶ前から鉄鋼は斜陽産業と言われていますが、日本製鉄が新日鉄の時代に育てた中国の宝山鋼鉄が世界トップになったという経験もありますから、今後の世界展開で斜陽産業とは言わせないという気概もあるのかもしれません。
しかし、その宝山鉄鋼とは、体制の違いからでしょうか,縁を切ろうという状況のようですから、自由世界の鉄鋼産業のリーダーという立場を狙っているのでしょうか。いずれにしても世界的な視点での動きの一環としてのUSスティール買収のようです。
そうした目で日本製鉄の動きを見ますと、タイ、インドなど海外展開の積極化が見えているように思えます。
同時に、製鉄に必要な石炭にも確り手を打っているようですが、従来の高炉方式については環境問題の分野から、かなり厳しい目が向けられているようです。
この点については、いかにCO²を出さないかという新たな技術開発が要求されることになるのではないでしょうか。例えば、出したCO²は、すべてメタネーションに使うといったことが可能にあれば、素晴らしいななどと考えるところです。
財務の面で見ますと買収金額は約2兆円ですが、日本製鉄のバランスシートでは、自己資金4.2兆円、有利子負債3.1兆円ですから、買収に2兆円、その後USWの対策費や他の追加費用の支出などもふくめれば、蓄積した自己資本の半分ほどを使っての買収ということです。
アメリカの企業は金食い虫のことが多く、東芝などは、ウェスティングハウスの買収で、下請け工事会社のコスト補填などで、自己資金を使い尽くし、撤退になってしまったようです。
日本は金持ちだということで、それを当てにされる面もあるようですので、要注意です。
まあそんなことは疾うにご承知での買収計画でしょうから、心配することはないかもしれませんが、誇り高い企業を買収するときには、USWという労働組合も含めて、その気位の高さにも十分気を使う必要があるように思うところです。
気になる事ばかり書きましたが、日本製鉄の壮大なプロジェクトが恙なく成功裏に進むことを祈るところです。