日本は長い間のゼロ金利で、貯金するのは減らさないためという意識が一般的になっています。
実はインフレ分だけ目減りしているのですが、下手に株や投信に手を出すと大きく減ってしまう可能性が大きいと恐れる人が多いようです。
そうした意識の結果は日銀の資金循環表に出ています。マスコミも家計の貯蓄2200兆円と言い。政府は株や投信への投資を推奨しますが、この2200兆円のうち、1100兆円は現金・預金(タンス預金含む)です。証券投資は4.6兆円です。
ところで、この1100兆円にやっと利息が付き始めました。
日銀の目標は差し当たって短期金利0.25%ですが、金融機関の中では定期預金0.5%、中には0.75%、1%をキャンペーン利息などとするところも出てきました。
銀行の場合は元本保証、確定金利です絶対安全です。
もう少し利息が高くならないかなと思う人も多いと思いますが、日銀は、急がないけれども、そうして行こうという考えを明確にしています。
これが金融正常化の方向です。もともと資本主義というのは金利の概念が一般化したから発展したのです。倹約して貯蓄をすれば、その金は、カネがないが仕事(ベンチャー)をやりたい人が借りて仕事をして経済が成長するという循環が生れたからです。
この循環をうまく回るようにしたのが銀行だったのです。
昭和恐慌の時代には乱立した銀行がバタバタ潰れて大変でしたが、銀行は潰れない、たとえ潰れても預金は保護されるというシステムが出来て、日本の戦後の高度成長は可能になったようです。
さらに資本主義が発展すると、景気が過熱すると金利を引き上げ、不況になると金利を下げるといった経済政策も一般的になり、銀行というシステムは大変重要なものになりました。
ところが、日本ではアベノミクス以来「ゼロ金利」ですから、金利を上げて景気を冷やすことはできますが、金利を下げて景気を良くすることは出来ません。正常な金融政策が取れないのです。
金利を下げる事が出来ませんから、景気テコ入れのためには政府が財政支出を増やすしかないので、結局、政府が日銀から金を借りてバラマキをやることになります。
銀行は経済活動を活発にする目的で資金を提供しますが、政府は選挙の票田に肥料(国家予算)を撒くのが主な目的ですから、経済効果は全く違います。これも、日本経済が成長しない理由です。
ということで、金利の正常化は極めて大事ですが、更に大きな利点もあります。
家計の貯金1100兆円に3%の利息が付けば3.3兆円の利息が貯蓄をしている家計に支払われます。これが消費支出に回れば、家計最終消費支出は300兆円ですから消費支出が1.1%増えます。一時的ではなく恒久的ですから、消費不振脱出の大きな力になります。因みに今年度の政府経済見通しの消費支出の伸びは1.2%です。
年金が心配だと2000万円貯蓄していれば、金利3%なら年に60万円の利息が付きますから、税金を取られも、月5万円近い安定収入があるのです。
日銀には「ゆっくり、確り」金利のある経済への復帰を進めてもらいたいものです。